60歳差の政治ジャーナリストと政治活動家による対談。2人に共通する問題意識とは?

長年、ジャーナリストとして政治の現場を見つめてきた田原総一朗さんと、若き政治活動家・青木大和さんの対談が実現しました。

長年、ジャーナリストとして政治の現場を見つめてきた田原総一朗さんと、若き政治活動家・青木大和さんの対談が実現しました。

次々と繰り出される田原さんの質問に、臆することなく懸命に答える青木さん。

話題はやはり今年最も注目された政治イシュー、安全保障関連法案のほうへ向かいました。

なぜこの法案は問題があるのか? 野党はどうするべきなのか。

二人の対話が浮き彫りにしていきます。

2015年は日本の大きな転換点

青木 田原さん、はじめまして。僕は青木大和と申します。

田原 はい、こんにちは。君は、何をしてる人なの?

青木 僕は、若い人の政治への関心を高めるための活動をしています。

きっかけは、15歳のときに1年間アメリカに留学をしたことでした。2009年のオバマの大統領選後のアメリカに居合わせ、アメリカの若い人の政治への関心の高さに圧倒されたんです。

そこで、日本の若者にも政治に関心を持ってもらいたいと思い、帰国後、「僕らの一歩が日本を変える。」というNPO法人を立ち上げました。

田原 へえ。

青木 そして高校生100人と国会議員の方との討論や未成年模擬投票といった企画を考え、実現してきました。

しかし、昨年末の衆議院選挙に合わせて立ち上げた「どうして解散するんですか?」というサイトが炎上してしまって、責任をとるためにNPO法人の代表を辞任したのですが......。

田原 ん? なんで炎上したの?

青木 僕の名前ではなく、小学4年生の子が立ち上げたという体裁でサイトをつくったので......。

田原 なんで小学生だって言ったの?

青木 インターネットの特性を活かして議論を巻き起こすためには、僕が実名でやるよりも小学4年生というキャラクターを立てたほうがより効果的だと考えたんです。

でも、結果的に安倍総理などにも名指しで怒られてしまいまして......。

田原 そんなに大騒ぎになったの? おもしろいね。大騒ぎになったらそれを利用したほうがよかったんじゃないかな。

青木 いや、あの、当時は実家にまで取材の人が来たり、父親の会社に中傷の電話がかかってきたりして、本当に参ってしまったんです。

田原 そうなんだ。まあ、大変だったね。それで?

青木 それからあまり表には出ていなかったんですけど、逃げていてもなにも始まらないので、もう一度自分の声で発信していこうと決意しました。

それで、今は政治に関する記事を書いたり、こういうインタビューの場に出させていただいたりしています。

田原 なるほど。

青木 田原さんのことは以前からテレビで拝見し、ご著書も読ませていただいて、ずっとお会いしたいと思っていました。

日本の第一線で政治の世界を見てこられた田原さんに、今日は聞きたいことがたくさんあります。

ひとつはどうして日本の若者は政治に関心がなくなってしまったのか、ということです。

田原 どうしてというか、それはアメリカと比べてでしょう? 青木さんが見た2009年のアメリカ大統領選後のアメリカは特別だよ。だって、黒人が大統領になったんだから。アメリカには黒人差別はないといいながら、それまでは黒人の大統領はいなかったわけだ。

でも、2003年から始まったイラク戦争が大失敗して、それを決断したのは共和党のブッシュだった。それではいけない、ということでイラク戦争に反対したオバマを選んだわけ。

アメリカの大転換期だったんだよ。そういう転換って、今の日本にはなかなかないよね。

青木 それは、今後もないのでしょうか?

田原 転換期は「今」でしょう。僕は、2015年はこれから10年後、20年後に、日本はあの年に変わったんだって言われるようになると思っているよ。

青木 それは9月19日に安全保障関連法案が成立したからですよね? それに反対する学生団体SEALDsの活動も、かなり話題になりました。

僕はSEALDsのメンバーである奥田愛基くんと面識があるのですが、ここまで学生の政治活動がメディアに注目されたことは、近年なかったと感じています。

でも遡ってみると、1950〜1970年代には学生運動が盛んでしたよね。かつての学生運動と、現在の学生によるデモは何が違うのでしょうか。

田原 違いは3つあるよ。1つ目は、かつての学生運動、全共闘運動というのは、すべてバックがついていたこと。共産党や社会党などの政党や団体が後ろ盾となっていたんだよね。

2つ目は、資本主義に反対し、社会主義体制を目指した運動だったということ。

3つ目は、共産党を除く運動家たちは基本的に暴力革命を支持していたということ。これらは、今のSEALDsの活動とは違うよね。

青木 たしかにそうですね。でも、1960年の日米安全保障条約をめぐる安保闘争も大きな流れとなったわけで、今との類似性も見られますね。

安全保障関連法案は、なにがダメなのか

田原 君は、この転換点がどれだけ大きなものかわかる?

戦後70年、日本は戦わない国、戦えない国だった。それが、戦う国、戦える国になったんだよ。

青木 そういう情勢のなかで、政治は社会をどう変えていくのかということを僕は考えているのですが......。

田原 政治が社会を変えるに決まってるでしょ。税だって法律だって、全部政治が決めていくんだから。

青木 そうなんですけど、僕の同世代の若者は、政治に対して冷ややかな目を持っているというか、自分とは関係ないと思っている人が多いように見えるんです。

大きく世界情勢が変わっているとはいえ、衣食住は足りていますし、自分たちが政治的な発言をあえてすることはないよね、と。

田原 そういう若者は、これから少なくなっていくんじゃないかな。だって近い将来、自衛隊が戦争の後方支援に出るようになったら、死者も出てくるよね。それに対して、声を上げざるを得なくなってくるでしょう。

そもそも、君は安倍政権の安保関連法案がなぜダメなのかわかる?

青木 国民への説明不足の中で強引に押し進めたことが、問題だと考えています。

田原 いやいや、無理やりではないよ。国会というのは、ああいうかたちで進めるのが当たり前でしょう。

安保法案はとにかく、戦争に近づく法案だからダメなんだよ。

青木 でも国民の理解が得られていない部分も多く......。

田原 日本は間接民主主義を採用していて、国民が選んだ代表が国会議員でしょう。彼らが国会で議論を進めるのは当たり前で、無理に押し進めたなんて言い方は、おかしくない?

青木 僕は、その議会制民主主義に対してジレンマを感じているんです。

田原 議会制民主主義に反対なの?

青木 いえ賛成なのですが、現在のように投票率が低いと民意が反映されないというか......。

田原 投票率が低いのは、国民が政治に関心がないからでしょう。

青木 そうなると、組合など組織基盤を持っている団体が選挙で勝ちやすくなりますよね。

田原 組織基盤を持っているところは、野党にもあるんだから、与党だけが勝ちやすくなるということはないよ。

青木 今回の安保法案の件で痛切に感じたのは、SEALDsのようにデモで人を集めて声を上げていくのは非常に大切なことなんですけれど、けっきょく議席数が多い政党の主張が通るんだなと。

自分たちはぜんぜんプレイヤーになれていないと思ったんです。

田原 いや、間接民主主義なんだから、議席数が多い政党に力があるのは当たり前でしょう。

青木 だから僕は、直接政治に関与できる議員を目指しているんですが、今は25歳からしか出馬できない。もっと若者が政治の世界に入っていくためには、被選挙権年齢を下げる必要があると思っているんです。

田原 君はいま、いくつなの?

青木 21歳です。

田原 あと4年だね。それまで待てないなら、被選挙権年齢引き下げの運動を起こせばいいじゃない。選挙権も18歳に引き下げになったわけだし。

青木 はい。僕はその選挙権年齢引き下げについての活動をしていました。

だから、そうですね、僕自身が声を上げていく必要があるとは思っているのですが......。

「反対」するだけで、「対案」がないのが一番の問題

田原 それより僕が問題だと思っているのは、国民としてはけっきょく自民党を支持するしかないという状況にあること。

安保法案に対する世論調査を各社が行ったとき、だいたい賛成が25〜35%で、反対のほうが多かった。でも、11月に行った安倍内閣を支持するかどうかの世論調査では、支持が不支持を上回ってるんだよね。

つまり、安保法案には反対だけど、選挙で入れるなら自民党という人が多いんだ。自民党以外の党は今ひとつ信用できないって、国民が思っちゃってるんだよね。

青木 そうですよね! 僕も同じ問題意識を抱えています。安保法案と経済政策について考えた時、実生活に関わっているのは経済政策です。すると、やはり経済政策を進めて、それなりに成果を出している安倍政権を支持する方向に傾く。

田原 前々回の選挙のときも、前回のときも、僕は全党の党首にテレビでインタビューをしたんだ。そうすると、野党の党首はみんなアベノミクス反対と言う。でも、じゃあ何をするのかというと、対案をどこも打ち出せないんだよね。

けっきょく批判してるだけなんだよ。そうすると、国民も選びようがない。

青木 僕が前回の参議院選挙と統一地方選挙で疑問に思ったのも、まさにそのポイントでした。何を争点に考えて投票すればいいのか、まったくわからなかったんです。

安保法案についても、反対の声を上げるだけで具体的な対案がないのが気になります。

田原 今年6月4日の国会の憲法審査会で、早稲田大学法学学術院教授の長谷部氏が、安保法案は憲法違反だと発言したでしょう。この時以来、野党はみんな「憲法違反だからやめろ」としか言わなくなった。これがよくなかったよね。

むしろこの法案に関しては、最終的に公明党ががんばったんだよ。

青木 がんばった、とは?

田原 自衛隊が、日本以外の国が攻撃された時に、防衛出動だけでなく、武力行使もできる事態というのを、「日本と密接な関係にある他国に武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求権が根底から覆される明白な危険がある事態」と設定したんだ。

これって、相当厳しい条件でしょ? 僕は、こういう事態はほぼ起こりえないと思っている。だから、日本が集団的自衛権を行使することはほぼないと予想している。その代わり、後方支援をする事態は大いにあると思ってるけど。

青木 それは、公明党の主張だったんですね。

田原 でもここからは綱引きだね。日本の存立を根底から覆す危険性があるかどうか、判断するのは総理大臣だから。

9.11のときにブッシュ大統領は「これはアメリカに対する戦争だ」と言って、アフガニスタン侵攻を行い、イラク戦争に踏み切ったわけだから。

この判断をどうするかが、これからの問題だね。

現代の若者は、戦争に拒否感を持っていない?

青木 今回、田原さんにお聞きしたかったことのひとつに、世代間格差が広がっている中、若者が政治にどう関心を持てばいいのかということがあったのですが......。

田原 世代間格差って、広がってるのかね。

青木 広がっています。

田原 何の格差が広がっているの?

青木 僕らの世代は人口が少ないので、特に政治の分野では構造的に人口の少ない若者世代への政策は後回しになってしまいます......。

田原 少ないから貴重なんじゃない。

青木 そうなんです。でも......選挙の時にはやはり若者の意見は通しにくいという面があります。

田原 人数少ないのに、そもそも若い人は投票率が低いじゃない。

もっと言うと、年寄りは保守的だから自民党支持というのが大間違いなんだよね。今は年寄りであればあるほど、戦争反対だよ。僕なんかは、小学校5年生のときに日本が戦争に負けたからね。とにかく戦争は反対、嫌なんだ。だから、戦争に近づくような法案は絶対に反対。

今の若い世代はそういう体験がないから、戦争に対する拒否反応はむしろ少ないでしょう?

青木 そんなことはないです。僕らの世代も、戦争に対しての拒否反応は強いですよ。

田原 なぜ嫌なの?

青木 僕らはイラク戦争などなどを常に報道を通して見て、戦争が良くないという思いは強く持っています。

それに、公教育でも私生活でも多くの場面で、先の大戦から学ぶという姿勢を持つようになっていると思います。

田原 イラク戦争で日本は傷ついてないのに? いや、アメリカ人ならわかるよ。イラク戦争で大勢のアメリカ人が亡くなったし、フセインを倒せば民主的になると思って介入したイラクは、むしろむちゃくちゃになってしまった。これは大失敗だったと、反省したわけだ。でも日本人が反省する要素はないでしょ。9.11ってそもそもどんな事件なのか知ってる?

青木 同時多発テロです。

田原 2001年の9月11日に、アルカイダ系のイスラムの人間が、ニューヨークの国際貿易センタービルとワシントンのペンタゴンに自爆テロを仕掛けたよね。そのときにブッシュ大統領は、これはアメリカに対する戦争だとして、ただちにアルカイダの本拠地であるアフガンに攻撃を仕掛けた。これには国連安保理も賛成して、NATOが集団的自衛権を発動して戦争に参加した。これがアフガン戦争。

で、アルカイダと仲の良いフセインがじつは大量破壊兵器を持っていて、このままだとイラクがとんでもないことになるという憶測から、イラク戦争を始めた。日本はそれに賛成して、サマワに自衛隊を派遣したよね。

で、君はこの件のどこがダメだと思うの?

青木 まずきっかけとなった同時多発テロについて。テロはそもそもよくないですよね。そして、その後始まったイラク戦争については、連日の報道で悲惨な戦争の情景に触れることで、戦争というものがいかなる理由であれ正当化されないことが示されたと思います......。

田原 当時の日本の報道で、アフガン戦争とイラク戦争に反対するものはほとんど無かったよ。

やっぱり君はイラク戦争反対の機運が高まっていた2009年頃にアメリカにいたから、そういう感覚を持ってるんじゃないのかな。

青木 僕は特別そうなのかもしれません。でも、今の日本の若い人も、戦争に対する拒否感は強く持っていますよ。

だって、私たちは嫌というほど戦争への教育がされてきています。敗戦国として、広島や長崎、沖縄など多くのリアルを幼い頃から目の当たりにしていますし。

ですので戦争に対する拒否感も強く、もはや拒否反応が強すぎて、戦争のことなんか考えたくないという人も多いと思います。

田原 考えたくないっていうのは無責任だよ。だったら、政治に関心がないのもわかる。

青木 僕は、その思いが投票率の低さに現れていると思うんです。つまり、複雑な問題から逃れたい、考えたくないということから、「関わらない」という選択をしてしまう。

だけど、無関心ではいられても、無関係ではいられないはずなんです。

歴史を学び、具体的な事例をもとに安全保障を考える

田原 じゃあそれを変えていかなきゃね。

そもそも君は、昭和の戦争をどう捉えているの?満州事変から始まって、日中戦争、太平洋戦争って、どんな戦争だったと思ってる?

青木 日本が列強諸国の一つとして、侵略戦争をした、という認識を持っています。

田原 そんなこと言うと、イギリスもアメリカもフランスもオランダも、みんな侵略戦争やってるんだよ。なんで日本だけが、侵略戦争ということを認めて肩身の狭い思いをしてるの?

青木 日本は太平洋戦争に負けたので、国際社会の中で非を認めざるを得ない立場にあるからじゃないでしょうか。

田原 ということは、君の認識は安倍晋三と同じということだね。

青木 いえ、「侵略」という文言について定まった定義はないと考える首相とは異なる立場だと考えます。

もっとも、敗戦国だからこそ、非を認めざるを得ない立場であるというところは共有しているかもしれません。

田原 ポイントは敗戦国かどうかじゃないんだよ。第一次世界大戦は知ってる?

青木 歴史の授業で習いました。

田原 第一次世界大戦というのは、人類が行った初めての総力戦だったんだよね。ヨーロッパの全土が戦場になって、一般市民を含めて1千万人以上が亡くなった。その戦争の経験を踏まえて、欧米諸国は「戦争というのは悪だ。戦争は今後一切やめよう」と決めた。

それで1928年に、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、日本をはじめとする15カ国がパリ不戦条約を結んだ。

でも日本は、そのわずか3年後に満州事変を起こして、1937年に日中戦争を始めた。つまり、パリ不戦条約に違反して戦争を始めたの。だから責められてるんだよ。

青木 その認識はありませんでした。というより、こういう教育はされていないですし、こうやって田原さんに僕が話を聞かなければわかりませんでした。

歴史からきちんとその本質を見出さないといけませんね。そういうことから学んでいかないと、今回の安保法案に対しても自分の意見を持つことができないですよね。もっと勉強します。

田原 じゃあ、自衛隊を持つのはいいこと? 悪いこと?

青木 いいことかどうかというのは、非常に抽象的なご質問なので、答えるのが難しいのですが、専守防衛という範囲にあっては、いいことだと思います。

田原 これまで日本の安全保障は、アメリカに委ねていたわけだよね。日本が危機のときには、アメリカが日本を守ってくれる。でもアメリカが危機の時は日本はアメリカを守らない。全部おまかせだった。

例えばイラン・イラク戦争の時に、アメリカの海軍はペルシャ湾を通る船を護衛していた。その船の70%が日本の船だったので、アメリカは日本にも自衛隊を出して護衛しろと言った。でも、日本は集団的自衛権を行使できないから、日本の船だけを守るということはできるんだけど、他の船も通るのであれば自衛隊は出せないと言った。

これ、自衛隊は行くべきだったと思う?

青木 いや、行かなくて良かったと思います。

田原 なぜ? 7割が日本の船なのに? それはずるいってアメリカは言うし、世界の世論としても行くべきだというほうが多数派だよ。

青木 うーん......。そこはパワーバランスであったり、ステークホルダーとなっている国々のそれぞれの思惑があって、外交レベルでの折衝に委ねられると思います。

日本がずるいという見方もあるかもしれませんが、アメリカがいきなり撤退するということも非現実的で、少しずつ少しずつ東アジアの安全保障における日本の比重を大きくしていくという意味では当時は行かなくてもよかったのではと。

田原 こういった事例から、日本は今後安全保障について、どうあるべきかということを考えていかないと。

これから日本の将来に向けて、若者ができることは?

青木 そうですね。こういう歴史的背景や個別の事例などについては、国民が自分たちで勉強していくべきことなんでしょうか。

田原 いや、政治家には説明する責任があると思うよ。

青木 いま、そういう努力ができている政党はないですよね?

田原 野党が本気になって自民党を負かそうとしたら、そういうこともやるようになるよ。

青木 田原さんとしては、今年の参議院選挙で野党が本気を出すと思いますか?

田原 やるでしょう。そうじゃないと、野党じゃない。

そして、とにかく自民党が進めている安保法案は日本を滅ぼす、日本を戦争に巻き込む可能性が非常に高いということを主張して、自民党を負かすんだ。それから対案を考えればいい。

青木 とりあえず安保法案反対で一枚岩になって、選挙に勝つと?

田原 そうだね。

青木 対案を出した上で、国民が選ばなくてもいいんですか?

田原 理想はそうだけど、夏までに対案を考えている時間がないよね。対案を考えようとすると政党同士の意見がまとまらなくて、バラバラになってしまうし。

だから、とりあえず参院選は野党がみんなで手を組んで、勝つことに集中すると。

青木 選挙後のビジョンが見えないというのは、国民の政治不信を助長してしまう気がするのですが......。

昨年12月以降の世論調査をみても、内閣支持率が上昇するなど、やはり安全保障以上に、経済政策を重視している国民も一定数いたりして、安全保障に関する方針が嫌だから野党というふうにはならないと思うんですよね。

安全保障以外の分野に関しても、選挙後のビジョンが見えてこなければ......。

田原 僕は野党が一つにまとまって、参議院選挙にとにかく勝とうとする姿勢を見せれば、国民はそれを信じてついてくると思う。

青木 それに対して、僕らができることというのは、何かあるのでしょうか。

けっきょく僕らは蚊帳の外で、意見を政策に反映させることは難しいのかなと思ってしまったのですが......。

田原 そんなことないよ。政治家に働きかけて、政治家を動かせばいい。そんなに難しいことじゃないよ。僕は総理大臣を3人失脚させたことがある。

青木 いやいや、それは田原さんだからできたことですよね(笑)。

田原 僕みたいにテレビ番組なんか持ってなくても、勉強会を開いて、そこに政治家を呼べばいいんだよ。そういう地道な運動の繰り返しで、少しずつ変えていくんだ。

青木 僕らの考えを議員の方に知ってもらって、国会で立案してもらうと。

田原 そう。若い政治家なんかは喜んで来ると思うな。

こっちも学生だけでなくて、学者とか弁護士とかいろんな人を呼んで、みんなで議論すればいい。そういう活動をしていると、マスコミが取り上げてくれることもあるでしょう。

SEALDsも、新聞やテレビに取り上げられたからあんなに知名度が上がったわけだし。

青木 そうですね。僕自身も、18歳選挙権の実現という活動を3年前からずっとやってきて、最初はどこも相手にしてくれませんでしたが、だんだん世論が動いて、ついに実現することができました。

こういうふうに、とにかく動いて、地道に発信していくことで、社会を変えることはできるんですね。

田原 そう思うよ。大事なのは諦めないこと。そして、困難をおもしろがること。

今の若い人って、けっこう楽観的なところもあるでしょう。ベンチャー経営者なんかに会うと、未来をつくっていくということにワクワクしている人ばかりだよ。

君も、これからの未来を引っ張っていくひとりとして、がんばってね。

青木 ありがとうございます。僕自身、政治に関心ある若者を増やしていくことに壁を感じていたのですが、地道にやる以外に方法はないと腹をくくることができました。

これからもがんばります。

(2016年2月2日「記事前編」「記事後編」より転載)

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