特異な日本のニュースメディア環境、高齢化がさらに際立てる

日本のニュースメディア環境は、欧米の主要国とはかなり異なる。新聞紙やテレビ放送のような伝統的なメディアだけではなくて、オンラインメディアになっても欧米とは趣が異なる。

日本のニュースメディア環境は、欧米の主要国とはかなり異なる。新聞紙やテレビ放送のような伝統的なメディアだけではなくて、オンラインメディアになっても欧米とは趣が異なる。このほどReuters Instituteが公開した「Reuters Institute Digital News Report2013年版」でも、多くの調査結果で違いを浮き彫りにしていた。(The Reuters Institute for the Study of Journalism(RISJ)は、2006年秋、the Department of Politics and International Relations at the University of Oxfordに設立.)

今年のレポートもDigital News Reportと題しているように、オンラインを含めたデジタルニュースの現況を調査している。欧米の先進国(UK, US, Germany, France, Italy, Spain, Denmark)にJapanとBrazilを加えた9カ国のオンライン・ニュース消費者を対象に調査を実施し、その結果を多くのグラフで紹介している。ここでは、その中のいくつかのグラフを取り上げるが、詳細はレポートを参照されたい。

まずは、ニュースメディアのキングであった新聞紙の購読状況から。有料の新聞紙を先週購読した割合は次のようになる。定期購読も含んだ割合のはずだが、やはり日本がトップである。若年層の新聞紙離れが進んでも、日本では習慣で新聞を読んでいる高齢層の割合が多いから、日本のトップは安泰かも。

さらに販売店の存在も日本のトップを支えているのであろう。9カ国の中でも、宅配の割合がダントツに高い。

次の表は、インターネット人口の男女比、および年齢層別の分布である。高齢化が進む日本では、インターネット人の高齢化も先行しているようだ。

米英を中心に新聞社系ニュースサイトの有料化が進んでいるが、一般人もニュース愛好家も有料化を受け入れる割合は、先進国では似たり寄ったりである。英国が特に低いのは、充実したBBCが存在し、さらに購読料を取られたくないためであろう。一般にニュースサイトが充実し競争の激しい国では、無料サイトで済まそうとする人の割合が多い。

アクセスしているニュースサイトのタイプによる利用割合は、次のようになっている。伝統的なニュースブランド、アグリゲーター、それにソーシャルメディア/ブログの3タイプに分けて、答えさせている。日本でアグリゲーターが飛び出ているのは、ヤフーニュース(Yahoo!ニュース)が独走しているからだ。

上のグラフの伝統的なニュースブランドをテレビ放送ブランドと新聞ブランドに分け、利用割合を示したのが次の表である。ここで興味深いのは、日本では新聞ブランドの利用が26%と低いことだ。紙の新聞は先進国でトップを誇っているのに、同じ新聞のオンラインサイトは頻繁に利用されていないようだ。これも、ヤフーニュースなどの新興のニュースサイトに主導権を握られているからだ。また米国では、若いユーザーに支持された新興ニュースサイトや新しいタイプのアグリゲーターが次々と生まれてきており活気がある。

 日本のオンライン・ニュース消費者に先週利用したオンライン・ニュース・サイトを答えさせた結果が、次のようになった。トップ3には新聞ブランドが現れていない。日本の新聞が本格的なオンラインシフトに突っ走れないで、長く紙偏重に固執している間に、ヤフーニュースは完全に日本のオンラインニュース市場の主導権を握ってしまった。21世紀に入る前後では、ニュースサイトの利用者は若者が多く、若者が好む技術系ニュースが中心であった。ところがヤフーニュースは、技術系ニュースを脇役に追いやり、エンターテイメント、スポーツなどの他に政治や経済、国際ニュースなど、硬派の記事もあえて組み入れた。つまり若者をメインターゲットにしないで、新聞社が得意とする中高年層や一般人を先取りして取り込んできたのが、成功の一因である。

さらにモバイルでも、ヤフーニュースが独走している。

最後に興味深い調査結果を。各国のニュース消費者が、ニュース記事を共有したり、ニュース記事に対してコメントを投稿したり、またニュースをネタに議論しているかを調べた。その結果では、ニュースを共有したり、コメントを投稿する割合が、日本人は際立って低くなっている。また友人とニュースについて語り合うことも、日本人はあまり行わないという。特にリアルの世界(オフライン)では、日常的にニュースについて議論しない国民となっている。これも高齢化のせいかも。

(この記事は「media pub」6月21日付記事の転載です)

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