近年、カーン・アカデミーを始めとする学習系のwebサービスが数多く出現しており、国内でも数多くのサービスがある。
どのサイトもよく出来ている。おそらく20年前と比べて、「勉強したい人」が手にすることの環境は、格段に良くなっていることだろう。
インターネットにアクセスさえすれば、あらゆる学習教材が存在し、そのどれも工夫が凝らされている。
それにもかかわらず、私は多くの学生や社会人が、「Webで効果的に勉強している」と言う話を寡聞にして知らない。
実は、その理由は経験的には明らかである。
独習を開始する時、人が最初に頭を悩ませるのが、「学習教材」であることは間違いない。
だが、「勉強したい人」がどのように学習コンテンツを選択するのか、ということに関しては20年前からあまり進歩していない。
20年前は、「勉強したい人」が手にすることの出来たのは、殆どの場合書籍や参考書であった。
「勉強しよう」と思った人が本屋を訪れると、そこには無数の参考書やら書籍やらが存在し、その状況ですら、どれを手にとったらいいか・・・、という状況だった。
そして、多くの人は「教師」や「友人」からの紹介によって、教材を選択した。
そして、それは今も変わらない。
だが、インターネットにアクセスすると、無数の資料やら動画やら、サービスやらが存在し、どれを手にとったらいいか判断をするのは不可能である。
「ネット上の評判」もどれが真実で、どれがウソなのか、区別をすることは難しい。
実際、若手社会人、大学生、高校生、中学生ら、「勉強しなければいけない」人々は、インターネット上の学習コンテンツの使い方に困っている。
学習はSNSやゲームなどの他のウェブサービスと異なり、「効果を体感」することに恐ろしく時間がかかる。
「なにか違うな・・・この参考書は変えようかな」
と思った頃には、すでに莫大な時間を費やすことになっており、変更は難しい。
だから、「勉強したい人」は、非常に保守的だ。どうせなら、一番信頼の置ける教科書で勉強したいと考えるのだ。
多くのコンテンツをちょっとずつ噛じって・・・、くらいの知識であれば「豊富なコンテンツ」ということに惹かれるかもしれないが、そこで得た知識など、放課後のおしゃべりや飲み会のネタになるくらいである。
せいぜい「雑学」である。
現場の感覚として、生徒らが最も気にするのは、「これをやっておけばまず大丈夫」という保証である。
本当に「勉強」し、きちんと知識を使いこなすのであれば、「勉強したい人」が求めるのは、「最も信頼のおける、実績あるコンテンツ」に他ならない。だから、「先生の勧める」参考書で皆勉強する。
事実、勉強に関して学校や塾の先生が一番受ける質問は、「とりあえず、どの参考書をやっておけばいいですか?」という質問だ。
「自分で勉強できる」一握りの生徒や社会人にはWebコンテンツも良いかもしれない。「豊富なコンテンツ」という切り口も、もしかしたら魅力的に見える可能性もある。
しかし、殆どの人物にとっては、「コンテンツが豊富」なのは、特にありがたい話でもない。
勉強したい人が求めるのは、「豊富な学習コンテンツ」ではなく、「信頼できるたった一つの学習コンテンツ」なのだ。
・2013年11月21日 Books&Apps に加筆修正
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