大学を象徴するタワー。前の芝生では学生が勉強したり昼寝をしている。
去年の夏、長年の夢を叶えてアメリカでの4年間の正規留学を始めた。生まれ育った日本を出ることで多くの新たな出会いに恵まれたが、同時に自分の苦手なことにも向き合うことになった。
夏休みに北欧一人旅をした際に立ち寄ったロシアにて
私はコミュニケーションが苦手だ。
私は内向的で、パーティーなど多くの知らない人が集まる場所は好きじゃない。人の輪を広げるのも不得手で、親しくない人と話すと気を使ってすぐに疲れてしまう。 でも私は自分の意思で、 アメリカの中でもコミュ力高めの州、テキサス州の大学に入った。だから、自分の苦手意識ともずっと向き合ってきたし、これからもそうしようと思っている。
内向的な私をまず困らせたのは、知らない人との"small talk"だ。Small talkというのは、たまたま居合わせた知らない人同士が話す、天気のことなど当り障りのない話のことだ 。これはアメリカ全土にある文化だが、テキサス州では非常に多い。州の地理・歴史から見ても、フレンドリーなラテン世界の文化と融合した独自の気風があるテキサスでは、知らない人同士が元々友達であるかのように沢山話す。
お世話になった教授宅でのパーティーの様子
1年間一緒に暮らしたルームメイトにも 驚かされることは沢山あった。 中でも衝撃的だったのは、 ルームメイトがとある学生団体の設営テントでスタッフにあれこれ団体に関係ないことまで質問したりし、普通に話し出したことだった。
テントで無料配布の物だけ貰って帰ろうと考えていた私は驚いた。①知らない人と話して②あれこれ聞いて長く居座る のは迷惑では...とその時考えたが、団体側も当たり前のように談笑しているのを見て、控えめでいる事に美徳を置く日本とはやはり違う環境なのだと悟った。結果この出来事は、意見を言わない=意見がないという考え方のアメリカでは、質問をすることが非常にポジティブなことであるということを教えてくれた 。
色々と困惑することは多かったが、コミュニケーションをしないと人はやっていけない。
内向的な私でも、友達が欲しくないわけではない。友達と遊んだり談笑することはストレスの多い学生生活の中で良い息抜きになるし、 将来のネットワーク作りにもなる。大学の授業では、 教授や他の学生に分からないことを聞かないと授業にはついていけないし、ディスカッションの授業では発言しないと成績を保てない。
同パーティーでクラスメートと。
こんな内向型人間でも、不器用ながらにコミュ力を強化しようと色々とやってはみた。
以下の私が行った方法は、これからコミュ力高めの国に身を置く、私のような"内向型だけど友達欲しい人間"に効くかもしれない。
⓵ 開き直って文法めちゃくちゃでも話す
渡米して一学期目は、緊張と、思いの外他の留学生がペラペラだったショックから、"上手く話せなさそうなら話さない"などという、羞恥心からくる馬鹿げた自己ルールに縛られていた。 しかし自分より英語のできない留学生が人と上手くコミュニケーションをとっているのを見て、以前よりも人と話せるようになった。
②チャンスをつかもうとする
コミュニケーションの授業で 習ったエレベータートーク(エレベータで同乗した人とのコミュニケーション 。ビジネスの面では昇進や新規事業の立ち上げなどのチャンスにつながる)を使って、 学部の教授とエレベーターで乗り合わせた際には話しかけて、興味のあるトピックについて聞いたり、威圧的な地学の教授にも、 興味のあった考古学のプロジェクトについて伺った。
リサーチキャンパスにある考古学研究室の様子。ここで化石の保全の手伝いをしていた
結果学部の教授からは面白そうな本を借り、考古学の研究室では化石に関連したボランティアを始められるようになった。一歩踏み出して自分の想いを伝えることで、様々な扉が少しずつ開くことを実感できたし、熱意を汲んでくれる環境の有り難さにも気づかされた。
⓷話をしていて楽しいなと思った人を遊びに誘う
これは人と知り合うのに手っ取り早い方法だが、最初はハードルが高かった。 でも仲良くなれなくてもしょうがないと割り切ってから行くことで、数は多くないが食事や映画、コンサートに行って、結果楽しい時間を過ごすことができた。
友達と行った、(ずっと行きたかった)ピクサー映画音楽のコンサート
だが一つ、 気をつけておかないといけないことがある。それは事前に遊ぶ予定を立てておいても、当日にまたリマインドをするようにということだ。私のいる場所は、時間厳守の文化のある日本とは違い、予定や時間を忘れてしまったり盛大に遅刻したりする人が多い土地であるので、あまり日本基準の考えで相手にイライラせず、こちらがリマインド程度はしてあとは心に余裕を持つことも大切なのだ。
誰とでも友達であるかのようにたくさん話すようなテキサス人であるが、small talkの後は何事もなかったのかのように解散する光景も少なくない。友達になるためのとっかかりは作り易いが、その後どうしたら良いのかは分からず、今も模索中だ。
勿論、やってみたことの中で上手くいかないこともあった。
⓸団体に所属する
右も左も分からない新たな土地では、"ここなら、この人たちなら大丈夫"と思える、帰属意識が芽生える環境を持つことが大切なように思う。
私は先学期、入学前から興味を持っていた、 ガン患者の子供を支える学生団体に入ろうと思い、その団体主催のソーシャル("団体メンバーと知り合おうの会"のような物)にも足を運んだりした。
しかしそれらはどれも内輪の集まりで、そもそも内向的である私には、出来上がった輪に入って話をするなど高ストレス環境でしかなく、メンタルは行く度にやられ、結果行くのもやめてしまった。
部屋で一人晩御飯を食べている様子
ソーシャルで味わった空気感は今思い出すだけでも疲れる。また同団体にはアプリケーションを書いて合格しないと入れないのだが、 合否通知も"テキトーな"テキサスらしく、何度問い合わせても来ず、やっと来たと思ったら不合格と知るだけだった。
大学のアメフトチーム"テキサス・ロングホーンズ"の試合後選手が帰っていく。約十万人を収容するスタジアムは毎回熱気に包まれ、圧倒される。
"You cannot Not communicate" (コミュニケーションを取らないということは不可能)
これは受講した授業の教科書に書いてあったことで、コミュニケーションを取らない="あなたとは話したくない"の意思表示ということだ。日本ではコミュニケーションを取らないという選択肢があったが、"コミュ強"テキサスではそうはいかないようだ。
夏休みの今、私は来学期こそは自分の興味のある学生団体に入りたいと思っている。人の輪の中に行くだけで気を張らないといけない自分には正直疲れるが、苦手意識と向き合って少しずつでも改善して行くつもりだ。
ハフポスト日本版は、自立した個人の生きかたを特集する企画『#だからひとりが好き』を始めました。
学校や職場などでみんなと一緒でなければいけないという同調圧力に悩んだり、過度にみんなとつながろうとして疲弊したり...。繋がることが奨励され、ひとりで過ごす人は「ぼっち」「非リア」などという言葉とともに、否定的なイメージで語られる風潮もあります。
企画ではみんなと過ごすことと同様に、ひとりで過ごす大切さ(と楽しさ)を伝えていきます。
読者との双方向コミュニケーションを通して「ひとりを肯定する社会」について、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。
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