アメリカ人歌手のホイットニー・ヒューストンとボビー・ブラウンの娘、ボビー・クリスティーナ・ブラウン(22)が24日、ホスピス施設に移送されました。このニュースを聞いて、「なぜホスピスへ?」と思った方も多いのではないでしょうか。
ボビー・クリスティーナは1月31日、ジョージア州の自宅のバスタブで意識不明の状態で発見され、医療行為によって昏睡状態にされました。その後、さまざまな治療を受けていたそうですが、容態は悪化する一方のため、家族がホスピスケアを選んだそうです。
ホスピスというと、末期がんの患者さんのための施設、という印象があるかもしれません。日本のホスピスは、主に末期がんやエイズの患者さんが対象ですが、アメリカでは6ヶ月以内の余命宣告を受けた人であれば、どんな病気でもホスピスケアを受けることができます。事実、アメリカのホスピス患者の60%以上は、末期がん以外の病気をもった人々です(→「アメリカのホスピスについて知らなかった6つのこと」)
また、ホスピスケアの目的は医療だけではありません。患者さんやご家族に心のケアを提供することも、ホスピスケアの役割です。
アメリカのホスピスには必ずソーシャルワーカー(社会福祉士)とチャプレン(教会や寺院に属さず病院やホスピスなどで働く聖職者)がいて、患者さんやご家族の精神的なサポートをします。そして近年では、音楽療法士を雇っているホスピスも増えてきています。
ボビー・クリスティーナがホスピスケアを受けることになった理由は、彼女の死が近づいているからであり、ご家族がそれを受け入れたからでしょう。
ボビー・クリスティーナも母親のホイットニーのように薬物の常用者だったそうですが、彼女がなぜ意識不明の状態で発見されたのかはわかっていません。いずれにしても、ご家族にかかるストレスは計り知れないものです。
私もアメリカのホスピスで音楽療法士として働いていたとき、ボビー・クリスティーナのような患者さんやそのご家族と出会いました。このようなとき音楽療法士の役割は、ご家族が患者さんと有意義な時間を過ごすお手伝いをすることにあります。また、音楽を使ってご家族に心のケアも提供します。
ボビー・クリスティーナがホスピスでおだやかな最期を迎えることができますように。そして、ご家族が精神的なサポートを受け、このつらいときを乗り越えることができるよう願います。
(「佐藤由美子の音楽療法日記」より転載)
著書『ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽』(ポプラ社)
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