昨年の秋、愛知県の中学校で音楽療法の講演をしたとき、中学生から素朴な質問を受けました。
「動物に音楽を聞かせてあげることはありますか?」
ちょうどその1か月前、保護した犬を飼いはじめたところでした。むつ市に行く途中で見つけたので、「むつ」と名づけて飼うことにしたのです。
むつは捨て犬ということもあり、精神的に安定していない面があります。ひとりにすると泣いたり、注目をひこうとして家の物を噛んだりするのです。そこで、いろいろな楽器を弾いて聞かせて、反応を見ていたところでした。
すると、どうやらむつにも音楽の好き嫌いがあることがわかりました。ピアノやギターは興味津々に聴くのですが、ネイティブアメリカンフルートを吹くと、吠えて逃げます。
フルートに向かって吠えるむつ
ところが、アイリッシュハープを弾くと、近寄ってきて必ず眠ってしまいます。むつが一番落ち着くのが、ハープの音色のようです。
ハープを弾く準備中
5分後・・・
音楽が人間に与える効果はさまざまな研究結果から明らかですが、音楽が動物に与える影響については、まだ未知の世界です。
でも、近年この分野の研究も進んでいます。特に、シェルターや研究室などにいる動物のストレスを軽減するために、どのような音楽を利用すればいいのか、関心が高まっているのです。
むつを見ていて、やはり犬にも好きな音楽や嫌いな音楽があって、音楽の種類によってさまざまな反応があるのだと思うようになりました。
皆さんのペットは、音楽が好きですか?
【佐藤由美子】
米国認定音楽療法士。ホスピス緩和ケアを専門としている。米国ラッドフォード大学大学院音楽科を卒業後、オハイオ州のホスピスで10年間勤務し、2013年に帰国。著書に「ラスト・ソング 人生の最後に聞く聴く音楽」(ポプラ社)がある。
(2016年1月22日「佐藤由美子の音楽療法日記」から転載)