9日に予備選が実施されたニューハンプシャー州は、大方の予想通り、民主党はサンダース氏、共和党はトランプ氏が勝利した。
勝利した理由は明確だ。
まず、民主党サンダース氏だが、ニューハンプシャーとは関係が濃く、隣のバーモント州でバーリントン市の市長を務め、同州選出の無所属上院議員として活動してきた。また白人有権者が9割以上を占める。初戦のアイオワ州が「保守」である一方、ニューハンプシャー州は「リベラル」で、社会民主主義者であるサンダース氏にとっては有利に働く。
ニューハンプシャー州は経済への関心が強く、民主党で経済問題が心配だと答えた人は約75%。約4割が「次世代の米国人の生活は現状より悪くなる」との見通しを示し、9割の人は米経済が富裕層を優遇していると答えている。このような状況下で、クリントン陣営の3倍近い資金をテレビ広告などに投入。事前の世論調査では支持率でヒラリー・クリントン氏に10〜15%の大差をつけていた。
だが、結果的には予想以上に差をつけての勝利となり、アイオワ州でほぼ互角だった勢いそのままにサンダース氏が急伸している。サンダース氏の得票率は60.4%となり、クリントン氏の38.0%を大きく上回った。
一方、共和党トランプ氏だが、これも予想以上に、投票率35%を獲得した。勝因としては、白人有権者が多く、経済やテロへの強い不満がある。共和党で経済が「非常に心配」だと感じている人は約75%、テロの脅威については6割が「非常に心配」と答えた。
また、連邦政府に対しては9割が「不満」を抱き、政府の仕事ぶりに「怒りを覚える」との回答も4割に上った。共和党自体に対しても、半数が「候補者に裏切られた」と感じている。次期大統領には主流派でない人物を望むと答えた人も半数を占めた。
前回クルーズ氏に敗れたトランプ氏にとっては、今回が大きな正念場であったが、見事に勝利を収めることになった。キリスト教保守派(福音派)が少ないニューハンプシャー州だが、それを支持基盤としているクルーズ氏が3位になったのは予想外であった。それほど、現状の主流派に対する不満が強いということだろう。
一方、アイオワ州で急伸を見せたルビオ氏だが、直前の討論会でクリスティー知事に「敗北」し(皮肉なことにクリスティー知事はニューハンプシャー後に撤退を表明)、主流派の中で飛び抜けるかと思われたが、結果的にはブッシュ氏らと並び、伸びきることができなかった。
しかし、今後は移民や人口が多い州が続くため、主流派にとっては有利になる。その意味では、「非主流派」であるトランプ氏とクルーズ氏も一本化されず票を分け合っている状況は決して悪い状況ではないと思われる。
トランプ氏勝利宣言で「米国を再び偉大にする」
予想以上の勝利となったトランプ氏だが、勝利演説にて「米国を再び偉大にする」とキャッチフレーズを掲げた。さらにその中で、「我々は中国と日本を打ち負かす。そしてメキシコも打ち負かす」と宣言し、会場から拍手喝采を浴びた。
これは以前から何度も主張しており、メキシコに関しては、米国とメキシコの間に「大きな壁」を建てて移民を受け入れるべきではないとしている。
中国に関しては、米中貿易改革を公約の一つにも掲げており、「中国はアメリカの雇用とカネをかすめ取っている」と言い放っている。中国の人民元切り下げを止めさせ、環境基準や労働基準を改善させる。また知的財産保護やハッキングに対して厳しく対処する、としている。(関連記事:過激な発言が目立つトランプ、実際は何をしようとしているのか?)
そして、日本だが、自身のfacebookで2014年に「我々は日本に関税無しで何百万もの車を売ることを許してきた。なんとかしなければならない。我々は大きな問題を抱えている!」と発言している。
また、昨年末には「誰かが日本を攻撃したら、我々はすぐに駆けつけ、第三次世界大戦を始めなければいけないんだろう?我々が攻撃されても日本は助けない。フェアじゃないだろ?これでいいのか?」と不満をぶつけている。
米国の大統領というのは、実質的には地球の大統領と言っても過言ではなく、世界中に大きな影響を与えている。これは当然日本も例外ではない。ルビオ氏であれば、日本と良好な関係を築けそうであるが、その若さや経験不足から一抹の不安も抱えている(関連記事:米大統領選、共和党最有力候補マルコ・ルビオとは?)。
今月下旬には移民の多いネバダ州やサウスカロライナ州が続く。ここで、クリントン氏、ルビオ氏が勝利できなければ、「非主流派」が勝利する可能性は一段と増すだろう。
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(2016年2月11日「Platnews」より転載)