イギリスでひとりの子供を大学卒業まで育てるのにかかる費用を、3人も産んでおいてから初めて調べてみました、産む前に知ってしまうと産めなくなりますからね・・・
以下のガーディアン紙とテレグラフ紙の記事はいずれも同じソース、民間保険会社LV=が発表したレポート"Cost of a Child: From cradle to college"2013年版です。
Telegraph: Cost of raising a child rises to £227,000
(以下、£1 = 170円換算)
イギリスで子供が産まれてから21歳までにかかる費用
教育費(*):£72,832(約1,238万円)
*私立学校の学費は含まず。 私立学校に入れた場合、£179,260(約3,047万円)
保育費&ベビーシッター:£63,738(約1,084万円)
食費:£19,270(約328万円)
衣料費:£10,770(約183万円)
ホリデー費:£16,195(約275万円)
趣味・おもちゃ代:£9,316(約158万円)
レジャー費:£7,353(約125万円)
おこづかい:£4,458(約76万円)
家具代:£3,462(約59万円)
個人の持ち物:£1,155(約20万円)
その他:£13,909(約236万円)
合計額:£222,458(約3,782万円) 私立学校に入れた場合、£328,886(約5,591万円)
これはイギリスの平均でロンドンだと£239,123(約4,065万円)になります。
日本の同様のデータを調べてみましたが、2005年のAIU保険会社が出した『現代子育て経済考』を出展としているケースが多く、もっと最近のデータがありませんでした。
子ども応援便り:一人の子どもの出産から大学卒業までの総費用
日本で子供が産まれてから22歳(大学卒業)までにかかる費用
教育費(*):1,281万円
*上記イギリスのデータと合わせるため、中学校から大学まで全部国公立の場合。 なお、 中学校から大学まで私立だと、1,916万円(私立文系)、2,032万円(私立理系)、2,818万円(私立医・歯学部)となる。 またイギリスのデータと合わせるため、保育費を引いている。
保育費(*):64万円
*公立幼稚園の場合。 私立幼稚園の場合、147万円。
食費:671万円
衣料費:141万円
おこづかい:451万円
出産・育児費用:91万円
保健医療・理美容費:193万円
個人の持ち物:93万円
合計額:2,985万円 幼稚園から私立で大学が私立文系の場合3,703万円
いやー、何か頭がクラクラしてきました。
[ 訂正 9/11 ] 日本の数字を間違えていたので訂正しました。
イギリスと日本の違いを簡単にまとめておきます。
1. 日本の教育費には内訳が示されていないが、塾・予備校など学校外学習費が含まれている。 日本の教育費におけるこの費用(及び関連産業)は非常に大きいと想定され、そりゃあ少子化で代々木ゼミナールが大幅事業縮小するわけである。 なお、イギリスでは小学校の間は家庭学習(宿題)は親がみるのが普通で(→『共働き世帯の時間の使い方』)、チューター(家庭教師)をつけるのは私立学校に行く一部の生徒(私立中学に行くのは7%)で塾産業は日本に比べると存在しないに等しい。
2. イギリスの子育てで非常に高いのが保育費。 これは公的保育がほとんど存在しないため。 4年前に『ロンドン保育事情』というエントリーを書いたが保育費はさらに上がり続け、息子たちが通うナーサリーの2歳以下の保育費(週5日、8AM - 6PM)は何と月額£1,700(約30万円)を超えた。 上記ガーディアン記事にあるように、子育てにかかる費用が高い年代は子供が大学時代(18 - 21歳)の年£17,459(約300万円)に次いで、就学前(1 - 4歳)年£14,505(約247万円)となっている。 日本の学童にあたるAfter School Clubも民間の運営なのでかなりの費用がかかります。
3. 日本のデータに現れてこないイギリスの「ホリデー費」。 これはイギリスの学校はスクールホリデー(休日)がやたらと多いためにかかってしまう必要経費です。 イギリスの公立小学校は年間授業日数が190日に対し、日本は240日。 例えば、我が家の場合、夫の有給休暇は年25日(5週間)なのに、子供の小学校は12週間も休みなので、どうすればいいんでしょうか? ホリデーキャンプに入れたり親戚の家に送ったりいろいろ苦労するようです。
4. イギリスをイギリスたらしめていると言われる制度NHS(National Health Service、国営医療制度)で出産含めて医療費は無料。 薬代も16歳以下と妊婦・出産後1年間は無料。
日本にせよイギリスにせよ「子供ひとりで家が一軒建つ」と言われる訳ですが、さらにクラクラする事実が上記費用の中に入っていない気がするので指摘しておきましょう。
1. 住宅費。 当然、夫婦2人で住む家と4人家族で住む家では違うはず。 住宅の大きさもさることながら、子育てに適した治安が良くて緑が多い地域は不動産相場も高い。 ロンドンでは小学校の数が足りなく、学校間の格差が激しいので良い小学校の近くの物件は周辺の同等物件より10 - 20%高い(→『郵便番号で差別される社会』)。
2. 車。 「子供がいなければそもそも車いらないよね」という家も多いはず、子供がいると車種も変わるし。
こういう現実を突き付けられるたびに「あの笑顔見てよ、プライスレス!」と某クレジットカード会社のCMフレーズを繰り返す私と夫です。
(2014年9月8日「世界級ライフスタイルのつくり方」より転載)