ワールドカップを『お寺』でパブリックビューイング!~山形県米沢市・西蓮寺の試み

ワールドカップ・ブラジル大会のパブリックビューイングが、山形県米沢市にある『西蓮寺』の本堂で開催される。4年前の南アフリカ大会に続き、今回で2度目になる。『今年も地域の皆さんや、サッカーを愛する仲間たちとともに、遠くブラジルの地に声援を届けたいと思います!』。そう語るのは、副住職の伊藤竜信さん。サッカーに理解があり、Jリーグに贔屓チームも持っている。

◆これこそがパブリックビューイング

ワールドカップ・ブラジル大会のパブリックビューイングが、山形県米沢市にある『西蓮寺』の本堂で開催される。4年前の南アフリカ大会に続き、今回で2度目になる。

『今年も地域の皆さんや、サッカーを愛する仲間たちとともに、遠くブラジルの地に声援を届けたいと思います!』。そう語るのは、副住職の伊藤竜信さん。サッカーに理解があり、Jリーグに贔屓チームも持っている。

ここに集まるのは檀家の皆さんだけではない。地域の子供たちや、あまりサッカーはわからないけれど、とにかく日本を応援したいという、おじいちゃん、おばあちゃんもいる。まさに“パブリック”ビューイングなのである。

背後からは「阿弥陀様」の後押しもある。日本代表にとってこれほどまでに心強い援軍はない。

どこか、映画『ニューシネマパラダイス』に出てくる、教会で行われる映画上映会を髣髴とさせる。笑顔があふれ、語らい、歓喜に沸く。場合によっては、全員でガッカリするかもしれない。悔しくて悲しくて、慰め合うかもしれない。もしかすると、お寺の本来の姿はそこにあるのかもしれない。

本堂中央に設置されるスクリーン。言うまでもないが、普段は法事などが行われる

◆持ち寄り、手作りのPV

パブリックビューイングの実施に当たっては、放映権を管理するFIFAの代理店(パブリックビューイング事務局)への申し込みがある。開催の承諾が下りるまでに、およそ3週間あまりかかった。

西蓮寺の場合は「非商業イベント」なので、本堂に何人集まったとしても、放映するのに50,000円の費用がかかる。この金額を高いとみるか、妥当な金額とみるかは、意見の分かれるところだ。非商業イベントの場合は入場料無料が条件。スクリーンやモニター、音響の用意は自分たちで行う。

西蓮寺では、プロジェクターや音響はお寺の備品を使用、スクリーンに使う白幕は懇意の葬儀社さんから借り、お腹が空いてしまったときのためにと、近所の商店街に呼びかけ、境内で屋台を開いてもらう。

また地元のJチーム、モンテディオ山形のサポーターにも協力を依頼、開催告知のお手伝いや、会場のボランティアスタッフなどにあたってもらっている。まさに、持ち寄りで手作りのパブリックビューイングなのだ。

★パブリックビューイングを実施するにあたっての手順、方法については、ここに詳しい。

◆全国のお寺が立ち上がれば…

近年では、国内でも徐々にパブリックビューイングが行われるようになってきた。有料でパーティー形式になっているものや、スタジアムや映画館で巨大スクリーンを見る人、流行りのクラブを貸切で、というのもある。それでも、諸外国のように何十万人もが集まる「町中でのパブリックビューイング」はまだない。

DJポリスで話題になった『渋谷のスクランブル交差点』だが、禁止するよりはむしろ、あそこをパブリックビューイング会場にしてしまえばよいのではないか、と思っている。四方八方に巨大ビジョンがあって、これほどまでに適した場所はない。パブリックビューイングの次なる未来だ。

話をお寺に戻そう。総務省統計局のデータに依れば、全国で仏教系だけでも75,924のお寺があるらしい。天井が高く風通しのよい本堂は、少し蒸し暑い6月半ばには快適だ。雨の心配もいらないし、家からも近い。どうやら、ここにもまたパブリックビューイングの未来が隠されているような気がする。

『サッカーのルーツは街の「お祭り」。お祭りを開くのに寺社仏閣の存在は欠かせず、そしてお祭りはみんなで楽しむものです。お寺で見たこの風景が、参加する方々にとって忘れられないものになってくれたらとても嬉しい。仏さまも、ご先祖様も、みんな一緒にサッカーの祝祭を楽しみましょう!』

副住職の伊藤竜信さんは目を輝かせる。ワールドカップ本番は、もう間近に迫っている。

◆西蓮寺のご紹介

ここで少し『西蓮寺』についてご紹介したい。最上川の西、米沢駅から10数分ほど歩いたところに西蓮寺(米沢市中央五丁目)はある。歴史は深く、天正17(1589)年、上杉家の家臣・柿崎和泉守景家の子孫が越後(新潟)に開山、その後上杉家の国替えとともに米沢に移り、現在に至る。

緑豊かな境内には、シーボルトの弟子「吉雄忠次郎」や、日本のコペルニクスといわれた「穴山要斎」の墓があり、また付近には弓の達人、「那須与市の供養塔」などがある。お近くに来られたさいは、立ち寄ってみてはいかがだろうか。

「お寺でワールドカップ パブリックビューイング2014」公式サイト

http://www7b.biglobe.ne.jp/~oteradepv/

(参考ホームページ)

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◆『フットボールde国歌大合唱!』(東邦出版)いとうやまね著

スタジアム中にこだまする国歌斉唱。ネイマールが思わず涙するブラジル国歌、伊達男たちが情熱的に歌い上げるイタリア国歌、歌詞がないのに客席はハミングのスペイン国歌……。国歌にまつわる歴史やエピソードを満載。ワールドカップの必読書。

◆「サッカー×国歌」

フットボールde国歌大合唱!』内で紹介してる各国国歌を、本を読みながら映像&音楽付きで楽しめる連動サイト。

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◆いとうやまね

ライターユニット(いとうみほ+山根誠司)。著書には、『フットボールde国歌大合唱!』『サッカー誰かに話したいちょっといい話』(東邦出版)、『プロフットボーラーの家族の肖像』(カンゼン)、『蹴りたい言葉~サッカーファンに捧げる101人の名言』(電波実験社)、他がある。サッカー専門誌、フィギュアスケート専門誌のコラムニストとして、またサッカー専門TV 番組、海外サッカー実況中継のリサーチャーとしても活動。スポーツ以外の執筆も多数。

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