2013年11月、WWFロシアと「ヒョウの森国立公園」当局は、極東ロシアの森で、調査用の自動撮影カメラを用い、アムールヒョウ母子の映像撮影に成功しました。この映像は、いまだ生態に謎の多いアムールヒョウの研究、そして保護活動に、大きく貢献する貴重な情報として注目を集めました。
そして2013年12月から翌年4月にかけて、WWFロシアと公園当局は、この親子の姿を再び捉えることに成功。その映像を公開しました。前回2013年の映像を交えながら、その最新の映像をお届けします。
アムールヒョウの生態解明へ動き始めた第一歩
極東ロシアの森に生息するヒョウの亜種アムールヒョウは、密猟や森林伐採により、個体数が50頭前後に減少し、絶滅の危機に瀕しています。
しかし、その生態については未知の部分が多く、子育ての方法などは謎に包まれたままでした。
そうした中、2013年11月の調査で、アムールヒョウの母親と仔ヒョウ3頭の姿を自動撮影カメラで捉えることに成功しました。
2013年春にオスヒョウと巡り合ったこの母親は、3か月の妊娠期間を経て夏に出産。
まだ目の見えない小さな仔ヒョウたちを安全なほら穴で1~2カ月の間育てた後、仔ヒョウと共にカメラの前に姿を現したのです。
自動撮影カメラの映像には、母親がさまざまな天敵から3頭の子どもたちを守りながら狩りの方法を教える様子が写っていました。
それは、世界でも最も希少なネコ科動物の野生での子育ての様子の一端を解き明かすものでした。
2度目の撮影に成功!アムールヒョウの親子は・・
ところが、2013年の秋の終わり、アムールヒョウの親子はカメラを仕掛けた場所から突然いなくなってしまいました。
その時、一番小さくて弱い末っ子が前足を怪我していましたが、その怪我の程度は不明のまま。
しかも、やってくる極東ロシアの冬は、森に暮らす全ての生きものにとって、最も過酷な季節です。3頭の仔ヒョウを育てる母親にとっては、なおさらです。
この時期のアムールヒョウの獲物は、ニホンジカやノロジカといった、雪深い原野でも行動できる、長い脚を持つ大型の草食動物に限られます。
普段なら見つけやすく、簡単に捕まえることができるアナグマやタヌキは、冬の間、深い巣穴に潜り込み、身を隠しているためです。
しかも、ニホンジカやノロジカは耳が良く足も速いため、少しでも肉食動物の気配を感じるとすぐに逃げてしまいます。
厳しい季節を、ヒョウの親子は乗り切ったのか。そうした懸念が持たれ続けていた中、調査チームは2013年12月から数カ月間にわたって、再びこのアムールヒョウの姿を映像に収めることに成功しました。
さらなる保護活動に向けて
前回同様、今回の映像もアムールヒョウの生態について、専門家も知らなかった新しい事実を教えてくれました。WWFロシア・アムール支部の広報室長ヴァシリー・ソルキンは、次のように述べています。
「現在、ロシア政府はWWFと協力して、人工飼育されたアムールヒョウを野生に返すため森へ再導入する準備を進めていますが、今回の映像は、その準備に携わる専門家にとっても参考となるものです」
こうした映像を通して、さまざまな国の人々がアムールヒョウに関心を寄せることも、その保護活動にとって、大きな力となります。なぜなら、アムールヒョウの個体数減少には、ロシアだけでなく日本をはじめとする多くの国の消費者が間接的に関わっているからです。
極東ロシアの森では、違法伐採や持続可能でない商業伐採が続いていますが、そうした木材は建材や家具に加工されて、日本にも輸出されている可能性があります。私たち日本の消費者が、そうした商品を購入せず、持続可能な方法で生産された木材(FSC認証材等)を選ぶことは、ヒョウの棲む森を守ることにつながります。
WWFでは、今後もアムールヒョウの調査・保護活動を継続すると同時に、持続可能な方法で生産された木材の購入を引き続き国内で呼びかけていきます。
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