先週(9月28日)、オバマ米大統領が主宰したリーダーズ・サミットを受け、安全保障理事会はこのたび、テロ対策委員会とその事務局(CTED)による外国人テロ戦闘員に関する新たな報告書を採択しました。報告書は、外国人テロ戦闘員が重大な脅威となり、しかもこの脅威が増大していることを強調しています。イラクおよびレバントのイスラム国(ISIL)などのテロ集団は、素早く臨機応変に行動します。この脅威に効果的に取り組むためには、国連とその加盟国も迅速かつ円滑な対策を講じる必要があります。
加盟国とその他の幅広い主体は昨年、数多くの強力な対策を確立しました。各国はすでに、国境警備を強化し、外国人テロ戦闘員の疑いがある者の渡航を阻止しています。パスポートを没収したり、通過ビザの取得を義務づけたり、国際刑事警察機構(INTERPOL)のスクリーニングを活用し、潜在的な外国人テロ戦闘員を突き止めたりしている国もあります。民間企業も、外国人戦闘員のプロパガンダや募集の阻止に大きく貢献しています。例えばYouTubeは、過去2年間に1,400万本を超える動画を削除しているほか、Facebookは1週間で100万件に上るユーザー違反の通知を受け、これに対応しています。ほとんどの国々は、オンラインでのテロ行為の扇動に対処するため、ウェブサイトやソーシャルメディアを監視する何らかの能力を備えています。中には、実行犯を特定できるよう、プロバイダーにデータの保存を要請する法律を採択している国もあります。
しかし、こうした対策にもかかわらず、加盟国と国際社会は、テロリストとの闘いで後手に回っています。テロ集団に加わったり、紛争地帯に渡航したりしようとする者は、今でもテロリストの募集者に直接、匿名で簡単に接触することができます。多くの西欧諸国は依然として、外国人テロ戦闘員の出身国、通過国となっています。現在、イラクとシリアには欧州諸国のパスポート保持者が数千人いるものと見られていますが、このことは明らかに、数カ国の国家安全保障にとって重大な脅威となっています。では、他にどのような対策が必要なのでしょうか。
現時点でいわゆる「事前旅客情報(API)」システムを導入しているのは51カ国と、国連全加盟国の約4分の1にすぎません。このシステムは、国境と航空の安全を強化し、各国が潜在的な外国人テロ戦闘員の発着を発見できるようにするものです。しかし、システムを導入している国々の中で、実際にこれを利用しているのは半数にすぎないという現実が、さらに事態を悪化させています。国際協力は柔軟性を欠いていますが、こうした事情からも、国際社会は既存の安全保障理事会決議をよりよく活用する必要があります。国連憲章第7章に基づき採択され、すべての加盟国に対して拘束力を有する2001年の決議1373、2013年の決議2129、そして昨年2014年の外国人テロ戦闘員に関する決議2178はいずれも、私たちが必要とする手段を提供するものです。
100カ国以上から約3万人の外国人テロ戦闘員が生まれている中で、テロリズムはグローバルな対応を要するグローバルな脅威となっています。純粋に国内的なアプローチだけでこれらの課題を解決しようとしても、決して効果は上がりません。私たちは直ちに力を合わせ、包括的に、そして柔軟かつ迅速に、取り組みの強化と予防能力の向上を図る必要があるのです。
ジャン=ポール・ラボルド氏は、国連事務次長補 兼 テロ対策委員会事務局(CTED)事務局長。
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