今回は、大胆な過疎化対策の事例を紹介します。
富山県氷見市(県の西北、能登半島の東側の付け根に位置する、漁業が盛んな市:人口5万2千人)の、山間部にある赤毛集落では、毎年、クロスカントリー大会を開催しています。地域活性化のために、地元の赤毛青壮年団が主催しているもので、今年で21回目を迎えました。
今年の大会は、去る10月20日に行われたのですが、目玉商品がありました。
「宅地」です。
地区内の100坪(約330平方メートル)を、2名様にプレゼント!
事前に地区への移住希望者を募り、応募者には移住希望用紙を送付。大会当日、抽選箱に入れてから競技に挑んでもらい、閉会式の際に抽選して、2名を選ぶ計画でした。
結果的には、残念ながら希望者がいなかったため、実現しなかったそうです。
地区への定住者の獲得を目指して、過去にも「一戸建て住宅」や「畑地10坪の耕作権」の5年間無償貸与を賞品にしたことがありましたが、いずれも本格的な定住には至っていないとのこと。
■土地だけじゃ足りないんでしょうか
100坪もの土地を無料でもらえるというのは、かなりのインパクトがあります。思わず応募してしまう人がいてもおかしくなさそうです。
応募する人はどんな人でしょうか。赤毛での暮らしに魅力を感じている人、赤毛で働きたい人、そこに住む人たちのことが好きな人、近隣に職場があって家を建てたいと考えている人、赤毛で子育てしたい人・・?その人たちはどこにいて、大会の情報はその人たちの元に届いていたでしょうか。
既に赤毛のことをよく知っている人に来てもらいたかったのでしょうか。それとも全国に広く呼びかけたかったのか。そうだとしたら、赤毛に関する情報はどのくらい知られていたでしょうか。そもそも住みたくなるような赤毛の魅力って、一言でいうと何でしょう・・?
考えていくと、できることはまだありそうです。
■地元の力
「クロスカントリー in 赤毛」の今年の参加者は70名だったそうです。市内の小中学生の参加も多く、地域行事としてはとても有意義なものです。
大会は、地元の人たちの手作りで運営されています。ゴールした後には、お寺で、野菜たっぷりの豚汁や炊き立てのご飯が盛大に振る舞われます。お手製の漬け物やふかふかのサツマイモも好評。講演会や演し物があったり、お楽しみ抽選会や、地元の農産物の格安販売など、アットホームで心のこもったもてなしの虜になってしまう参加者も。「来年もまた来て下さいね」というおばあちゃんの笑顔は、リピーターを獲得しています。
・・何だかこの大会、移住希望者養成機関になりそうな可能性を感じませんか?
赤毛のファンを増やしたり、参加者と地元の人たちとのつながりを作ったり、クロスカントリー大会以外での関わりのきっかけにもできます。リピーターの人たちのアイディアや力を借りられたら、さらに広がるかもしれません。一方で、年に1回遊びに行く場所とそこに住む場所の違いも考えてみる必要があります。
地元の思いと力がつまったこの大会、もう一歩先の目標が定まれば、きっと次の展開が動き出すと思います。行ったこともないのに、勝手にこんなことを考えてしまう人間がいるくらいですから。