2015年10月から2016年5月までの一億総活躍国民会議の民間議員としての役目もやっと終りました。
ニッポン一億総活躍プランだけでなく政府は2日の閣議で、四つの計画を決定しています。
このほか、閣議決定されたのは、経済政策の基本的な方向性や具体策を示す「骨太の方針」や「規制改革実施計画」、「日本再興戦略」(成長戦略)。
4つの計画の特徴は何? 例えば社会保障はどの計画、と棲み分けはないのか? よく聞かれますが、わたしも「非常に複雑に絡み合っている」としか言えません。
4本のうちニッポン一億総総括プランの特色は何かと言われたら、「働き方改革について強く踏みこんだこと」「保育・介護」などに重点をおいたこと、若者についての記載も多く、そして10年間の工程表がついていることです。
「働き方改革」を柱にすえると安倍総理が強く発言をしたのは、今年の1月からです。
働き方改革とは「同一労働同一賃金」「定年延長」「長時間労働是正」です。
このうち「長時間労働是正」については、ワーク・ライフバランス社社長の小室淑恵さん、ファザーリングジャパンなどと協力してロビイイングを行ってきました。
この問題に10年取り組んでいる産業競争力会議のメンバー、小室淑恵さんによれば「昨年の日本再興戦略には、総論に半ページ割いてもらうのがやっとだった「働き方改革」について、今回、なんと!!P24~P25に1ページ以上割いているということで、政府の「働き方改革」への取り組みが本気度を増していることがわかります。
ほかの会議のプランにも「長時間労働是正」については書き込んでありますが、一億総活躍国民会議のプランにどのように表現されるかで、ほかの会議のプランも論調が変わるという話もありました。
最終的に長時間労働是正の部分には
「三六協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を行う。」と記載されました。
また検討開始は工程表によると2016年となっています。
「政治は言葉」とロビイイングの先輩が教えてくれたのですが、言葉や、順序、分量などが重要なのは、このプランに沿って「予算」の争奪が始まるからです。
この半年で今まで見えてこなかった政策決定の裏側というものを勉強させていただきました。
個人的にやったとおもったのは、長時間労働是正は「女性のキャリアを阻む」という点だけでなく「男性の家庭参画をも阻む」という一言を入れてもらったこと。
それから最初の3ページのところに(2)今後の取組の基本的考え方(一億総活躍社会の意義) という部分、ここに「男女の役割分担の壁」を取り除くべきものとして入れています。
小さな一言ですが、「役割分担」を取り除くと国が明言するわけですから、わたしの中では一番大きな事でした。
「就職の際に既卒者が冷遇される「壁」、再チャレンジを阻む「壁」、子育てや介護との両立という「壁」、定年退職・年齢の「壁」、男女の役割分担の「壁」、やりたいと思うことがあっても、様々な「壁」が立ちはだかる現実がある。こうした「壁」を一つ一つ取り除く。日本を成長できる国へと変えていくため、ニッポン一億総活躍プランで定めたロードマップを一歩一歩、着実に前進させていく。 」
女性ばかりが活躍せよ、家事も育児もせよと言われていると、今の「女性活躍」をとらえている人が多いので、「男性の家庭参画」を促し、「男女の役割分担」を突破しなくてはいけない壁のひとつとして記載することに意味があると思ったのです。
また最後の国民会議で「給付型奨学金」について「創設の方向へ」とお願いしたのですが、こちらも多くの皆様の署名などの後押しがあり、最終的には「給付型奨学金については、世代内の公平性や財源などの課題を踏まえ創設に向けて検討を進め」とさらに具体的になりました。最初は「図る」という弱い表現だったのです。このひとことを変更するために、実は多くの人の力が動いているのです。
みなさまには、今後、このようなプランがどのように具体化していくのかを、しっかり見据えていただきたいと思います。
もっとできることがあるとは思いながら、駆け抜けた8ヶ月でした。ご協力、恊働してくださったみなさま、応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました。
長時間労働については、6月17日にまた緊急フォーラムを行い、さらに「36協定の時間外労働規定の再検討」を加速し、欧州なみの「インターバル規制」などの法改正に向けて、進んでいきたいと思います。
以下がニッポン一億総活躍プランの「長時間労働」についての部分です。
(長時間労働の是正)
長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の
原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因となっ
ている。戦後の高度経済成長期以来浸透してきた「睡眠時間が少ないことを
自慢し、超多忙なことが生産的だ」といった価値観が、この3年間で変わり
始めている。長時間労働の是正は、労働の質を高めることにより、多様なラ
イフスタイルを可能にし、ひいては生産性の向上につながる。今こそ、長時
間労働の是正に向けて背中を押していくことが重要である。
週 49 時間以上働いている労働者の割合は、欧州諸国では1割であるが、
我が国では2割となっている。このため、法規制の執行を強化する。長時間
労働の背景として、親事業者の下請代金法 ・独占禁止法 違反が疑われる場
合に、中小企業庁や公正取引委員会に通報する制度を構築し、下請などの取
引条件にも踏み込んで長時間労働を是正する仕組みを構築する。さらに、労
働基準法 については、労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、
いわゆる 36(サブロク)協定における時間外労働規制の在り方について、再
検討を開始する。時間外労働時間について、欧州諸国に 遜色のない水準を
目指す。あわせて、テレワークを推進するとともに、若者の長時間労働の是
正を目指し、女性活躍推進法 、次世代育成支援対策推進法 等の見直しを進
める。