どうしたら「イントレプレナー」になれるのか?

イントレプレナーが出て来ないと、企業において次の収益源となりうるようなイノベーションなどは生まれない。

■ ベンチャーの登竜門モーニングピッチ

今、久しぶりのベンチャーブームである。そのムーブメントの火付け役となったのが「モーニングピッチ」だ。

毎週木曜日の早朝7-9時にベンチャー経営者たちが、企業の事業開発担当者やメディア関係者の前で事業のプレゼンテーションを行ない、それに対して質疑応答が行なわれる。2012年1月の開始からすでに三百数十社が登壇している。この場を野村證券という業界最大の証券会社が支援するということにより、ベンチャーの信用補完をしている。今では、テレビ、新聞、ネットで様々に取り上げられて注目され、老舗企業や経済産業省の官僚も参加するようになり、国を挙げての取り組みとなっている。また地方開催や、特定の企業での出前モーニングピッチも盛んに行なわれるようになっている。

その中から、IPOするベンチャーも出て来るようになり、野村證券も主幹事を獲得することにより会社の事業への貢献も進んでいる。

しかし、野村證券だからベンチャー支援をした、のではない。もとより、証券会社はIPOの主幹事や、上場企業の資金調達を行なうことで収益を上げるのであり、アーリーステージのベンチャーの支援を行なうということに関しては、当然のことながら当初は社内でさまざまな抵抗があった。

ベンチャーにとって過酷な環境をどうにか改善したいと、別の会社に所属する3人が自発的に集まり、自律的に運営を行ったことが成功の鍵であった。社を越えて、共通の概念を共有し、考えを持ち寄り、社内のヒエラルキーと無縁だったことが、運営に活かされた。アベノミクスでいくら大企業の業績が回復しても、ベンチャーが次々と興って来なければ日本経済の真の復活はない、という「大義」を携え、企業を跨がって立ち上がった若者たち。当時27歳の塩見氏、トーマツベンチャーサポート斎藤氏29歳、スカイランドベンチャーズ木下氏26歳の3人だった。

■ どのようにして会社を巻き込んで行ったのか?

ビジネスは価値の対価として収益を上げることが原則だ。そのため、当然のことながら、企業内で評価される最も重要なものさしは、収益への貢献となる。ここを勘違いしている人があまりに多い。自分のやりたいことをだけをしていては会社から評価される筈はないのだ。

しかし、新しい取り組みはすぐに収益に繋がることは難しいし、したがって応援者を集めたり、社内の公式なプロジェクトにしたりすることは容易ではない。

では、塩見氏はどのようにして企業の中で協力を得たのか?

まず、使命に共感してもらった相手に業務時間やリソースの一部を無償で「投資」してもらったのだ。相手の負担は「このくらいであればそれほどダメージを受けない」という程度が丁度良い。多くを求めず、リスクは自分で抱える。小さな「イエス」を積み重ねて行き、急がば回れの道を辿る。

そして、重要なのは、上司の許可を取ることだ。自分のやろうとしていることを説明し、時間を使ってよい、という許可をもらっておく。上司は、止めはしないけど協力もしない、という状態を作っておくことが、上手く行った時の展開に効いてくるのだ。もちろん、リスクは自分でとる覚悟が必要だ。

■ 出る杭、ということの本質

塩見氏はこのように言う。

「経営側に伝わるように堂々と戦い、価値を生み出すという行為を続けていれば、最初は叩かれていてもそのうち認められ叩かれなくなる」

「叩かれるのは、このビジネスモデルが、<実現可能性が低いから、次のチャンスを待ちなさい>か、<実現可能制は低くないが、工夫が必要なので出直して来なさい>か、のどちらかのメッセージだと捉えるということだ。

すべては、将来収益に寄与する可能性のある提案を頭ごなしに否定する経営者がいる筈がないという、企業経営の原則を信じていることが根底にある。

「自分だけが出るのではなく、周りの杭も自分に揃うように出してあげれば打たれません」

イントレプレナーが出て来ないと、企業において次の収益源となりうるようなイノベーションなどは生まれない。

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