日本シリーズではあと一歩のところで日本ハムファイターズに軍配が上がりましたが、広島カープの25年ぶりのリーグ優勝は、多くの人たちの記憶に深く刻まれているはずです。
個人的に優勝の要因だと感じているのが、選手たちの広島愛。黒田選手にしろ、新井選手にしろ、他球団から広島に戻ってきた選手たちの活躍なしでは、優勝は成し得なかったでしょう。近頃、私は仕事で広島を訪れる機会が増えているのですが、地元の人たちが持つ「広島発で何かを成し遂げる」という底力は、企業活動にも当てはまるように思えます。
■流行に左右されず、独自路線を突き進む
広島に本社をかまえる企業の代表格と言えば、自動車メーカーの『マツダ』。広島県内に多くの生産拠点と取引先を擁し、地域経済に大きな影響を与えています。私が運営しているファッションブランド『ファクトリエ』とは業界が違いますが、欧米で発信された流行に左右されるのは、ファッションも自動車も同じ。欧米絶対主義ではなく、独自路線を突き進んでいるという点において、僭越ながら非常に共感を覚えています。
■かっこよさを追求したコンセプトカーで不況を跳ね飛ばす
リーマンショックで売上が落ち込んだ時期、『マツダ』は「魂動(KODO)」というデザインテーマを打ち出しました。ネーミングの由来は、クリエイターとしての意志を表す「魂」と、マツダのDNAを表す「動」。日本のブランドである以上、デザインテーマも日本語での表現にこだわったそうです。
『マツダ』は、「魂動(KODO)」のコンセプトカーを次々と発表します。「靭(SHINARI)」や「雄(TAKERI)」に代表される新型車は国内外から高い評価を集め、2015年にはオープンスポーツカー「ロードスター」で「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。業績は順調に回復し、2016年3月期の販売台数は153万4千台と、過去最高を記録しました。
■マーケティングアウトではなく、プロダクトイン
「魂動(KODO)」のコンセプトカーは、マーケティングアウトのプロダクトではありません。マーケットをリサーチした上で製作を行うのではなく、とにかくかっこいいものをつくって独自の存在感を放つ。そんなプロダクトインの考え方がベースにあり、マーケットシェアは全体の3%でかまわないというスタンスでものづくりに取り組んでいます。
『マツダ』に優秀なデザイナーが揃っているのも、プロダクトインの考え方があるからこそ。工場の職人と一体となってフルにクリエイティビティを発揮出来る環境は、生来のデザイナーにとってはともすれば報酬以上に魅力的に映るのではないでしょうか。
■ものづくりには「気合・根性・執念」が欠かせない
デザイナーや職人に限らず、ITや機械に代替出来ない職業に携わる人たちを、『マツダ』は全て価値創造の担い手として捉えています。
『マツダ』の方と話していて感じるのは、『マツダ』の方たちが持つ「気合・根性・執念」。こういった根源的な要素がものづくりには必要なのだと、改めて思い知らされています。広島カープが25年ぶりにリーグ優勝を果たしたのも、広島という土地が持つ不屈の底力が実を結んだと考えれば、必然的な結果なのかもしれません。