iPhone登場以来、生活者がインターネットにアクセスする時間は大幅に伸び、端末の勢力図が塗り変わった。主役はPCではなくスマートフォンとタブレットだ。訪問時間で見ると2013年は2010年の約2倍となった。増えた分は、まるごとスマートフォンとタブレットからのアクセスだ。
PCインターネットはeコマース事業者を産みだしたが、モバイルインターネットはネットとリアルの境目を取りさらった。目の前にある商品の評判はどうか、もっと安いお店はないか、利用できるクーポンはないか、スマホは買い物のプロフェッショナル・アドバイザーとなり、リアル小売業は破壊的なイノベーションにさらされている。
2014年1月に発表された最新米国コムスコア調査で、この様子を客観的に俯瞰してみよう。
このグラフを見るとすでに多くの生活者がスマホを使って多様な行動をしていることがわかる。性別比で見ると、男性はバーコード読み取り、製品機能や効用の確認、価格の比較、さらにはネットでの購入など、機能的に情報を活用する傾向があるのに対して、女性は写真の撮影や送信、友人との会話など交流をする傾向が強いのが特徴だ。
さらに店頭での購買決定要因に関しても見てみよう。
この図では、価格、クーポン、店舗特典といった「価格要因」をブルーで、レビューや推薦、ソーシャルサイトなどの「ソーシャル要因」をイエローで色分けしている。価格が最も重要な要因となっているのは当然だが、それに準ずるカタチでさまざまなソーシャル要因が購買決定に影響しているのが見て取れるだろう。
このような消費行動の変化の中で、リアル店舗を持つ小売業はどう対応すれば良いのだろうか。アサツーDKの国内調査レポート「スマートフォンと購買行動」(2013/5、概要はリンク先を参照) にそのヒントがあるので紹介したい。
この調査では、興味深い発見として、①商品ジャンルによっては店頭検索がお店での購買促進につながっていること、②家電製品などでも価格を調べてすぐネットで購買するのではなく、むしろ店員との価格交渉の材料として利用していることが明らかになった。それを商品ジャンル別にまとめたものが次の図だ。
店頭での検索行動は、商品ジャンル別に検索する内容、検索先、検索後の行動が異なっている。PCや家電、ファッション、アクセサリーでは価格が重視されている。興味深いのは、値引き可能な店舗が多いPCや家電では、検索結果を店員との交渉材料に使っていることだ。
それに対して、化粧品や日用品、衣料品、食品などでは商品の評判がチェックされ、安心することが店頭での購買に結びついていることがわかった。また飲食店では、入店前にクーポンの有無をチェックする利用者像が浮き彫りになった。
近年、店舗をあたかもショールームのように訪問し、実際にはネットで購入する「ショールーミング」という購買行動が増えており、リアル小売業を悩ませている。特に大手ネット専業者は、商品のバーコードを読み取ると自動的にネット価格と比較できるスマホアプリを提供しており、店頭でのスマホ利用がさらに加速することは間違いないだろう。
しかし、低価格サイトを発見したとしても、生活者は直ちにネットで購入行動をとるわけではない。わざわざ店頭に出向いた手間を考えると、彼らは納得できる取引ができれば店頭で購入するのだ。それは「他店が安く販売していた場合には店員にお知らせください」といった常套手段の応用形とも言える。
また、コマースサイトもさることながら、生活者は訪問した店舗のスマホサイトを訪れることが多いこともわかった。そこで彼らが望む安心やお得感を演出できれば、購買行動を後押しすることが可能となる。
リアルとネットのボーダーレスな競合は激化の一途をたどっている。生活者の購買心理を知り、かれらが求める行動や情報を提供できるか。スマホ時代のリアル小売業にとって、これは極めて大切な命題になってゆくはずだ。
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