(早朝の都庁から望む東京。北東方面には東京スカイツリーが見える)
■天空から早朝の首都を見下ろすと......
東京都は都庁展望室の開室時間を1月10日~2月9日までの期間限定で2時間30分前倒しし、朝7時からオープンする。都立施設の利用時間を拡大することで「時間市場」を開拓し、経済の活性化を狙うプロジェクトの一環。多様な消費を生む原動力になるか注目されている。
東京都はほかにも、大井ふ頭中央海浜公園第二球技場(サッカー)、城南島海浜公園スケボー広場などのオープン時間を1月31日まで朝7時に前倒し。すでに終了してしまったものの、日比谷公園や芝公園のテニスコート、東京都美術館などの夜間延長も実施していた。
都庁展望室の早朝オープン初日に早速、現地に足を運んでみると、6時50分の段階で8人が行列をつくって開室を待っていた。オープン後もぱらぱらと来場者がやってくる。初日としてはなかなかの盛況ぶりだ。
肝心の感想はどうだったのかというと、活発に動き出す前の首都を地上202メートルの天空から眺める体験は思いのほか爽快だった。スカイツリーや富士山などが朝焼けの下に望めるため、カメラで絶景を撮影する人もちらほらいた。
展望台を一周して一息ついても30分もあれば十分に満喫できるため、近隣に勤め先があれば出社前に立ち寄ることができるだろう。退勤後になかなか会えない忙しいカップルの早朝デートにも使えそうだ(実際にカップルで訪れている来場者もいた)。
日々のストレスを忘れ、清々しい気持ちで1日のはじまりを迎えることができた。
ちょっと残念なのは、展望室にあるカフェが前倒しの時間には営業していないことだ。しかし、地上に降りれば近くにレストランチェーンやカフェが営業している。少し値は張るがホテルのモーニングも楽しむことができる。
都立施設の時間延長は現在のところ試行的な取り組みだが、猪瀬前知事(辞任前)は昨年10月の会見で「今や9時-5時の世界に収まらない、さまざまなライフスタイルが存在する」「多様なライフスタイルを応援して新たな需要を創出することが、消費の拡大や日本経済の活性化につながる」「民間とも連動し、社会全体に時間市場の開発を波及させて、東京の魅力を高めていきたい」と意気込みを語っていた。
■都営バス24時間運行に賛否両論
東京都が進める「時間市場」開拓の取り組みで一番話題になったのは、昨年末から金曜日の深夜限定でスタートした都営バス(渋谷駅前~六本木駅前)の24時間運行だろう。
猪瀬前知事は、「バスや地下鉄が24時間動いている欧米の都市では、『仕事が終わった後、夜遅くまでオペラを見て、その後、レストランに行く』、それが日常の光景。日本のように終電を気にすることはない」と、ニューヨークやパリなどを引き合いに出して強調していた。
しかし、この施策には賛否両論があり、「終電を気にすることがないので残業が増える」「タクシー業界の売上げが下がるのでは」などの批判も出ていた。また、早朝や深夜の時間市場が、サービス業を中心に過重労働の温床になってしまうのではないかとの懸念もある。
もちろん、公共施設や民間サービスを利用できる時間が拡大すれば、すぐさま経済が活性化するわけではない。だが、最近では出社前の時間にレジャーを楽しむエクストリーム出社の取り組みが盛り上がりを見せるなど、消費者のニーズが多様化していることも確かなのだ。
2020年のオリンピック開催に向け、今後、東京がどのような都市に変貌を遂げていくのか。「時間市場」開拓についての議論も、一つのトピックスとなるだろう。
少なくとも都庁展望室の早朝オープンは、普段と違う非日常感を味わえるのでオススメだ。近隣に住む人は一度、仕事前に足を運んでみてはいかがだろうか。
(2014年1月10日「Yahoo!ニュース個人」から転載)