労使協約により、週の労働時間が37時間と決まっているデンマーク。日本の労働状況を考えると驚きですが、もっと短くてもいいのでは、というのが、全国紙Informationの言い分です。
さて、その理由は?
2015年も、早いものでひと月が過ぎました。
改めまして、今年もよろしくお願い致します。
今年こそは、情報発信をより頻繁にしようと思っています。
毎年そんなことを言っている気がしますが...。
デンマークに暮らし始めてから、今年で14年目に突入します。
様々な場面で、日本との違いに驚いたり、感心したり、呆れたり、ということの繰り返しでここまできましたが、中でも日本と違うなぁと思うことの一つは、人々の働き方です。
労働時間は、基本的には労使協約で決められており、通常、週の労働時間は月〜木が8時から16時、金曜日は8時から13時までという37時間労働で、職場によっては、早出や早退などのフレックス勤務や在宅勤務などのバリエーションも豊富です。残業、休日出勤はまずありません。
それでも、男女平等社会で男性女性共に仕事をしていますから、デンマークの家庭はなかなか忙しく、役割分担は必須です。我が家は、早く帰れる方が買い物、食事の支度をし、その間、息子の宿題を見たり、洗濯物の整理をする、というのが日常的な風景です。掃除などは週末にまとめてします。
私は個人事業主ですから、週37時間労働では済まない場合もあり、たまに、「いいなぁ、デンマークの職場勤めの人たちは...。」なんて思うこともしばしばです。
ところが、先週の全国紙Informationには、もっと労働時間が短いほうがいいのでは?というテーマの記事が載っていました。題して『労働時間を減らすべき5つの理由』。以下に内容を抜粋してご紹介します。
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1.より良い従業員
調査の結果によれば、世界の中で週の労働時間の短縮を試みたところは、以前の労働時間の時に比べて、従業員の生産性が高まったという結果が出ている。また同時に、労働時間の短縮により、従業員がより仕事に打ち込み、安定していて病欠も大幅に減った。コペンハーゲンでは昨年、保育者が年平均で3週間の病欠をしていると発表した。一部では「仕事のやる気がしない時にズル休みをした」と解釈されている。調査結果を信じるなら、週20〜30時間に労働時間を短縮すれば、この「ズル休み」もなくなるはず。そうなれば、ボスも喜び、従業員も幸せで、仕事以外のことをする時間も増やせる。
2.公害を減らせる
新たに獲得した自由時間は、仕事のために生きる、稼ぐために働く、消費するために稼ぐという考え方と格闘するいい機会となる。英国のシンクタンクNew Economics Foundationはまさに、働く時間が短い人は、消費も少なく、二酸化炭素の排出量も少ないと評価している。現代の人間の選択肢の多くは、利便性に基づいている。時間が十分にあるという人はまれなので、最も簡単で、スマートで、早いものを選ぶ。車に乗ったほうが早いし、出来合いのものを買って帰って食べた方が簡単だし、洗濯物だって洗濯機から乾燥機に放り込んだほうが手間がかからない。でも、突然一日の労働時間が6時間になったら、私たちはかなり多くの自由時間を持つことになり、それは二酸化炭素の排出量にも影響を与えるだろうと前述のシンクタンクは評価している。自由に使える時間がもっと増えれば、私たちは「消費祭り」をキャンセルするだろう、というのがシンクタンクの予測だ。もっと時間があれば、より価値があり、より熟慮した選択を行うはずである。
3.より公平に
働き過ぎのため、多くの人がストレスを抱えている。そしてまた他の人達は、仕事に就けないことでストレスを感じている。莫大な金を稼ぐ人がいる一方で、失業保険や生活保護で暮らす人もいる。もし、社会全体が労働時間の短縮を行えば、仕事の再配分につながるだろう。最も多くの仕事を抱えている人たちが、最も少ない人たちにそれを与える。また、最も自由時間を多く持っている人たちが、最も少ない人たちにその時間を与える。第一に、より経済的に公平な社会につながるし、おそらく、より幸せな社会にもつながるのではないか。人生の破壊は労働市場の外でも起きているが、長期間働き過ぎの状態が続くと人間は壊れてしまうという事例は、同じくらいあると いくつかの研究が示している。もし、仕事の再配分をすれば、ストレス治療と抗うつ剤の使用料を減らすことができるのではないだろうか。
4.より平等に
男性は洗濯にかける時間が1日平均2分なのに対し、女性は20分である。また、女性が一日にキッチンでほぼ1時間の時間を費やすのに対し、男性は30分以下である。男性は女性より長い時間働いているにもかかわらず、女性よりはるかに多くの自由時間を得ている理由は、おそらく文化的、構造的なものが半々であろう。皆に労働時間の短縮が実現すれば、男女間の不均衡の是正されるのだはないだろうか。研究では、男性が労働時間を短縮すると、家事の分担率があがるという結果を示している。さらなる利点としては、労働時間の短縮が、現代の親が願っているワーク・ライフ・バランスを実現するための答えとなるということである。社会全体が週30時間労働になれば、祖父母を楽にし、両親が子供たちと過ごすより多くの時間を与えることになろう。もし、親がそれならマラソンに時間を割くよ、と言わない限りは。
5.民主主義の強化
確かに、デンマークは協会活動や選挙における投票率は上手くいっている。しかし、世界の他の地域では、例えば週に42時間働きながら、メトロ建設反対の会の役員になったりすることは難しい。前述のシンクタンクNew Economics Foundationは、社会での生産性の増加と、市民のボランティアへの参加の減少との関係性に注目している。イングランドの数字によれば、成長と労働に最も大きなフォーカスがあたっていた年は、投票率が下がっており、ひょっとすると、週の労働時間を減らすことは、私たちが抱える多くの不満のある部分を、実際のアクティブな取り組みにつなげることができるかもしれない。
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私も、デンマークの人は週37時間しか働かないのに、それよりもっと働いている日本より、社会は上手く回っているように思える。なぜだろう...と考えることがよくあります。その答えのヒントが、この記事の中にあるように思いますがいかがでしょう。ちなみにデンマークの前回の国政選挙の投票率は87.7%。これは、民主主義教育の賜物でもありますが、やはり、仕事以外のコト、モノ、ヒトに社会で触れ合う時間があるかどうかで、思考が変わってくるという部分も大きいのではないかと思っています。
また、日本では100円ショップやチェーン店、ファーストフード、ファーストファッション、コンビニが幅を利かせていますが、これも、時間がないために、あれこれ考えたり、吟味したり、コミュニケートしたりする必要のないモノやコトやサービスが求められていることを大いに反映していると感じます。かけがえのない時間と引き換えに、本当はいらない、過剰な便利さを享受して、結果、自分の本当の意思や思いとは違う暮らしや選択になっている...私も、日本に行くとついつい100円ショップやコンビニ、ファーストファッションを利用しますが、なんだか違う、という思いがつきまとうのです。
今年こそはきっちり休暇を取ろう!という目標でいきます。
疲弊しすぎないように。
まだまだ、新しい自分にも出会いたいですしね。
ではまた。
※写真は、2009年にコペンハーゲンで開催された第15回気候変動枠組条約締約国会議(COP15)のプレスルームの様子です。私はこの時、NHKの複数の番組のコーディネートをしました。
(2015年2月2日「aTree デンマーク ロラン島から」より転載)