就活を苦に自殺する若者がいるというニュースが、Web上を賑わせています。
今の仕事を苦にしたと思われる「人身事故」で、都内の電車は毎日の様に止まっています。「たかが仕事」というのは失礼に当たるかもしれませんが、それでも「たかが仕事」のために命を落とすなんてばかげています。
20世紀終盤の日本では「大企業に入って真面目に働いていれば人生安泰」という「神話」が成り立っており、多くの子供たちは、この「神話」を刷り込まれながら育ってきました。小学生が「将来の夢は公務員」なんてのたまうような教育です。
教育方針は親の責任なので否定はしませんが、この「神話」を刷り込む時、ここに乗れなかったときの絶望も同時に刷り込んでいることも忘れてはいけません。そして、マスコミは「神話」に乗れなかった人の悲惨な生き様を日々垂れ流しています。
21世紀になり、この「神話」が崩れてきました。大企業に入って人生安泰だった大人が次々と「リストラ」という名の下に、レールを外されています。「神話」への入り口も狭められており、「非正規雇用」というもう一つの雇用形態が現れました。
「神話」の世界に入れなかった人、「神話」の世界に命を削ってしがみつく人、「神話」の世界から振り落とされた人、それぞれの絶望は多くの自殺者と「閉塞感」という空気を生んでいます。
でも、その「神話」の外にも幸せな世界があるということを、もっと多くの人が知ったらどうなるでしょう。自分でWebサイトを作ったり、屋台をひいてお金を稼いだり、海外でそこそこの仕事をして生活したり、世の中にはいろんな生き方があるのです。
私は「海外で働く」という点に注目し、好景気のアジアで、多くの日本人が挑戦できる「アジアグローカルジョブ」というタイプの働き方をみつけました。インドネシアやタイなどの日系企業で、日本語や日本のビジネス文化を武器に、現地の言葉やビジネス文化とすりあわせながら働くという働き方です。
インドネシアのジャカルタで働けば、20代の若者でも18〜20万円稼げます。新卒での就職は難しいですが、非正規雇用でも職歴が2、3年以上あれば採ってくれる会社はあります。(もちろん、経験や本人の資質、そして「縁」によって結果は変わってきますが)
少し前まで、海外就職とは「神話」の外の物語として、とてつもないエリートか、落伍者が選ぶ道だと思われてきました。しかし、私が現地で会った、今海外で働いている人たちは、どこにでもいる普通の日本人です。
新しいものが出てきた時、自分が経験したことのない事象に遭遇した時、多くの人は恐れと混乱により、リスクや問題点を過剰に語りたがります。しかし、そのような感情を取り払い、メリットとリスクを冷静に伝えることは非常に大切だと思い、私は本や新聞、雑誌の取材、Web媒体への寄稿などを通して「海外就職」の実態について語っています。
この海外就職を「希望のフロンティア」と見るか「不毛の地」と見るかは見る人次第です。ただ、日本国内にある「神話」から外れ、絶望を感じている人には、ぜひこの選択肢を知ってほしいと思います。生きていくための選択肢は、思ったよりもたくさんあることに気付けば、絶望感は和らぐはずですから。