スウェーデンの若者の投票率が相変わらず高いです。というかさらに上がっています。

スウェーデンの若者は、社会に参加する機会が圧倒的に多い。例を挙げると...

若い層の選挙投票率が高いことで有名なスウェーデンですが、先日、昨年のスウェーデンの総選挙の若者の投票率の結果をまとめているレポートを発見しました。

該当箇所だけ要約すると以下のとおりです。

  •  2010年の総選挙の時と比べて全世代の投票率は1.2% 増加し85.8%に達した。
  • 昨年は、EU選挙とスウェーデン国内の総選挙のダブル選挙だった。
  • 曰く、今回がスウェーデンの投票者の半数以上が初めて投票した結果になったEU選挙であり、投票率は前回と比べて5.5%増えて51.1%に達した。
  • 今回のスウェーデン総選挙では若者の投票率の伸び率が最も高かった。
  • 前回の2010年の総選挙と比べて、30歳以下の若者の投票率は、2%上昇の81%という結果。
  • 外国の背景がある若者とそうじゃない若者を比べた場合、スウェーデン育ちの若者の投票率は2%増加したの対して、外国の背景がある若者の投票率の著しい増加はみられなかった。
  • 結果、この二つのグループの投票率の差が目立った。
  • EU選挙においては外国の背景をもつ若者の投票率は上昇したが、それでも最終的な投票率は39%に留まり、スウェーデン本国育ちの若者の投票率は54%であった。

ということです。

スウェーデン語ですが、興味がある方はこちらからダウンロードできます。

スウェーデンの若者の投票率はこのブログでも、何度も引用してきていましたが、これまでは若者の投票率はいつも2010年の投票結果ばかりを引用していました。全世代の投票結果はすぐ出ましたが、30歳以下のデータとなると、なかなか出てきませんでした。そういうわけでシェアです。

なぜ高いか

改めていう必要がないくらいこのブログで何度も論じてきましたが、やはりスウェーデンの若者は社会に関わる機会の多さに恵まれ、一人一人の社会的な影響力を発揮できるようにするため社会的制度が整っていることがあげられるでしょう。以下に具体例を列挙します。

圧倒的な機会の多さ

  • 投票行動に最も直接的に影響を与えているであろう活動に、学校における「模擬選挙(Skolval)」の存在が挙げられる。これは実際の総選挙にあわせて毎回開催される。中・高生向けなので選挙権はないために、実際の選挙の投票数には数えられないが、ほぼ全国の学校で開催され集計結果が、実際の総選挙終了後に公表される。
  • この模擬選挙をする前には、高校・中学の社会科の授業で各政党の党員を演じてロールプレイのディベートを行ったり、実際にその地域の政治家を学校に招待して討論会を学校内で開いている。
  • さらに12歳から30歳の若者が所属できる政党青年部(社会民主党、穏健党、緑の党などそれぞれの政党ごとにある)が、学校に出向いて党員のリクルートを行ったり、政治について気軽に話せる機会をつくったりしている。
  • また、政治活動をしていない若者でも、スウェーデンの若者の半数以上が何かしらの団体活動をしているという統計がありスポーツ、趣味、宗教、文化、野外活動、政治、など様々な若者団体が活動している。
  • また、若者向けの余暇活動施設も充実しており、スウェーデンの290の自治体に1500施設ある。
  • このように、様々な若者が自分たちの身近な「社会」に所属し、その社会に参画していく。

参画の度合いの高さ

  • 団体活動の中で、民主主義的な価値観に基づいて民主的に運営することを学ぶ。その社会参画の度合いは、非常に高い。
  • 例えば、スウェーデンの高校の生徒会の連合である「スウェーデン学生自治会」は年間、日本円で約 3 億以上の予算を組むが、そのうち 88%は政府からの助成金である。この補助金で、事務所を借りて45人のフルタイムの職員を雇っているのだが、その職員の平均年齢は22歳でほとんどが高校の元生徒会長である。
  • また全国の若者団体を代表する圧力団体であるLSUの若者の代表らも、若干20歳である。スウェーデンの若者を代表してスウェーデン若者市民社会庁やEUの若者政策の会議へ出向いて、スウェーデンの若者の利益を代表して意見陳述をする。
  • 現在の国会議員の最年少の議員は穏健党青年部の22歳の若者である。

Igår hade vi besök av japanska ungdomsförbundet YEC - mycket givande! #mufjkpglan

MUF Jönköpings länさん(@mufjonkopinglan)が投稿した写真 -

  • (このInstagramの写真は、先日、静岡のユースワーク学生団体YECと視察に行った時の写真。ヨンショーピンという地方の穏健党青年部の様子。この中に20歳前後の政治家が3名いた)
  • 政党青年部には12歳から所属できる。ちなみに日本の自由民主党は「45歳以下」が所属できる
  • これまで、スウェーデンは史上最年少の18歳の国会議員を輩出している。(アントン・アベレなど)
  • 若者向けの余暇活動施設は、若者主導で設立されたものも多く、運営も基本的には施設に訪問する若者たちが運営会議を定期的に開き、余暇活動職員は事務的な作業と、若者らの運営の補助に徹する。

これらを支える社会制度

  • スウェーデン若者市民社会庁という省庁が、学校教育や福祉を司る省庁とは別で存在する。
  • その若者政策の目標のひとつは、若者の社会的影響力を高めること。
  • 1945年の時点でスウェーデンではすでに、大人社会側が若者にどのように影響を与えられるかという姿勢を止め、「若者を問題の対象として扱う」という方針を転換している。
  • 同庁はこの目標に従って、昨年、約30億円の助成金を106の子ども・若者団体に支出。この助成金を用いてオフィスを構え、人を雇うことができる。ただしこの助成金を受け取るには、条件としては16歳から29歳の若者がメンバーの6割を占めている必要がある。(このようにして若さを保っている)
  • また若者団体は、国際的なプロジェクトを立ち上げる際には、EUの若者政策部門にも助成金の申請をすることができる。
  • 選挙権、被選挙権年齢は地方でも国会でも18歳。(故に30歳以下の若手国会議員の割合は日本の10倍近く)
  • 最近では投票年齢を16歳に引き下げようと動きすらある。
  • 日本のように大学受験もなく、塾も部活もなく、学校による制約が少ないので余暇活動の一環として団体活動に時間を割くことができる。

とまあ、挙げだしたらキリがないのでこれくらいにしておきます。もちろん日本には日本の良さがあり、何もかもすべてスウェーデンのいいとこだけ直接輸入すればいいというわけではありません。大事なのは同じ民主主義を共有する国で、こういう国が実際にあるということであり、日本の現場の実践と政策を尊重しつつも、謙虚に学ぶ必要があるということです。

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