再稼働する前に

国会が閉会し、エネルギー問題に関して、あちこちで講演の依頼が増えてきました。7月20日(日)には、茨城県笠間市の笠間公民館大ホールで、常井洋治県議後援会と自由民主党岩間支部の共催で午後2時から、講演します。さて、規制委員会により九州電力川内原発の審査基準への適合が認められ、再稼働に向けて動き出したと報じられています。審査基準への適合審査は独立した規制委員会が判断すべきことですが、再稼働に至るまでには、まだまだやるべきことがあるはずです。

国会が閉会し、エネルギー問題に関して、あちこちで講演の依頼が増えてきました。

7月20日(日)には、茨城県笠間市の笠間公民館大ホールで、常井洋治県議後援会と自由民主党岩間支部の共催で午後2時から、講演します。

さて、規制委員会により九州電力川内原発の審査基準への適合が認められ、再稼働に向けて動き出したと報じられています。

審査基準への適合審査は独立した規制委員会が判断すべきことですが、再稼働に至るまでには、まだまだやるべきことがあるはずです。

たとえば使用済み核燃料の取り扱いなどは、本来、再稼働する前に国民的な合意を形成しておくべきものです。

再稼働すると、国内のほとんどの原発は、数年以内に使用済み核燃料プールが一杯になります。

電力会社は青森県六ケ所村の再処理施設で使用済み核燃料を再処理することで対応しようとしています。

しかし、高速増殖炉の開発が事実上不可能になった今、再処理する意味はありませんし、経済的な合理性もありません。

そもそも使用済み核燃料を再処理しても再利用できるのはプルトニウム1%とプルトニウムとともに回収される回収ウラン1%の合計2%にすぎません。

残りの回収ウランは不純物が多く、そのままでは再利用できません。

回収ウランを燃料にするためには再転換、濃縮、転換、成型加工のプロセスが必要ですが、日本にはそのための転換工場がないため、回収ウランから燃料を製造できません。

現状では、再処理で回収されたウランは貯蔵しておくしかないのです。

再処理して取り出した1%のプルトニウムと1%の回収ウランにしても、それからMOX燃料をつくるためには、新しい劣化ウランを混ぜて濃度の調整することが必要になります。

ですから経産省や電力会社が言うようなウランのリサイクルにはほとんどならないのです。

再処理して取り出したプルトニウムをウランと混ぜたMOX燃料を燃やすと、使用済みMOX燃料になります。しかし、その使用済みMOX燃料は、含まれているプルトニウムの濃度が高く、臨界の危険性などから、六ヶ所では再処理できません。

これを再処理しようとすれば、新たな再処理施設が必要になります。

使用済みMOX燃料は、使用済み核燃料と比べ発熱量が大きく、取り扱いも困難であり、必要となる貯蔵施設、処分施設の面積は大きくなります。

ウラン燃料を燃やしてできた使用済核燃料に含まれる核分裂性プルトニウムはプルトニウム全量のうち67%ですが、それが使用済みMOX燃料の場合は約60%にまで低下してしまうので、もし仮に使用済みMOX燃料を再処理したとしても、新しいプルトニウムを加えなければ燃料にすることはできません。

ですから核燃料サイクルといってもサイクルが続くわけではありません。

また、使用済み核燃料は人間が使づくことが困難なほど放射能が強く、取り扱いが困難ですが、再処理して取り出されるウラン・プルトニウム混合物はプルトニウムの取出しが容易であり、核不拡散に逆行します。

電力会社は、原発の立地自治体に対して、使用済み核燃料は原発敷地内のプールで一時的に冷却保管するが、一定の時間が来れば青森県の再処理工場に搬出するので、使用済み核燃料は立地自治体には残らないという約束をしてきました。

一方、再処理工場がある青森県は、使用済み核燃料は、再処理の原材料であるという位置づけで県内への搬入を認めてきました。

しかし、六ヶ所村の再処理工場は依然として問題だらけで稼働できないため、各地の原発から搬出された使用済み核燃料で、再処理工場にある3000トンの原材料プールはすでに満杯になっています。

もし、再処理をやらないことになると、使用済み核燃料はただの核のゴミになってしまいます。そうなると国、電力会社と青森県との約束で、電力会社は使用済み核燃料を青森県から持ち出さなくてはならなくなります。

しかし、使用済み核燃料を原発の立地自治体で保管するためにはこれまでの地元との合意の枠組みを作り直す必要があります。

この問題を避けるために、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設が急務でしたが、結局、青森県のむつ市にしか建設することができませんでした。

この状況では、青森県から使用済み核燃料を持ち出しても持っていくところがないのが現実です。

そのため、経産省と電力会社は、再処理の継続を明言し、使用済み核燃料の問題を先送りする道を選び続けてきました。

しかし、そのために莫大なコストを支払って再処理を進める、あるいはすすめるふりをしなければなりません。

使用済み核燃料の問題と向き合わないために核燃料サイクルを進めるという馬鹿なことはやめるべきではないでしょうか。

使用済み核燃料は、ドライキャスクと呼ばれる容器に入れて、空冷で保管するのが一番、安全です。

問題は、どこでそれを保管するかということです。

再稼働する前に、使用済み核燃料とどう向き合うか、国民を巻き込んでしっかり議論するべきです。

「使用済み核燃料の搬出先がないから核燃料サイクルを動かす」という本末転倒の論理は、もうやめなければなりません。

核のゴミには目をつぶり、やみくもに再稼働しようというのは無責任です。

(2014年7月19日「ごまめの歯ぎしり」より転載)

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