全ての国会議員の公的活動を集約、記録、公表する―「国会議員白書」の紹介

国会議員白書は、議員の国会での活動をまとめたウェブサイトです。現在のところ、衆議院議員は2012年総選挙直前参議院議員は2013年通常選挙直前までに在籍した、戦後新憲法下の全衆院議員、全参院議員の活動履歴を記録しています。

参院選挙を機に国会議員白書を更新したので、その内容等について紹介したいと思います。

概要

国会議員白書は、議員の国会での活動をまとめたウェブサイトです。

現在のところ、衆議院議員は2012年総選挙直前参議院議員は2013年通常選挙直前までに在籍した、戦後新憲法下の全衆院議員全参院議員の活動履歴を記録しています。

活動履歴としては、選挙出馬履歴、本会議での発言、委員会での出席と発言、質問主意書について調査した結果を公表しています。

特長

国会議員白書は、以下のような特長を有する議員情報サイトです。

(1)活動記録が一覧化されて会議録等の実際の活動を示す文書にリンクされており、実際の活動を確認することができます。

(2)活動状況が数値化されて集約、整理されており、他の議員と比較することができます。

(3)こうした情報、データが議員ごとに時系列的に記録されており、各議員の活動や関心の変化を捉え、政治家としての「成長」を追うことができます。

発想

国会議員の活動状況について、われわれが把握することのできる既存の手段はいくつかありますが、それぞれ限界がありました。

(1)マス・メディアによる報道は、どうしても一部重要政治家に集中しがちです。また、政局報道が中心に来るため、議員本来の役割である政策に関する議論や決定に関する情報は不足しています。

(2)議員や政党、政界関係者による情報発信は、自らに都合のよい情報だけになり、断片的になりがちです。

(3)学者や評論家などが政治家の活動や生涯をまとめ、本などを出版することもありますが、だいぶ時間が過ぎた後に提供されるものです。それにこうした資料は、結果的に注目されることとなった一部の有名政治家に限られる傾向があります。

(4)衆参の事務局等の公的機関の働きにより、会議録などの情報がネットで入手しやすくなりました。しかし、それらは議員個別に集約されてはおらず、それぞれ別々に提供されたものであるため、特定の議員の活動について知るためには膨大な時間や労力が必要となります。

(5)ごく稀に議員の活動をまとめる企画がメディア等で行われます。しかし、膨大な労力がかかるため、それらは単発で行われ、継続的な活動とはなりません。つまり、ごく一部の期間について整理して提供するにとどまります。

こうした既存の営み、試みの限界に対して、本サイトは膨大な情報を網羅し、集約して提供することを試みています。

国会議員の活動に関する情報の穴を埋め、有権者が議員の活動について知る労力、コストを大幅に削減することが当サイトの目的です。

構成

当サイトは、議員個別のページを中心要素としつつ、議員の検索や比較を容易にするためのリストや特集ページで構成されています。

各議員のページは、トップページ、本会議発言のページ、委員会発言のページ、質問主意書のページに分かれています。トップページを見れば、議員の活動履歴を一覧でき、他3種のページでは外部の資料に飛んで確認することができます。

例:各党党首のトップページ

各議員は以下のリストから探すことができます。

左のリストからさらに選挙で時期を区切って議員を探すこともできます。衆参の最新期は45期(2009年以降在籍議員)、22期(2010年以降在籍議員)です。

また、議会活動は集計して統計で示しています。

各期に在籍していた議員については活動を示す統計を一覧で示し、並び替えを行ってランキングを示すことも可能です。衆参の最新の統計は45期衆議院議員活動統計(2009年以降在籍議員)、22期参議院議員活動統計(2010年以降在籍議員)です。

選挙の際には、特集ページとして選挙区別の議員経験者リストを作成して提供しています。

そのほか、都道府県議会議員選挙の一票の格差に関するデータも提供しています。

利用

当サイトをどのように利用するかは、利用者各自が自由に決めてください。リンクや紹介等、積極的に行っていただければと思います。

作者としては、利用者に国会議員の活動実態を知ってもらうこと、またデータを提供することで議員に「働く」誘因を与えることを主に意図しています。また、投票した議員のその後の活動状況をチェックしレビューしたり、訴えたいことがあった場合に適した議員を見つけたりするのにも有効でしょう。気に食わない議員を糾弾するために情報を検索するような場合にも役立つでしょう。

限界

本サイトには利用の際に注意すべき点がいくつかあります。作者はこれらを本サイトの欠点や短所だとは思っていないのですが、この手の企画に頻出する批判でもあるので、ここでいくつか紹介しておきます。

(1)国会の活動状況は、当議員の状況に依存します。健康状態が悪く入院していれば、当然委員会に出席できません。大臣など政府の役職に就任していたり、政党の幹部になっていたりすれば、やはり国会での活動は停滞します。

(2)日本の国会の慣行上、委員会での質問の機会は野党、特に小政党に多く与えられます。したがって、発言等のデータでは小さな政党の一部の議員が目立つことになります。逆に、与党議員はそのような機会は少ないため、データ上目立つことは難しいです。

(3)本サイトで公開されている情報は、国会での活動のすべてではありません。法案審議の段取りや会議の議事運営は理事同士の懇談や、会派、政党の幹部同士の意見交換など、公的に記録されにくい場面で決定されます。また、国会の会議録として記録・公開されているものでも、審査会、公聴会などについては、作業が煩雑になる一方で得られるものが少ないため、現状では扱っていません。

(4)このサイトでは、議員の経歴、ウェブサイト、SNSのアカウントなどの一般情報は扱いません。ネットで名前を検索すれば簡単に確認できるような情報に対して労力をかける意思を作者は持ちません。血液型のような情報を欲する方が日本に多いのは知っていますが、かつて血液型の間違いをひとつの決定的要因として命を落とした政治家もいました。そのような責任を負うことはいたしません。

(5)残念ながら、データはさまざまな理由により不完全です。主要な原因は、会議録等の記録に瑕疵があるためで、たとえば会議の出席者リストに掲載されていない議員が発言しているような例は多数あります。議員名の表記が間違っていたりいい加減だったりで、発言していたのに漏れていることがありかもしれません。さまざまな方法でエラーチェックをし、前後の議事録から情報を補完したりしていますが、当時の記録が他にないため、情報は完全とはなりえません。

また、よくある非難の例として、「議員の活動は量ではなく質で判断するべきだ」というものがありますが、当サイトは情報を提供するものであり、議員の判断基準を押し付けるものではありません。また、「議員の質」なるものは往々にしてそれぞれの人の価値判断に依存するもので、一般的な形で「質」を提示することは不可能でしょう。しかし、それぞれの人が「議員の質」を判断するために有益な材料を、当サイトは提供していると思います。

資料

国会議員の活動については、国会会議録検索システム、衆議院、参議院の各ウェブサイトで公開されている文書を作者が収集し、加工、編集して作成しています。しかし、この裏にはさまざまな関連資料があります。

たとえば本サイトで公開している新憲法下全議員の一覧は、どこでも公開されていない情報だと思います。誰が議員であるかは、さまざまな選挙結果データから当選者のリストを集め、重複を除外するなどして特定しています。

また、議員は国会では別名で活動していたりします。特に参議院の場合、かつてはいわゆる芸名での活動が認められておらず、記録上は本名で登場しており、さらに規則変更である時点から芸名化されているため、一般の人が議員活動を議員名で特定していくことは難しいところがあります。国立国会図書館の国会会議録検索システムは、そのあたりも考慮した大変良いシステムですが、発言者でしか追えなかったりします。

このような理由で、本サイトに収められ、目で確認できる情報から把握できる以上のさまざまな資料、データに本サイトは依拠しています。以下に具体例、代表例を挙げておきます。

選挙結果を把握し、議員の特定に用いました。ただし、過去の選挙の下位に省略が多く、一部に党派の間違いがあり、諸派の政党名を特定できません。

『asahi.comで見る2000総選挙のすべて』、『asahi.comで見る2003総選挙のすべて』、『asahi.comで見る2005総選挙のすべて』、『asahi.comで見る2009総選挙のすべて』、『朝日新聞で見る2012総選挙のすべて』、『asahi.comで見る1998参院選のすべて』、『asahi.comで見る2004参院選のすべて』、『asahi.comで見る2007参院選のすべて』、『asahi.comで見る2010参院選のすべて』

近年の選挙での当選者はこれらのデータによりデジタルで把握できます。

地域別の票数を示したデータのため、本サイトとは直接関係ありませんが、上記の選挙大観のデータを照合する際に用いました。

作者が関わったデータ集です。参議院議員の任期、選挙時党派を調べるのにとても有益な資料です。

いずれも議員の履歴や名前の読み方を参照するのに大変便利な資料です。

ここに紹介されている資料は、議員の氏名や選挙時の公認政党などを調べるのに大変有益でした。

運営

当サイトで公開しているデータの収集、ウェブサイトの構築は、すべて作者ひとりで行っています。ただし、上記資料の一部の購入、作業に用いる一部の機器の購入に東京大学の研究費、文部科学省科学技術研究費補助金を用いています。

サーバー代、資料収集費等を充足する目的で、各ページに広告を入れており、特にamazon associatesの収入に依存しています。たとえば拙著『世論の曲解―なぜ自民党は大敗したのか』をこのリンクからご購入いただくと24円の収入が私に入ります。『平成史』だと56円です。

金額からわかるとおり大きな収入ではありませんが、幸いなことに、公開以後2年間は、統一地方選挙(2011年)、衆院選(2012年)があったこともあり、年間のサーバー代を超えるだけの収入を得ることができました。御礼申し上げます。

今後は、こうしたイベントに依存しない、安定した運営を目指します。今後ともご協力いただければ幸いです。

(※この記事は7月8日の「311後の日本の政治論壇」より転載しました)

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