新国立競技場提案、A案vsB案ですが、
どうやら、明日(12月22日)結果発表されるという見込みです。
さて、私がB案押しであることの理由解説を続けますが、
工期が早い理由のひとつとして土工事についてやりました。
次に、A案とB案でもっとも大きな違いであるスタジアム屋根工事について解説します。
ここにですねえ、大きな工夫の違いがあるんですよ。
まずA案くん
片持ち屋根でシンプル、と言っています。
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実は、今回のA案、B案とも片持ち屋根(片方にしか柱がない)を採用しています。
なぜなら、フィールド側に柱を立てると邪魔になるからです。
しかし、きちっと屋根を組み上げるまでは、屋根の梁を持ち上げたりするために支えが必要です。
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上の図で仮設支柱と書いてあるのがそうです。
屋根の梁を載せる前に仮設支柱を立て、屋根梁の固定が出来たら仮設支柱を外す。
そしてまた梁の下に仮設支柱を立てるを繰り返していきます。
これはあくまで仮設ですから、本体が完成後には撤去します。
上の図では、そのために1本あたりの立てたり外したりが1日ほどかかり、屋根梁が108本あるといっていますね。
これはちょうど、人が重い丸太を持ち上げていくときのことを想像してみればわかるでしょう。
両端を持って支えますよね。
こんな風に
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それがA案
続いて!B案
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なにやら、短縮短縮っていっぱい書いてありますが、
注目すべきはここです。
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A案にあった、仮設支柱がありません。
仮設支柱なしで組み立てようとしている。
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これが、B案の工夫です。
柱の部分を支点にして、やじろべえのように、天秤のように、梁を載せたら、後ろ側で引っ張る。
それによって、仮設支柱の設置・撤去作業がなくなるどころか、柱があったら施工できないスタンド部分もジャンジャン工事できるわけです。
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先ほどの丸太を二人で支える様子のように、このバックステーの機構を人体で現したものがこれです。
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シーソーです。
太い木の柱の後ろに控える細い棒、バックステーが梁の下がりを支えている。
結果として、スタンドの裏側が非常に軽快に開放されるわけです。
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108本の仮設支柱を使うと使わないのでは、1本あたりの仮設設置撤去作業が1~2日ということは、延べ108~316日ということになり、4工区同時作業だとしても1~3ヶ月の開きが出ます。
B案は、このシーソー式の屋根構造システムの提案により、A案よりさらに2ヶ月以上、場合によっては3ヶ月近くの短縮可能性をもっているのです。
非常に洗練された構造計画と施工計画が一体となったデザインなのです。
(2015年12月21日「建築エコノミスト 森山のブログ」より転載)
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