新・新国立競技場計画でB案押しの理由

B案は、極限までシンプルなお皿形状にしたうえで、木の軸をもった傘をさしているというものです。

去る12月14日、JSCより新国立競技場計画の提案書が発表されました。

私はその頃ちょうど、12日の神戸から京都に移動して関西方面に居りまして、14日に東京戻りの予定でしたが

第11期灘大学vol.3「灘建築学~安藤建築 ウォーク&トーク」

「本日、新国立のA案、B案が出ます!!」

という問い合わせが殺到しまして、14時に発表されるらしいのですが、

ちょうど昼過ぎに新幹線に乗り、14時はおそらく静岡あたりの予定でした。

「それではダメです。そのまま大阪に来てください!」

「そして、発表即コメントを!」

ということでMBS毎日放送の「ちちんぷいぷい」スタジオで、西靖アナウンサーと、岡山同郷トーク等しながら待機しておったわけなんです。

そして、待望の14時過ぎ

「JSCのサーバーがアクセス殺到で落ちています!」

結局、資料入手したのは14時半ごろでした。

ひと目見て思ったことは、どっちも隈さん?でした。

同時に、スタジアム規模の巨大建築にもかかわらず、木が使ってあるということです。

最初の一言は「どっちも木かよ!」でした。

その辺スタジオでコメンテーターのみなさんとトークしまして、大阪の番組は皆さんの突っ込みが、鋭くかつ面白く、なんとかついていったという感じでした。

その後は移動中にお電話いただいた方々の質疑に答えながら、徐々に理解していったという感じです。

日刊スポーツ 2015年12月15日

産経ニュース: 2015年12月15日

スポーツ報知: 2015年12月15日

で、なぜB案押しなのか?といいますと

A案、B案のどちらも2019年11月完成としていますが、現時点では確約は出来ないのだと思いますが、B案の方が工期短縮の可能性を秘めているからです。

2案発表後に、多くの建築専門家にインタビューされたと思うのですが、デザイン性や作家の個性だけでの評価ということになると、それぞれの好みという側面もあり、みなさんA案、B案、どちらも良い、どちらも甲乙付けがたい、というコメントにしかならないと思うんですね。

面白いのは、いまだに「これならザハ案がよかった」という方もいらっしゃいますが。

つまり、この計画はデザイン論では片が付かない、ということですね。

パット見の印象はあいかわらず、鳥の目線で上空から見た形態しか把握できないから、両者とも楕円じゃないか、と同じ輪郭じゃないか、ということになるのだと思います。

なぜ、スタジアムが円形や楕円形になるのか?については以前解説しています。

というわけで、円形の構造物のデザインに木をどのように使ったのか?

A案は庇の下の部分、B案は構造柱、というのがまずはA案とB案の違いですね。

A案はどちらかというと、構造物としては無難な方針を立て、そこに木の襟巻きを着けた状態に植栽をを回したというものです。

B案は、極限までシンプルなお皿形状にしたうえで、木の軸をもった傘をさしているというものです。

この襟巻きと傘の考え方の違いが、デザインだけでなく、施工方法においてはっきりと違いが出ているというのが、今回わたくしがB案押しの理由でもあります。

それは、B案の方が工期が早いのでは?もしかしたら2019年11月とはいわず、2019年8月完成が目指せるのでは?という可能性をみたからです。

建築物の費用内訳は、大きなものでも小さなものでも、おおよそ材料が3割、人件費6割、経費1割といった割り振りになるのです。

つまり、素材をケチるよりも、人件費部分、早く手間をかけないで造ること、無駄を省くことというのが、費用にも大きな影響があるんです。

だから、早く造れるならそれだけ工事費も圧縮できるというわけなんです。

では、なぜB案の方が早く造れそうなのか?を技術提案書から読み解いていきたいと思います。

(2015年12月19日「建築エコノミスト 森山のブログ」より転載)

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