中国が、ちょっと大変なことになってきました。
中国経済は世界の牽引車なので、それが今回のようにひどく脱線したのなら、世界は恐ろしい未来に備えてしかるべき措置を講じるべきです。
中国政府はリーマンショック後、思いっきり公共投資をし、また信用を膨張させることで危機を乗り切りました。このときの信用成長は前年比+30%とかの、無謀とすらいえる大胆さでした。
そのおカネは不動産投機に回りました。2010年の建設ブームは、とりわけクレイジーでした。
それらの物件が完成すると、案の定、買い手が不足し、大幅な供給過剰になりました。現在の在庫は2.2年分くらいあります。
不動産価格は軟調になっていますが、これをどうやって軟着陸させるかが腕の見せ所だったわけです。でも今回の株式市場の崩落で投資家のコンフィデンスは粉砕されました。だから中国の不動産市場の急落は時間の問題でしょう。
因みに中国の民間セクターの信用は、GDPの2倍近いです。
今後中国の不動産市場が下がり始めたら、中国政府は株式市場を支えるだけでなく、不動産市場や銀行も支える必要が出ます。その原資として米国債を売るかも知れません。
中国が日本をはじめ海外で不動産を買い漁っていたのも、過去の話になると思います。観光客による爆買いも終わります。
このように世界で最も信用が膨張していた中国で、いまあたかも風船がしぼむように急速な信用緊縮がはじまっているのです。
これを経済学ではミンスキー・モーメント(Minsky moment)と呼びます。
だから世界が協調してこれを補ってやる必要が出てきます。そのためにはFRB、ECB、日銀、中国人民銀行などがよくコミュニケーションを取りあって、金利政策に協調性をもたせることが必要です。
FRBは当分フェデラルファンズ・レートの切り上げを見送るべきです。ドイツは景気が悪いのにギリシャに切詰めを強要するような誤謬に満ち、なおかつ世界経済の文脈とは真逆を行く政策をすぐやめるべきです。
いまドイツが空気を読むことをしないと、ちょうど1987年に彼らがブラック・マンデーの引き金を引いた時と同様に、ドイツが世界同時株安の悪者にされるかもしれません。
(2015年7月8日「Market Hack」より転載)
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