今回ご紹介するのは、地形や周りの自然にすっと溶け込むかのように造られたホテル。高いコンセプトを掲げた傑作建築から、田舎風景の中にちょこんと佇む小さな隠れ家風の宿まで、スタイルは異なれど、どれもすっかり景色の一部となり、環境の美しさをより引き立てていると言えましょう。
地球上屈指の素晴らしき野生環境の中にホテルを建てるのであれば、その景色を邪魔しないデザインに仕上げたいと思うのは当然のこと。きらめくサルミエント湖と、頂に雪積もるトーレス・デル・パイネ山塊が背景となったここティエラ・パタゴニアは、数百メートル離れたところから眺めると、この惑星の表面に走る小さな亀裂のよう。
ベルカンポ・ロッジの特長は、数字だけでもかなり説明ができます。1,200ヘクタールにも及ぶこのエコ農地には、環境に優しい豪華なスイートが12棟あるほか、その先には6,000ヘクタール以上の広さを誇る雨林保護区が。中はすごく広々としているカバナも、宙から眺めると、青々とした森林の中で時々ピッと光を反射する小さな点にしか見えません。
この世のものとは思えないユタ州南部の砂漠風景を目の前にしながら、これだけ贅沢なモダン建築とインテリアが迎えてくれるなんて、誰が思ったことでしょう。アマン・グループの得意とするミニマルなインテリアデザインのおかげで、部屋の中からでも窓の外のダイナミックな自然をじっくり楽しむことができます。ほら、ベッドに横たわったまま、砂丘に触れることができそうなほどの迫力ではないですか。
コスタリカの山の中、雲霧林の奥地にあるのは見た目も環境への影響も控えめに抑えたエル・シレンシオ。屋根がひょこっと霧と木々の上に突き出たバンガローは、まるで森の一部のよう。とはいえ、ロッジの中に一歩踏み入れれば、高級シーツと貸切半露天バスタブも整ったリュクスな空間が広がっています。
5. Remota(チリ)
トーレス・デル・パイネ公園エリアの高級ホテルでは、大自然の迫力を最大限に引き出す謙虚なスタイルが独特の建築基準となっているよう。前出のティエラ・パタゴニア同様レモータも、周囲の草原に吸い込まれるかのようなデザイン。背の高いガラス張りの壁が外の景色を反映し、草を植え込んだ屋上のおかげで宙から眺めてもすっかり大地の中にカモフラージュされています。
素朴な隠れ家的な要素と気取りのない高級感をバランス良く持ち合わせたこのエコ・ロッジ。あのフランシス・フォード・コッポラ監督が所有する宿とはいえ、青々としたジャングルの緑に囲まれた藁葺き屋根のバンガローに虚飾はまったく感じられず、丁寧に手入れされたガーデンの先にはベリーズの熱帯雨林が広がっています。
海面下およそ250m、天然温泉水が滝のように岩肌を伝って流れるキャニオンの底に造られたエバソン・マインは、これ以上にないほどプライベートかつ、自然を間近に感じさせてくれる場所。アマン空港からほんの1時間でアクセスできるのに、完璧なまでに別世界。こんなオプションがあれば、乗り継ぎ時間が長い経由フライトも歓迎したくなりそうです。
8. 倭乃里(飛騨高山)
飛騨の乗鞍岳の麓にある、約15,000坪の自然に囲まれた倭乃里は、昔話の絵本にでも出てきそうな民家造りの宿。天然の木枝をところどころに活かしたり、館内にも豊かな自然環境を反映した要素が溢れています。雪に包まれた冬景色の中でも、紅葉の彩りの中でも、丸ごと溶け込んでいるのが印象的。
遠目で見ると、深く茂った林の中に芽を出した小さな露頭のようなエレミート・ホテリートは、近目で見てもずいぶんシンプル。素朴な石造りの建物の中にあるのはどれも1人部屋。でも、それぞれに7,000エーカーに渡る広大な自然保護区を見渡す小空間が造られていて、一人の時間をじっくり楽しめるはず。
超高級スパ・リゾートにあるべき設備は当然すべて揃っているけれど、ベンタナ・インがほかとは一線を画する存在になっているのは、どこまでも続く幻覚的な太平洋の眺めのおかげ。海抜約300mの位置にある10棟の木造建築は、ビッグ・サーの美しい遊歩道に挟まれた丘の中に自然と溶け込んでいます。
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