今年の4月に車で650キロ、鉄道で300キロ余と、あわせて1000キロに及ぶ北海道キャラバンを敢行しました。
札幌から、新ひだか町の新冠(ニイカップ)、十勝平野のどまんなか帯広、そして網走にほど近い北見、旭川、そして札幌と講演や意見交換、そして現場視察など続けてきました。
初めて砂糖ダイコンの苗を見たり、国内最大の大型芝刈り機や肥料散布車を見たり、また牧場で生まれたばかりの仔馬を見たりしながら日本の食料の安定供給の意味を真剣に考えました。
北の大地は、この国の農産物の生産拠点としてきわめて重要な意味を持っています。また、この国の農業のもつさまざまな問題点を解決し、あらたな可能性を開く実験的なフロンティアの意味を持っていること、それをしっかりと支えていく政策が、今後ますます重要になっていくことを実感してきました。
改めて、この国の安全保障をしっかりと考えていかなければならないと実感しました。
●農産物の輸入構造についてチェック。
この国の食糧安全保障政策を考える出発点は、この国の食料自給率であることは言うまでもありません。
●ところで食料自給率には、生産額、重量、カロリーの3種類がありますが、今回は、生命の維持に直結するカロリーベースの観点から食料自給率を考えてみます。
農水省のhpによれば、1960年までは、日本の食料自給率はカロリーベースで約80%ありましたが、1980年以降は急速に低下。
いまでは、先進国のなかでも最低レベルです。
●平成23年度の数字では、総合食料自給率=1人1日当たり国産供給熱量(941kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,436kcal)=39% でした。
●先進国と比べてみるとどうかですが、
アメリカ130%
フランス121%
ドイツ93%
イギリス65%、、、
日本の食料自給率は先進国の中では最低のレベルであることは間違いありません。
●米仏独英以外の国はどうかと言えば、カナダの223%は当然としても、国土の小さいイタリアですら59%、スイスでも56%、さらにお隣の韓国でも50%。
日本の39%は、かなり危うい状況であることは一目瞭然ですね。
●ちなみに、中国では食料全然保障の最低線を95%に置いています。
そして、その中国で最近90%台に落ち込んだことが国家的な大問題になっていると報道されていました。
●食料自給率の現状では、当然わが国は世界最大の農産物輸入国。輸入が5兆円、これに対して輸出はたった2000億。
●円高の進展や世界的な貿易自由化の流れのなか、国内の食料需要の増大、食生活の多様化の進展等を背景に増加し、年々輸入額は増加しています。
2006年には過去最高となる5兆41億円に達しました。(ちなみに2番目はイギリス、3番目はドイツ。これに対して、差し引きで第1位の輸出国はブラジル、2番目は豪州。)
●ところで、特定国に長期間依存している輸入状況はちょっと心配です。
2006年度の総輸入額5兆41億円の国別内訳をみると
1位 米国 30%
2位 中国 13%
3位 豪州 10%
4位 タイ 6%
5位 カナダ 6%
となっています。
そしてこの上位5か国で65%に達しています。
●さらに、この上位5か国は20年になる常連さん。この常連さん5か国で6割を超えた状況が20年以上続いています。
ちょっと偏りすぎではないでしょうか。
●品目別に見てみると、
小麦は米国とカナダで8割、大豆は米国とブラジルでこれも8割。とうもろこしでは米国だけで8割以上。牛肉では豪州だけで8割以上。品目面でも、特定国への依存が強すぎます。
●現在、日本の穀物供給量は年間約4000万トン。そのうち約3000万トンは輸入。
これまでは安くて良質な食料を海外から調達できるという安心感がありました。
しかし、BRICSの経済勃興に象徴されるように、開発途上国の経済の急激な繁栄は、人口増を生み、当然食料のひっ迫につながってきます。
中国が、食料支給率を90%切ったという報道は、何を意味するかといえば、日本の食料の、輸入依存の安定供給構造は、そろそろ終わりを迎えることを意味しています。
日本の食料安全保障の危うい状況をしっかりと見据えておく必要がありますね。
(この記事は、やなせ進公式ブログの4月22日の記事に再編集したものです)