僕らは食べてすらこなかった。
何を?アフリカの食べ物をだ。
カレー、焼肉、カツレツにラーメン。今日、日本で食卓に並ぶ食べ物の中に、海外をルーツとするものは少なくない。僕らは、アメリカ仕様のピザを頬張り、イギリス風のカレーに舌鼓するのだ。どちらもルーツは別の場所にあるが、日本へ流れ着いて根付いている。
世界の味のるつぼとなっているのが現代の日本の食卓だ。
ただ、そこには抜け落ちた地域がある。それがアフリカだ。
なぜだろう?世界中の食べ物を楽しめる人びとが、どうしてアフリカ料理を取り入れないのだろうか。
「もったいない」と感じられずにはいられない。
無知ゆえに食べないのか、食べないから無知なのかわからない。
いずれにせよ、食べていないことが無理解につながるのは間違いない。
だから、僕は食べようと思う。食べて伝えようと思う。
そこで、考えだしたのが「アフリカうまか旅」というプロジェクトだ。
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なかには「食べるだけかよ!」とツッコミを入れたくなる方もいらっしゃるだろう。
たしかに、開発でも援助でもないのにアフリカへ行き、食べて伝えるだけとなると顰蹙を買ってもしかたあるまい。というか、究極のところそうなのだから弁明の余地はない。
だが、僕らは食べることさえ今までほとんどしてこなかった。知ろうともしてこなかった。
だから、僕は食べることで小さな一歩を踏み出したいと思う。
3年前に、アフリカを1周して各国の歴史の教科書を集めながら、人びとの歴史観を聞いて回った。
決して思わぬ発見の連続ばかり、というわけではなかった。でも、多くのことを学ばせてもらった。
現地の方から話を聞かせてもらう場には、多くの場合、ご飯やお茶、お酒が用意されていた。
一緒に食べて、飲むことで、彼らの生活・歴史の一端を知ることができる。そこに人がいる限り、食べ物がある。食べ物を通じて、互いのことを知ることができるのだ。
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(ラマダン中、日没後に一緒に食べる)
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(トウモロコシのビールはうまい)
「おもてなし」から始まった問題だらけの東京五輪。
和食でおもてなしもいいかもしれないが、アフリカからの選手団を彼らの実家の味で歓迎するのも素敵じゃありませんか?
五輪はこちらのものをプレゼンするチャンス。でも、私たちが世界中のことを知るチャンスでもある。世界のことを知ってこそ、いい「おもてなし」ができるのではないでしょうか。
本当のグローバル化に必要なのは、言語や文化の理解だけではない。
胃袋のグローバル化が世界を繋いでくれる。
だから、僕は食べる。
たとえ、小さな一歩でも。噛み締め、飲み込むことで、学びたいと思う。
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(ガーナ料理を食べる筆者)
ブログ「アフリカうまか日記」より転載