取材・執筆・撮影:オウ・イエン
企画の審査に向けて開かれた例会の様子。中央は会長の佐藤さん
学生から本の企画を募集して出版につなげる「出版甲子園」が、今年で10年目を迎える。これまでに書籍化されたのは22冊。早稲田大学の公認サークルとして運営する実行委員会は、今年から学生の読書推進を活動の理念の一つに加え、若者の活字離れを食い止めることも狙う。
出版甲子園は年に一度、全国の学生から本にしたい企画を募集し、出版社からの編集者らとともに審査する。2次審査を通った企画は、一つの企画につき実行委員会の二人が担当者としてサポートし、企画書をブラッシュアップしていく。3次審査を勝ち抜いた10企画は、決勝大会でのプレゼンテーションをへて出版のチャンスをつかむ。
応募数は、第1回の2005年には108企画だったが、第7回にはこれまでで最も多い257企画に。今年は133企画の応募があった。出版にこぎつけた22冊の中には、続編が出た作品や映画化された作品もある。第4回大会から出版された『パンチラ見せれば通るわよっ!テレビ局就活の極意』は今年7月に電子書籍にもなった。
募集する本のジャンルは、実用書、エッセイ、学習参考書、サブカルチャーだ。フィクションを審査するのはハードルが高いため、文芸作品は扱っていないという。今年応募された企画は、例年に比べると学習参考書がやや少なめで、サブカルチャーが多くなった。実行委員会会長の早稲田大学文化構想学部3年、佐藤静さん(21)は「今年の決勝大会にはサブカルチャーやエッセイに強い編集者を増やすことも考えている」と話す。
実行委員会は、大会のほか、読書推進も活動に取り入れる。学生の目を引くように、特定のテーマで本を選び、紹介カードを書き、大学生協の書店に並べた。学園祭に合わせてチェーン書店でブックフェアを開催し、大学のトークショーでは本の販促なども行った。
一方、決勝大会で出版社から引き合いがあっても、出版に至っていないケースもある。第7回大会の参加者、村瀬さつきさん(26)は決勝大会に3つの出版社から出版の申し出を受けたが、そのうち2つの出版社では社内の編集会議で内容が折り合わず、最終的に企画は通らなかった。それでも、「もともと本を書きたかったわけではないが、決勝大会のおかげで本にしたい気持ちが出てきた。自分は書く能力が乏しいから、原稿へのサポートを続けてほしい」と意欲を見せる。
このため、実行委員会では、1年生のサポートメンバーに2年生以上もつけて質を高めたり、サポートする担当者は決勝大会から出版が終わるまで原稿をチェックしていくようにしたりすることにした。「出版社と企画者からの要請があれば、いくらでも協力する」と会長の佐藤さんは話す。
11月の決勝大会には、読書好きの芸能人もゲストとして招くことを考えている。佐藤さんは「出版に興味がある学生だけでなく、一般の学生たちも多く来てもらいたい」と、関心の広がりに期待している。
(2014年9月7日「Spork!」より転載)