こんにちは、オープンリーゲイの大学生で、NPO法人ReBitスタッフの松岡宗嗣です。前回はケンブリッジ大学でLGBTの学生に話を聞いてみました。
前回:「ゲイの大学生が、ケンブリッジ大学のLGBTの学生と会ってみてわかった3つのこと」
今回は、「LGBTに関する教育」について触れてみたいと思います。私自身NPO法人ReBitのスタッフとしてLGBTについての出張授業を行っていることもあり、イギリスのLGBT関係の団体はどのようにLGBTについての授業や研修をしているのか気になっていました。
そこで、イギリスのLGBT関係の団体の中でも特に大きいNGOであるStonewallにお邪魔してきました!
出迎えてくださったのは、キットさんとクレアさんです。
Stonewallは1989年に設立したNGO団体で、Section28と呼ばれる「公的な教育現場で同性愛を助長してはならない」という法律に反対するために生まれました。創設者のなかの一人には、映画ロード・オブ・ザ・リングのガンダルフ役でも有名なイアン・マッケランさんがいます。
Stonewallの活動は政治家へのロビー活動や学校、企業への研修、独自のキャンペーンなど多岐にわたります。また、国内外のLGBTに関する多くの団体や活動家をつないでいる役割も担っているそうです。オフィスはロンドンのウォータールー駅付近のビルにあり、中も広くて綺麗で驚かされました。
LGBTについて先生が先生を教えるための研修
私が所属するNPO法人ReBitで実施する出張授業では、小学校から大学まで、様々な学校にLGBTの学生メンバーが伺い、学生や教職員の方向けにLGBTの基礎知識だけでなく自分自身のライフヒストリーなどを話しています。
それに対して、Stonewallが教育現場で実施しているLGBTについての教育で特徴的だったのは、"Teacher training"(先生への研修)に加えて、 "Teacher to Teacher training"(先生が先生を教えるための研修)を行っている点です。現場の先生が生徒だけでなく、他の先生にも伝えていけるような研修を実施しているのは素晴らしいですね。
研修の際に、Stonewall ではテキストや授業案、DVDなどをセットにしたInformation Packという授業キットを先生たちに配布しているそうです。実際に使用している教材やDVD、グッズなどをお土産として一部いただいてきました!
教材の中には、「ストレートアライとして、どのようにLGBTフレンドリーな職場を作ることができるか」というものや、「女性であり、レズビアンであることとは」など、細かく視点が分かれているものもあります。(一部PDFでも手に入れることができます)
今回は、日本におけるLGBT教育にも応用できそう!ということで、中学校向けLGBT教育の入門書にあたる"Getting Started"を一部紹介したいと思います。
中学校で、LGBTへのいじめを防ぐためには
Getting startedの副題は「中学校における同性愛や両性愛、トランスジェンダーへの嫌悪によるいじめを防ぐためのツールキット」となっています。
使い方としては、このテキストをもとにLGBTに対するいじめをどのように防ぐかを5つのステップに従って考えていきます。テキストの中にはいくつかのテンプレートやチェックリストがあり、それらがこの教材を使用している人を手助けしてくれます。
テキストではまず、用語集、いじめの実態、法律ではどうなっているか、差別用語の例がコンパクトにまとめられています。ここを読むだけでもふむふむと納得できそう。
いじめを防ぐ5つのステップ
どのようにいじめや差別発言等を防いでいくかを示す5つのステップがこちら。
1.グランドルールをつくる
同性愛や両性愛、トランスジェンダー嫌悪によるいじめに対してのポリシーを明確にしましょう。
2.学校の方針について、保護者とコミュニケーションをとる
手紙などを利用して、いじめに反対するポリシーについて保護者の方々とコミュニケーションをとりましょう。
3.実態を記録する
いじめや差別用語の実態をモニタリングし、記録しましょう。
4.学校で何が起こっているかを調査する
生徒や職員、保護者に対し、いじめや差別的言動についてアンケート等で調査しましょう。
5.LGBTの若者をサポートする
チェックリストを利用し、LGBTに関する情報や学校の制度を確実にしましょう。
それぞれの項目にはツールキットと呼ばれる例やチェックリストが載っており、そちらも参考にしながら実際に考えていくことができます。
Getting Startedをはじめ、いただいた教材の多くはpdfでWEBサイトにアップされています。関心のある方はStonewallのページからぜひダウンロードしてみてください。
Some people are gay. Get over it!
Stonewallが大々的に行っているキャンペーンに "Some people are gay. Get over it!"というものがあります。「何人かはゲイなんだから、しょうがないじゃん!」みたいな意味。つまり、LGBTと呼ばれる人たちがいることはまぎれもない事実なんだから、困り事に対して取り組んでいかなきゃいけないでしょ!という強めなメッセージです(笑)
日本も含めて世界中のどこでもLGBTはいます。今まではいないとされていたものが、実は見えていなかっただけ。今を生きている人だけでなく、次の世代のひとたちがより自分らしく生きていけるよう、教育をはじめ、あらゆる角度からGet over it!と強めに(笑)声をあげていくのも良いかもしれません。