「うちの地元にLGBTはいない」なんて言わせない。LGBT差別解消を求める「レインボー国会」が開催

逢沢一郎国会議員「LGBTについて多くの人に正しく理解をしていただき、共感をしていただく必要があると思います」

3月9日に衆議院の議員会館で、性的指向や性自認に関する公正と平等を求める院内集会「レインボー国会」が開催されました。

平日の昼間にもかかわらず300人ほどが集まり、議員会館で一番大きい会議室がほとんど埋まっていました。

国会議事堂前でレインボーフラッグを掲げて写真を撮る"性的指向や性自認に関する公正と平等を求める院内集会"実行委員会のメンバーら

オリンピック憲章には2014年から「性的指向による差別禁止」を明記しており、オリンピックの開催国はこれに準ずる必要があります。しかし、日本はLGBTを保護・承認する法律がまだありません。2020年の東京オリンピック・パラリンピックまであと約3年。

オリンピックのためではなく、今苦しんでいる人や不当な扱いを受けている人が平等な権利を得るために法律が必要ですが、少なくとも2020年を目安に、一歩でも前進していく必要があります。

■SOGIハラ=性的指向や性自認を理由とするハラスメント

レインボー国会では「SOGIハラ」という言葉がキーワードとして取り上げられていました。

SOGI(ソジ)とは、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字からとった言葉です。

LGBTと何が違うかというと、そもそもLGBTはレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどの人々のことを指す総称として使われていますが、SOGIは全ての人が持っている「性的指向」や「性自認」のことを指しています。

SOGIハラについて説明する実行委員会のメンバーら

異性愛でも、同性愛や両性愛でも、何らかの性的指向を持っていて(そもそも好きになる性を持たない無性愛も含む)、誰もが自分自身のことを男性だったり、女性だったり、両方だったり、どちらでもなかったりと、何かしらの性別を自認しています。

そこで、SOGIという言葉を用いることにより「どんなSOGI=性的指向や性自認を持っていても、すべての人が平等であるべきだ」と言うことができます。

例えば、ストレートとも呼ばれるような、自分の心と体の性別が一致していて異性愛者の人は、自分の望む性別のトイレの使用を禁止されることもなければ、自分が好きになる性別をオープンにした途端周りから笑いの対象にされることもありません。しかし、それ以外の性的指向、性自認を持っている人は、たったそれだけで笑われたり、不当な扱いを受けたり、差別の対象とされてしまうのです。

つまり、「LGBTという特別な人たちを守るために権利を与えましょう。」ではなく、「誰もが持っているSOGI(=性的指向や性自認)にかかわらず、全ての人が平等に扱われるようにしましょう。」という意味でSOGIという言葉が使われるようになりました。

長くなってしましたが、SOGIハラとは、SOGI(=性的指向や性自認)を理由とするハラスメントのことで、学校でのいじめや職場で不当な扱いを受けることなどを指す言葉として使われています。

■ 13名の国会議員からのスピーチ

レインボー国会では、国際人権NGO「Human Rights Watch」の土井香苗さんとTOKYO RAINBOW PRIDE共同代表でトランスジェンダーの杉山文野さん進行のもと国会議員、LGBTの当事者、各界著名人、法学者の方々からお話がありました。

BuzzFeedの記事で当事者のスピーチの様子が取り上げられていますので、まずはこちらから読んでみてください。

続いて13名の国会議員の方々が会場を訪れ、性的指向や性自認に関する法整備についての考えを述べました。発言そのままではありませんが一部抜粋して紹介します。(議員の方々は到着した順番にお話をしていました。)

レインボー国会に参加した国会議員の方々

■ 馳浩議員(自民党衆議院議員)

「みなさんこんにちは、元気ですか?」と軽快な口調で話し始めた馳浩議員。LGBTの課題に取り組むことになったきっかけが2つあるそうで、1つは16年前の性同一性障害特例法の立法のとき。もう1つはオリンピックパラリンピック招致の本部長を務めた際、LGBTの課題が大きな問題であることに気づいた時がきっかけだそうです。

「法律を作るのか、理解を広げるのか、住んでいる自治体や働いている職場、通っている学校で何とかならないか、それぞれの段階での課題が何なのかを考えていきたい。」

■ 小宮山泰子議員(民進党衆議院議員)

小宮山議員の地元、埼玉県川越市の隣の入間市で、性同一性障害の当事者として市議会議員に立候補している人がいてその方と深く関わりがあるそうです。

「日頃障害者に関する政策にも取り組んでいますが、よく「障害があるのが問題ではなく、障害は社会の側がつくっているんだ」と言っています。こういったことはLGBTにも言えることだと思います。ともに勉強できればと思っています。」

■ 西村智奈美議員(民進党衆議院議員)

性的指向及び性自認における差別を解消する法案の筆頭提出者である西村議員。「民間や企業は人権の啓発は進んでいるが、この国会で進んでいないことが申し訳ない」と話します。

「ぜひみなさんで良い議論をしていただいて、みなさん自身で国会を動かしていってほしい。世界に恥じない立法をしていきたい。ともに頑張ってまいりましょう。」

■ 牧島かれん議員(自民党衆議院議員)

アメリカで同時多発テロが起きた際、同性カップルの苦労を目の当たりにしたそう。「日本でそのサポートって十分だったんだろうかと考えるきっかけだった。」と話しました。

「先輩議員にLGBTについての話をすると、「うちの地元にはいないよ」と言われることもありました。絶対にいないことはありません。声をあげにくい情勢であることを承知の上で、私たちも頑張っていきたいです。」 

■ 池内さおり議員(共産党衆議院議員)

「中のシャツをレインボーにしてきました。」と意気込みを語る池内さおり議員。

「誰一人として同じ人はいないからこそ世界は鮮やかなんです。その中で私も当事者だし、みんなが多様性の当事者です。みんなが自分らしく生きることを保証される、呼吸のしやすい社会にしていきたいと思っています。」

■ 初鹿明博議員(民進党衆議院議員)

性の問題は自分が普通だと思う人が多いが「そもそも普通とは何だろうか」と話す初鹿議員。

「なんとなくこの国が向かっているのが窮屈な方向な気がしているのは、私だけではないはずだと思います。」「SOGIハラという言葉がありましたが、名前が決まって広まっていくことで、これはどういう意味なんだろう、苦しんでいる当事者がいるんだということを知るきっかけになります。流行語大賞になるくらい、SOGIハラを広めていただきたいと思います。」

■ 逢沢一郎議員(自民党衆議院議員)

「いわれなき差別や偏見、社会的な不条理のない社会をつくっていくことは当然です。オリンピックパラリンピックをひとつの目安にしながら。LGBTについて多くの人に正しく理解をしていただき、共感をしていただく必要があると思います。」

■ 牧山ひろえ議員(民進党参議院議員)

アメリカやヨーロッパに住んでいた時から、クラスメイトや職場の同僚にセクシュアリティをオープンにしている当事者の方が多くいたそう。

「日本に戻ってきて、何で同じ割合のLGBTが周りにいないんだろうと疑問でした。その理由はカミングアウトできない社会だからなんだろうなということにも気がつきました。自分らしく生きていた同僚やクラスメートのことを思うと、同じことが日本でも起きるように頑張っていかなければと思います。」

■ 細野豪志議員(民進党衆議院議員)

「LGBTの問題は議員になった直後から取り組んできましたが、なかなか国会の中で具体的な動きにならなかった。」と話す細野議員。

「個人的には法律を作っていかなければならないと思っています。まずは差別解消法を作っていきたい。2020年が間もなくきます。同性婚も社会的に認めていくことが本来の姿だと思いますが、国会はまだ随分手前にいます。一歩でも二歩でも前進できるようにしていきたい。」

■ 石田昌宏議員(自民党参議院議員)

もともと看護師だった頃から「人が病んだり、苦しんでいるという声が自分自身の学びにもなった。」と話す石田議員。

「改めてまだ知らなかったことが多くあるんだなと思い、社会だけでなく自分自身のためにも意味があると思っています。自由民主党の中でLGBTに関する特命委員会の委員をつとめていますが、法律だけではく理解や細かい制度の見直しも必要です。生きづらさを取り除くための制度づくりと理解を同時に進めていきたい。」

■ 新妻秀規議員(公明党参議院議員)

過去にアメリカのシアトルに滞在していた際、パレードを見たことがLGBTについて知ったきっかけだったそう。

「人権課題だと痛感しました。なんとか突破口をつくっていきたいと思っています。」

■ 福島みずほ議員(社民党参議院議員)

「昨日はWomen's Marchをやりました、今日はレインボー国会と熱気に感動しています。」と話す福島議員。

「カミングアウトしてもしんどい、しなくてもしんどい、社会を変えるためにはLGBT差別解消法案が必要です。」

■ 辻元清美議員(民進党衆議院議員)

「セクシュアルマイノリティが「マイノリティ」と言われていることに抵抗感がある。なぜならこれは、全ての人が幸せに生きていくための問題だから。」と話す辻元議員。

「アメリカなど、世界ではこれに逆行する動きも出てきていますが、国会ではこの課題に関して仲間も徐々に増えてきています。全ての人の問題として、ともに頑張っていきましょう。」

ダイバーシティは企業の活力の源泉

国会議員の方々に続き、各界から著名人の方も会場に足を運んでいました。

■ 著述家、評論家の勝間和代さん

「自分でもびっくりしていますが、私が委員をつとめている内閣府の男女共同参画の資料では、性的マイノリティに関する記述が"女性が抱えるその他の障害"のところにたった2行だけ記載されているだけでした。本会議でもこの会話をしたことはないし、女性活躍も男女のカップルで結婚している人を前提としています。ただ、残念ながら私自身レインボー国会やパレードもこれまで目に見えないものでした。はじめて皆さんが課題を抱えていることを知ったのです。世の中には気づいていない人がたくさんいます。さまざまな場面で声をあげてほしい。」

■ 経団連、ダイバーシティ担当の大山さん

「ダイバーシティは企業の活力の源泉。いままでは女性活躍が中心でしたが、LGBTのことは欠かせませんしこれからも真剣に検討していきます。すでに約1300社でアンケート調査もやっており、5月をめどにアウトプットしていく予定です。企業の立場からも声を大きくあげていきたいと思っています。」

■ 作曲家の三枝成彰さん

「私はオペラを書いていますが、今回はLGBTが主人公になっています。チャイコフスキー、ラベル、プーランク、サンサーンス、バーンスタインなど、我々の業界にはたくさんの当事者がいます。そういった人たちを除くと半分くらい居なくなってしまうんじゃないかというくらい、我々の業界ではなくしてはならぬ人たちです。差別することは本当におかしいと思います。」

差別をなくし理解を進めていくために"SOGIハラスメント"を広めてていきたい

最後にLGBT法連合会事務局長の神谷悠一さんが閉会の挨拶を述べました。

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「今年の1月から、国家公務員の性的指向や性自認に基づくハラスメントを防止対策が実施され、ハラスメントの排除や、研修などが義務化されました。国会では国家公務員担当大臣がSOGIハラ防止をしっかりやっていこうという話もされていました。

しかし、民間企業や地方公共団体ではそういったものはまだ義務化されていないため、教育現場でのいじめ、民間企業でのハラスメントは無くなっていない。この防止規定がなければ全国の学校や職場などでSOGIに関する啓発・研修すら実施されません。

私たちは差別をなくし理解を進めていくために、SOGIハラスメントを広めていきたいです。」

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