わたしたちがアフターピルを薬局で手軽で買えるようになるべき8つの理由

必要とするすべての女性にアフターピルを!
染矢明日香

「ねぇ、避妊に失敗しちゃったんだけど、どうしよう...」

もうすぐ大学を卒業する頃のある日の夜中、突然の親友からの電話。いつもとは様子が違うかぼそい声とその内容の両方に面食らったことをよく覚えている。私の友人のように思わぬ避妊の失敗であわてた経験のある人は少なからずいるだろう。

そしてその後、彼女が緊急避妊をすることは、そうたやすいことではなかった。

わたしたちが今、アフターピルを薬局で手軽で買えるようになるべき理由を一緒に見ていきたい。

  1. アフターピルには、タイムリミットがある

緊急避妊薬とも言われ、避妊に失敗した、レイプされたなどの緊急時に72時間以内に服用することで、高い確率で妊娠を防ぐことができる(WHOのガイドラインによると妊娠の可能性を95%下げられる)アフターピル。

緊急避妊を成功させるには、時間が限られている。できれば24時間、遅くとも72時間以内に服用する必要があり、それでも100%確実、というわけではない。

  1. 若い女性の8人に1人がアフターピルを使いたい状況に直面したことがある

調査によると、20~30代女性の12.3%が「アフターピルを使いたい状況」に直面した経験があると言う(※1)。あなたも、あなたの恋人・友達も、家族も、もしかしたらそういう状況になる可能性は十分にあるということだ。

  1. 高校生の5人に1人しかアフターピルを知らない

高校生のアフターピルの認知度は21%(※2)。先述の私の友人も、勉強はできたが、アフターピルのことは知らなかった。まず、選択肢を知らなければ、たどり着くのも困難だ。

  1. アフターピルの市販化は圧倒的な世論を無視して不可に

市民の要望を受け、厚労省は2017年にアフターピルのOTC(医師による処方箋が必要なく、薬局・ドラッグストアで薬剤師のアドバイスを受けた上で買える一般用医薬品)化を検討。パブリックコメントは348件中、賛成が320件、反対はわずか28件という圧倒的な世論を受けたにも関わらずOTC化は不可になった。

検討委員のメンバーは「薬局で薬剤師が説明するのが困難」や、「安易な使用が広がる」などの懸念を示し反対。パブリックコメントを募集する以前の段階で、市販化は全会一致で否決されたそうだ。一体何のためのパブリックコメントだったのだろう。

  1. コンドームでの避妊は、年間に5~6人に1人が失敗する

避妊にはコンドーム。よく聞くことだと思う。日本では約82%の人がコンドームによる避妊をしている(※3)。一方で、コンドームの年間避妊失敗率は2割ほど(※4)あることも知っているだろうか? 気をつけて使ったとしても破れてしまうことはある。その上、日本ではコンドームの使い方もまともに教えられていない。

  1. 産婦人科という高いハードル

たとえアフターピルの選択肢を知っていたとしても、「人目も気になり、産婦人科には行きづらい」「仕事があって休めない」「土日や祝日(連休中)で病院がやっていない」「学生なので高額すぎて買えない」など、アクセスのハードルの高さに悩む声は多い。やっとのことでたどり着いた病院で、医者から「こんなことするからだ」と説教をされることも。(少なくとも処方受けに来た女性じゃなくて、相手の男性に言ってやってくれない?と思う。)

国内で認可されているアフターピル「ノルレボ」の原価は1回分で1万円程、医療機関での診察料も含めると2〜3万円にもなる。さらに、全ての婦人科・産婦人科で取り扱いがあるとは限らず、若い女性に限らず手軽に買えるような代物ではない。

そして、そのような状況の中、もし妊娠すれば、中絶か、出産かの選択を迫られ、女性へばかりその負担がのしかかる。

  1. 海外のアフターピルの状況と差がありすぎる

アメリカやEU圏内の23カ国で、アフターピルは既に安全性が確認されたとして市販化されている。多くの場合、薬局で買うことができ、価格帯も5千円未満が相場で、更には若者には無料で提供する国も少なくない(※5)。日本、ちょっと遅れすぎじゃない?

  1. 悪用される? 得体の知れない通販業社は野放し状態だけど?

先日、厚生労働省がアフターピルをオンライン処方する医療機関に対し、懸念を示しているという報道(https://www.huffingtonpost.jp/2018/09/13/after_a_23516027/)があった一方で、SNSで「安くお譲りします」と定期的につぶやくアカウントをはじめ、ネット通販でアフターピルやピルを扱う業者が沢山ある。悪用や濫用が懸念されるのであれば、きちんと医療従事者から説明を受けた上で、アフターピルを安心して服用できる環境が私たちには必要だし、性教育をきちんと受けられる環境を整えてほしい。

WHO(2017年)の緊急避妊に関する勧告では、「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性および少女には、緊急避妊にアクセスする権利があり、緊急避妊の複数の手段は国内のあらゆる家族計画プログラムに常に含まれねばならない」と述べられている。

この記事を書いている私は、大学3年生の20歳の秋に中絶した経験がある。

思いがけない妊娠に至るまで、自分たちの避妊の危うさに気づかなかった当事者であり、妊娠によって女性の人生は大きく左右することを実感した当事者だ。

若い人に子どもを育てられるようになるまでセックスを禁止することは現実的ではない。必要なのは、避妊への知識をもち、アクセスでき、自分の望む選択ができることだ。

私は日本で、アフターピルを必要とするすべての女性のためにアフターピルを薬局で手軽に買えるようにするための、オンライン署名キャンペーンを世界避妊デー(9月26日)に立ち上げた。

キャンペーンでは、すでに1万名以上が賛同し、「アフターピルは知られてなさ過ぎるし、いざという時に手に入れるのが大変すぎる」「ロッカーで悲しく死んでゆく子が居るよりはずっといい」「望まない妊娠や中絶から多くの若者の未来を救えると思います。これは女性だけの問題ではありません。家族が、パートナーが傷つくリスクを減らせるのです。もっと入手しやすい環境にすべきだと強く思います。」などの声を寄せていただいている。

アフターピルを必要とする全ての女性が安全に利用できる社会にするために、ぜひ皆さんの声も聴かせてほしい。

(※1)

オーキッドクラブ 2012年「避妊薬ピルに関する意識調査」

(※2)

NPO法人ピルコン2017年「高校生の性知識・性意識・性の悩みに関する調査」

(※3)

一般社団法人日本家族計画協会 2016年「男女の生活と意識に関する調査」

(※4)

Contraceptive Technology, 20 ed,. Ardent Media, 2011

(※5)

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