企業のウェブサイトやオウンドメディアで画像を使用するとき、著作権や肖像権がクリアかどうかが気になりますよね。
国内外にフリーの無料画像サイトはたくさん存在しますが、それぞれ規約もバラバラだったりするので、「これ、使っても大丈夫なのか?」とおっかなびっくりになったりするもの。
そこで、ゲッティ イメージズ ジャパン株式会社にお邪魔し、
- 商用サイトにおける画像の正しい&間違った使い方
- 権利に関して、よくある勘違いや誤解
- 自分で写真を撮影するとき注意すべきこと
- 著作権や肖像権の定義と扱い
について解説いただきました。
解説してくださったのは、持家 学さん(セールスマネージャー)と、
大串 京子さん(プロダクトスペシャリスト ライセンスサービス日本担当)のお二方。
画像検索で見つけた画像をダウンロードして使うのはご法度
Q: 画像利用に関して、やりがち&ご法度なミスは?
一番ありがちなのは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで見つけた画像をそのまま使ってしまうパターン。これは明らかにNGなのはわかりますよね。ネットで拾った画像を、「リンクと引用元さえ明示すれば問題にならない」と主張する人もいますが、著作権法における「引用」が認められるためには、一定の条件を満たさなければなりません。
その条件では、「公正な慣行」に合致し、報道や批評、研究などのための「正当な範囲内」で行われなければならず、それを超えた利用は許諾が必要です。商業目的での利用は、このような「引用」とは認められにくく、その場合は許諾が必要となります。
Amazonや楽天などの商品写真をダウンロードして、自社の商用サイトに掲載している業者がいますが、これもアウトでしょう。オークションサイトでは割りと公然と行われていますね。このような利用については、厳しくは取り締まられていないだけで、本来やってはダメだと思います。もちろん、規約の範囲でアフィリエイトのために商品画像を使うのであれば問題ありません。
アフィリエイトのプログラムの場合は、写真の権利者が、アフィリエイトツールにより利用可能な写真を提供しており、一般的には、規約を遵守している限りは、許諾があると言えるからです。したがって、アフィリエイトの場合は必ずアフィリエイトツールを使って写真を利用した方が安全です。サイトのページに掲載されていても、アフィリエイト用として利用する許可がない写真は、アフィリエイトツールでは使えない形になっている場合が多いです。
特徴的な構図の模倣もNGな場合がある
Q: 悪意がないままルール違反をしている人も少なくないのでは?
広告業界ではときどきある、「NGと知らずにやってしまっているミス」は、自分で写真を撮るときに構図を模倣してしまうことです。
特に芸術性の高い写真や著名な作家の写真の構図をマネて撮影することは、著作権侵害のクレームをうける可能性があります。平成13年に判決が出た、「スイカ事件」などが具体的な例としてあげられます。
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画像を引用して企業サイトで使いたい場合
Q: 商用利用は個人利用よりも注意が必要ですよね?
はい、個人使用と企業使用では事情が異なりまして、個人の意見や感想を述べる非営利の個人ブログの場合には、著作権法の「引用」に当たれば、許諾なく使えますし、引用の要件は満たしやすいと思います。しかし、企業サイトで利用する場合は商業利用の場合が多いでしょうし、「引用」の要件を満たすことは難しいでしょう。
著作権法的には、報道、批評、研究などの目的の記事で、自分の考えを補完するために必要な範囲内の引用をする分にはOKです。ただし、商業的に自分の商品を魅力的に宣伝するために引用する場合は、著作権法の引用にあたらないとしてNGとなってしまうことが多いでしょう。
引用に当たらなければ、一般的には著作権者の許諾を得なければなりません。また、写真の場合、被写体の権利が別途存在しますので、被写体の権利者からの許諾についても注意しなければなりませんね。
規約には面倒くさくても目を通すべし
Q: 商用サイトで画像を使うときの"あるある"事例は?
「規約を読まずに利用して、トラブルに発展してしまう」ですね。無料の画像サイトは多数見かけますが、規約で商用利用NGと謳っている場合もあります。
中には悪質なサイトも紛れ込んでいまして、正規の画像を他で仕入れて、自社サイトで自社商品のごとく見せて転売しているケース。信用の低いサイトと知らずに利用してしまい、クレームが入って対応で大わらわという話もありますね。
クリエイティブ・コモンズ だとしても、「自由に使ってOKだけど、商業利用はダメ」としている人もいれば、「どんな用途でもOK」としている人などさまざまです。ライセンスの種類と内容はよく確認してください。
規約には専門用語も登場するし、読んで理解するのは大変です。よく分からない場合は、提供企業の窓口に「こういう使い方をしたいんだけど、大丈夫?」と問い合わせた方が良いと思います。社内に法務部門があれば、規約を見せて相談するのもいいでしょう。
Embed 機能の開放
Q: ゲッティ イメージズ ジャパンの画像って、無料で使うことは...できないですかねぇ?
使い方によってはできるようになりましたよ。ゲッティ イメージズ ジャパンではEmbed機能(画像の埋め込み)を提供していまして、非営利目的の(ブログ、SNS、ウェブサイト)に対して無料での画像埋め込み機能を開放しています。
埋め込んだ際、自動的にゲッティ イメージズへのリンクが一緒に生成されますので、ECサイトや企業サイト等で商用利用したい場合には、リンク先からライセンスできるようになっています。あくまでも非営利に限って行っているサービスですが、ニュースにもなり、ブロガーの方々には好意的に受け止めていただけました。
ちなみに、オウンドメディアは企業メッセージを発信する場ですので、直接的に販売するサイトではないにせよ、ゲッティ イメージズとしては商業的利用と判断しており、残念ながらこの機能をお使いいただくことはできません。
自分で撮影するとき、注意すべきポイント
Q: 公共の場で撮影して他人の顔が入り込んだとか、どこまで気をつければいいんでしょう?
レストランで撮影して第三者が映ってしまった場合や、街の風景に車のナンバープレートが入り込んだ場合、モザイク処理すべきか無視してかまわないのか悩みますよね?
結論から言えば、「個人が特定できるならNG」だと考えたほうが無難でしょう。たとえば、後ろ姿は本人では「自分だ」と気づかなくても、家族や友人等の親しい人にはわかってしまうものです。知人に知らされて、驚いた本人から問い合わせが来るというパターンのクレームも見聞きします。
あと、持ち物が特徴的であるなど、あきらかに「○○○さんだ」と特定できる服装をしていた場合、顔がハッキリ写っていなくても、プライバシーなどの侵害となる可能性もあります。よって、「顔が見えなければ確実にOK」とは必ずしも言えない点に注意が必要です。
その人だけにフォーカスされた写真は、横顔だろうと後ろ姿だろうとわかる人にはわかります。ただし、町中の群衆のような数十人映っている中の1人であれば、問題にはなりにくいと思います。街の風景を切り取った写真で、群衆の中の人が誰だか見分けがつかないものであれば基本大丈夫です。
蛇足ですが、レストラン等の建築物内での無許可撮影はすべきではないです。建物にはオーナーさんがいて、オーナーは自分の敷地内をどのような条件で利用させるかを決めることができます。写真だけでは分からないと思っても、インテリアや食事でお店が特定され、クレームになる可能性があるので、企業サイトに使う場合はきちんと許可を取ってから撮影しましょう。
著作権は国によって解釈が異なる
Q: 屋外で風景撮影すると、どうしても建物や企業ロゴが描かれた看板が映りますが、これもNGになってしまう?
外での撮影の場合、建物や企業ロゴ等の看板が入ってしまっても、街の風景の一部として映り込むのは、基本的には心配ありません。ただし、クローズアップで特定の建物・デザイン等を撮影する場合、その利用方法によっては「著作権者の利益を不当に害する」として著作権侵害とされる可能性があります。また、企業のロゴをことさらにアップした結果、あたかもその会社と自社が関係あるかのように見えてしまった場合は、不正競争防止法などを根拠にクレームとなる可能性があります。
ちなみに、建築の著作権はベルヌ条約という基本情報を大枠として各国が守っています。これに準拠した上で各国で独自ルールがあるため、各国において制度が異なります。外での撮影の場合は、建築物などが写真に入ることが多いと思われますが、たとえばフランスは建築物の著作権は日本よりも厳密に保護されています。
たとえば、日本の場合、建築の著作物を写真に撮影する場合、通常は著作権の侵害となりませんが、フランスの場合にはこのような例外規定がありません。
著作権法は、利用された国の法律が適用されると考えられていますが、インターネット上に写真をアップロードする場合、フランスからも閲覧可能なので、フランスでも利用されていると解釈される可能性があります。したがって、フランスの写真をネットに上げるときは注意してください。
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昼と夜で異なるエッフェル塔の著作権
Q: 国によって権利が変わるだなんて、ややこしい話ですね...
昼と夜で権利が変わる場合もありますよ(笑)。昼のエッフェル塔はパブリックドメインなので写真を撮ってもOK。しかし夜のライトアップされたエッフェル塔は著作権が生きているので、勝手にサイトにアップしたり、SNSに投稿したりするのはフランスの著作権法に違反するのです。
どういうことかというと、建物としてのエッフェル塔は、フランスでの著作権の保護期間が満了しており、すでにパブリックドメインとなっています。つまり、誰でも自由に利用できます。ところが、ライトアップされたエッフェル塔は作家による「アート作品」という扱いなので、無断使用することがフランスでは著作権法違反に当たると解釈されるんです。
自分の権利を侵害された場合の対処法
Q: もしも自分が著作権侵害の被害者になってしまったら、どうすれば?
自分が著作権侵害の被害者になった場合、まずやるべきはサイト運営会社に連絡をとり、「誰の許可で使っているのですか?」と確認しましょう。外注先の製作会社が知らず知らずのうちに不正コピー等して使っている等、サイト運営者には悪意のないケースもあります。先方が誠実な場合にはきちんと対応してもらえることが多いですね。ただ、なかには悪質な組織もあるので、その場合は弁護士などの専門家に相談した方が良いと思います。
「撮影者の権利(著作権)」と「被写体の権利」はわけて考える
Q: 著作権と肖像権って複雑に絡み合っているんですね
広告会社の新人さんからよく受ける質問で、「この写真は商用利用してもよいか否か」という二択質問があります。この場合、「撮影者の権利(著作権)」と「被写体の権利」の2つにわかれます。そこを切りわけてお話します。
まず著作権ですが、信用できるサイトから購入すればクリアになります。となれば、考えるべきは「被写体の権利」。自分が撮影した写真であれば、著作権(撮影者 = 自分)は問題ないので、被写体のことを考えればいいということになります。
ストックフォトの場合は、例えば人物などは、「リリース」と呼ばれる被写体の権利者からの許諾がとられていることが多いので、リリースがとられているかどうか確認しましょう。
自分が撮影する場合には、相手の許可をあらかじめ取るのが理想です。ただ場合によってはそういう手続きをふめないことも多いと思いますので、そういう時には、曖昧な表現になってしまいますが、自分がされて嫌な使い方はやめたほうがいいでしょう。
企業がビジネスに使う画像に関して、タダで使えるものはかなり限られると思ったほうがいいです。いわゆる大手企業だと広報予算があり、予算を投じることができますが、予算がない企業の場合、担当者は仕方なく無料で写真を引っ張ってきてしまいがちです。
本来、対価が発生すべきサービスが無料という場合、何らかの問題・制限などがあると考えておいた方がよいでしょう。見極める知識と時間、労力があれば利用するのも良いですが、見落とした場合は大問題になるという結果になりかねません。画像代をケチって企業イメージダウンになってしまったら、かえってマズいでしょう。イメージアップのためには、ある程度の費用はかけるべきかなと思います。
オードリー・ヘップバーンとマリリン・モンローで異なる肖像権
Q: 著作者の死後50年で著作権は消滅しますが、肖像権は何年?
余談ですが、肖像権に関しても国によって法律が違います。アメリカだと、州で異なることもありますね。たとえば、オードリー・ヘップバーンとマリリン・モンローは広告によく使われますよね?ニューヨーク州では、被写体の人物が亡くなると肖像権はなくなります。よって、ニューヨーク州出身のモンローの肖像権は切れています。
しかし、ヘップバーンの肖像権はまだ残っています。亡くなっても肖像権がなくならない国や州もあるからです。ちなみに、ジミ・ヘンドリックス、エルビス・プレスリーも肖像権が残っています。
日本の場合は、肖像権は本人自身の権利なので本人が亡くなった場合、その本人についての肖像権を考える必要はありません。しかし、遺族固有の権利が認められていますので、遺族が精神的苦痛を感じるような使い方はできません。そのような使い方をしてしまうと、遺族から遺族自身が被った精神的苦痛の慰謝料を請求される場合があります。
過去の裁判例では、亡くなった人の写真が利用されたことに対し、遺族が「そのような画像を使われたことで精神的苦痛を受けた」と申し立て、勝った例もあります。
いかがでしたか?画像の権利や扱い方ってややっこしくって、面倒に感じてしまうものですが、正しい知識を得れば少しは不安が解消されたのではないでしょうか。
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(2015年5月12日「Six Apart ブログ」より転載)