大阪府「ビルつくります!」大阪市「じゃあ、俺もつくるわ!」市民「」-大阪都構想、二重行政を読み解く-

大阪都構想の争点を理解するためには、「基礎自治体(区市町村)」と「広域自治体(都道府県)」の役割分担を理解しておかなければなりません。

本日は日帰りで急きょ大阪へ。

大阪維新の会の天下分け目の超決戦「大阪都構想」住民投票可決のため、

微力ながらチラシ配り&ポスティングのボランティアに参戦して参りました。

私は維新の党の党員でもなんでもありませんが、

この大阪都構想は強く支持しています。大阪のみならず、これは今後我が国の

地方自治や地域の在り方、さらには政治そのものを変える可能性があると考えています。

なぜなら大阪都構想は、おそらく憲政史上初めて地方自治体が、

地方自治体の意思によって、地方自治体側からの発案で行う改革になるからです。

橋下 徹 (著), 堺屋 太一 (著)

2011年にこの本を読んで衝撃を受けて以来、維新の党ができる遥か前から、

私はこの改革に注目し、期待してきたのです。そういう意味では筋金入り?!

現職政治家として、現存する唯一の「都」の地方議員としての立場から、

今日から3回に渡ってこの大阪都構想についての解説をしていきたいと思います。

投票日は、5月17日(日)! 大阪市の皆さま、ぜひとも賛成票を!

さて、まず大阪都構想の争点を理解するためには、

「基礎自治体(区市町村)」と「広域自治体(都道府県)」の役割分担

理解しておかなければなりません。

私は東京都という広域自治体の議員ですが、

「東京都って一体、何をしているの?」

「え、それって東京都の仕事じゃないの?(あるいはその逆)」

「区市町村と東京都のやってることの違いがよくわからない...」

という質問は非常に多く受けます。

いい機会なので、ここで簡単に整理しておきます。

(以下画像はすべて、大阪都構想のHPより)

行政の仕事にはざっくり言って、広い範囲で行った方がいいことと、そうでないことがあります。

利用者が広範囲に渡り、その立地する基礎自治体の外からも多くの利用者が存在することが

見込まれる行政サービスは、広域自治体が担った方が効率が良いわけです。

その最たるものが道路や上下水道、建築物などのインフラですね。

道路や上下水道などは自治体毎に「ブチ!」っと切ることはできませんし、

こうしたものはなるべく大きな範囲で計画・建設した方が合理的です。

またコンサートホールや図書館、商業施設などの「ハコモノ」も、

利用者が近隣住民だけとは限りません。越境してくる利用者を管理するためには、

広範囲に目が届く広域自治体が運営するべきと考えられます。

一方で小中学校や保育所など、「通える範囲」が決まっているサービスは、

住民との距離が近い基礎自治体の担う職責となります。逆に言えば高校・大学になると、

長距離を通うことが可能になるために広域自治体の業務になるわけです。

住民票の発行や保健所業務など、これも当然利用者は近隣住民だけです。

もちろん複雑なことを考えれば色々とあるのですが、基礎自治体と広域自治体は

「利用者の存在範囲」によって行政サービスを分担する、と考えるとわかりやすいと思います。

ここに大阪の場合、「政令指定都市」という概念が加わります。

社会の授業でやったと思いますが、我が国の法律では人口50万人以上かつ

一定の条件を満たす都市は、政令市としての指定を受けることができます。

政令指定都市は、

「大都市行政の合理的、効率的な運営と市民福祉の増進を図るため」

として、広域自治体と同等の権能を持つことが地方自治法によって規定されています。

つまり、基礎自治体と広域自治体の両方の仕事ができちゃうスーパー都市なんですね、政令市は。

これは人口が多くポテンシャルがある都市では「距離・範囲」という概念を取っ払い、

単独で権限を集中させて競争力を高めよう!という狙いがあったわけです。

ところがこれは、大阪では思わぬ副作用をもたらしました。

政令指定都市とそれが存在する広域自治体が良好な関係にあれば、

「ダブルエンジン」として強力に行政サービスを推し進めていくことができるかもしれません。

不幸なことに大阪府と大阪市は「ライバル関係」になってしまい、

双方が似たような機能を持つ行政サービスを二重に展開します。

わかりやすいのはこうした「ハコモノ」で、

大阪市内に府立と市立の施設が併存する状態が多発してしまいました。

また逆に大阪市の合意がなければ、大阪府は府道を市内に通せない、なんて事態も発生します。

広域自治体と政令指定都市は同等の権能を持つため、

関係がこじれるとリーダーシップを取ることができません。

人口880万程度の大阪府はその内側に、270万人の人口を抱える

独立思考体を抱え込んでしまい、機能不全に陥ってしまったのです。

府内で「独立愚連隊」となってしまった大阪市の政令指定都市としての権限を返上し、

5つの区に分けて広域自治体「大阪都」の下部組織として再編。

司令塔を一本化して二重行政の解消しよう!というのが、大阪都構想です。

私はこの構想は、大阪にとって唯一の解決策であると思います。

反対派の人々は

「現状のままでも大阪の改革はできる」

「少しずつ改善をしていけばいい」

と主張しますが、それはおそらく不可能です。

なぜなら行政には「無謬性」という考え方が根強くあるからです。

「行政(官僚)の無謬性」

(無謬:判断や理論に間違いがないこと)

とは、「行政組織や官僚・公務員は間違いを犯さない」という不思議な『原則論』です。

はっきり言って根拠はないのですが、この国では長くに渡ってこの『原則論』が横たわり、

行政機構の考え方の根底を形成してきました。

説明はややこしいのですが、そのロジックは以下の通りです。

行政は間違いを認めるわけにはいかない。

なぜならば行政が間違いを認めてしまえば、これまで過去にやってきた

関連の行政サービスすべてが間違っていたことになり、取り返しの付かない事態になる。

ゆえに、行政は間違いを犯してはいけないし、

間違いを犯してはいけない行政が行うことはすべて正しいのダっ!

...読んでて「...はぁぁ?!」ってなる方もいるかもしれませんし、

私も書いてて頭が痛くなってくるのですが、本当にそう思っているのだから仕方ありません。

実際、彼らの無謬性を前提とした議会答弁はこの世界に数多く存在しますし、

国民や市民も「公務員のいうことだから間違いないやろ」って感じる人は多いと思います。

なので、現存のシステムを根本から変えてあげない限り、

「間違っていたので変更しましょう」という決断は彼らには論理的に不可能なんですね。

これが、大阪都構想の根っこのポイントになります。

そして根本からシステムを変える決断をできるのは政治家・議会、あるいは民意であり、

その行方は今回、直接的な住民投票に委ねられたというわけです。

「これまでの大阪市のやり方は間違っていなかった。至らぬところは少しずつ改善していこう」

「いや、大阪市は間違っていた。困難を乗り越えて、新しい可能性を!」

ドラスティックな変化を拒否し、ゆるやかな停滞を選ぶのか。

リスクを取りながら、新たな可能性に突き進むのか。

大阪の未来はいま、まさに岐路に立っています。

それでは次回は

「なぜ、特別区にわざわざ分けなければいけないのか?」

「東京都の23区だって、決して上手く行っていない! 参考にはならない!」

という意見について、詳しく反証していきたいと思います。

おお、都議会議員が東京都を語るなんて、ソレっぽいじゃないですか!?

長くなりましたが、それでは、また明日。

(2015年5月14日「おときた駿公式ブログ」より転載)

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