標準体重でも、痩せなきゃいけない気がする。そんなあなたに知って欲しいこと。

あなたは、「痩せたね」と言われたら嬉しいですか?

「ただ痩せろなんていう人は、気にしないでいい」

あなたは、「痩せたね」と言われたら嬉しいですか?

母は、私が幼い頃から今に至るまで、私が痩せるとすごく心配する。

そして良く食べ良く寝て、良く運動しているととても嬉しそうだ。

母は私に小さい頃から、「ただ痩せろなんて言ってくる男の人は、気にしないでいい。あなたが心も身体も満たされていることを喜んでくれる人を大切にしなさい」とよく言った。

大好きな人を大切にするということは、その人が心も身体も満たされていることを一緒に喜ぶこと。

そう思って生きてきた。

荘司梢

なんでかわからないけど、痩せなきゃいけない気がする。

中学高校くらいになると、周りの女の子の何人かは、痩せるために食事を抜いたり、減らしたりするようになった。

中には食事を抜きすぎて、生理が止まってしまったり、病院で点滴を受けなければいけない人もいた。ペットボトルの蓋を開けられないくらい衰弱して。

違和感を覚えながらも、かわいくて綺麗なモデルさんのスリーサイズや体重が書かれた雑誌を見ると、なんだか自分も痩せなければいけないような気持ちになったことを覚えている。

ティーン向け雑誌に、体重の減らし方を紹介するダイエット特集が掲載されることは、今でこそ普通じゃないと思うけれど、その時は、みんなそうするものなのかもしれないと思った。

保健体育で習ったBMIの計算式の、健康の水準である「標準」は結構太っているんだな、と思ったことを覚えている。

そのときの私は、痩せていることは美しいことだと信じ始めていたように思う。

「あなたに似合っていてすごく素敵」

高校の時にオーストラリアに引っ越すと、たくさんの違った人種・バックグラウンドの人と机を並べて勉強するようになった。

背丈も、サイズも、身体や顔の形も、実に様々な人たち。

お互いに、よく「美しい(beautiful)」という言葉で相手を褒める人たち。

滑らかな褐色の肌には鮮やかなオレンジが良く映えるし、パンチパーマのようなくるくるとした髪にはドレッドやビーズがおしゃれ。

グラマラスな身体には身体のラインがよく見えるロング丈のワンピースがセクシーだし、スレンダーな身体には直線的なパンツが素敵。

みんな相手のチャーミングな点を見つけて、その個性を引き立てるから素敵だね、と褒めあっていた。

美しさには、それこそ十人十色、様々な形があって、「痩せているから綺麗」なんていう概念はなかった。

「あなたに似合っていて、すごく素敵だね」

みんなが当たり前のようにそう言い合った。

私は、後ろめたさを感じていた自分の少し大きなおしりや、ちょっとムチッとした太ももが大好きになった。

茶色の目も、湿気でふわふわしてしまう髪も、大きいほっぺも、全部私の一部で、それがとても嬉しくなった。

みんながお互いの特別で素敵な個性を見つけ合って、素敵だと喜び合うことは、毎日を彩り、とても幸せなものにしてくれる。

それに、みんな食事を抜くんじゃなくて、ジムに行ったり走ったりするのが大好きだった。

美容に気を使う人たちは、体重計の数字を追うのではなく、自分の身体を大切にするために、必要な栄養素を摂れるように考えて食べて、運動していた。

私は週に2回、毎回10キロずつ走るようになり、ジムにも行くようになった。栄養バランスを考えて自炊する。

この習慣を守ることで、私は自分の心と身体が、健康で、満たされていくことが実感できる。

だから、今でも続けている。

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「痩せて綺麗になった」?

社会人になり数年し、日本に戻って数年経ったある時、大好きだったおばあちゃんが亡くなった。

おばあちゃんっ子だった私は何もできなくなり、本当に廃人のようだった。

悲しくて苦しくて、ご飯が食べられず、外にも出られなかった。

ようやく人に会えるくらいまでになった私に、ある男の人がこう言った。

「痩せて綺麗になったね」

心が凍った。

それからその人に会うことは二度となかった。

どうしたらそんなに心無い言葉が言えるのだろう。

私を励ましたつもりだったのだろうけれど。

またある時、付き合っていた人に「痩せようか」というニュアンスのことを言われたことがあった。

その人の基準では、私は「痩せ」足りなかったのかもしれない。

もちろん、好きな人にとって、いつまでも魅力的でいたいと思う。それに、太りすぎだとしたら健康に良くないし、改善する必要がある。でも、相手に好いてもらうために、自分の健康を蔑ろにしないといけないのならば、その関係性は、きっと結局、お互いを大切にし合えるものにはならないと思う。

ある調査によると、働く女性の摂取エネルギーは、食糧難だった終戦直後を下回っている。それが「普通」なことこそ恐ろしいと思う。栄養不足は頭痛や冷え性、疲れを招き、さらに、将来の妊娠や出産リスクなどにもつながることだってあるとその記事は伝えている。そんなことを知っていたら、大切な人に、ファッション感覚で「痩せて」なんて言えるだろうか。

だから私は、「痩せるつもりはないよ」と答えた。「私は太っていないから」

きっと、大切な人が心身ともに満たされていることがとても幸せなことや、特別で素敵な個性をお互い見つけ合い、喜び合うのが心から嬉しいことを知らないで生きてきたら、そんな風に言えなかったかもしれない。

表面的にしか知らない人たちの「痩せて綺麗になったね」は、きっとその人たちなりに褒め言葉として言ってくれているのだと理解する。だから私は「ありがとう」と言って受け取る。

でも、大切な人たちにだけは、わかっていてほしい。

付き合っていたその彼は、びっくりしたかな。

でも、言いたかったことをわかってくれたんじゃないかな、と思う。

満たされている=健康=幸せ!

私は、ご飯を食べることが大好きだ。よく寝ることも、運動することも。

母は、小さいときからずっと、私が心も身体満たされていることを心から喜んだ。

満たされているということは、よく食べ、よく眠り、よく運動してよく笑い、日々に喜びを感じて生きているということ。

それは、健康だということ。

自分の大切な人が満たされているのは、心から嬉しい。

だから私は、これからも「痩せて綺麗になったね」という褒め言葉は使わない。

大切な人たちと、心身ともに満たされていることを一緒に喜び合って生きていく。

荘司梢

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