「ゲイは不幸」という図式を壊したくて、根気強く母と向き合い続けた(シリーズ:隣人たち)

19歳で母にゲイだと知られ、「幸せになれない」と言われました。

性的少数者(LGBT)のカップルを公的に認める「パートナーシップ制度」が6月、札幌市で始まる。全国各地の自治体でも同様の仕組みがつくられ、LGBTへの理解や支援が広がっている。「13人に1人」とされるLGBT。制度開始を前に、私たちのすぐそばにいる「隣人」たちの素顔を紹介する。

●飲食店経営・桑木昭嗣さん(40)=札幌市中央区

迷いや悩みがある時に立ち寄る公園で、ベンチに座る桑木昭嗣さん=札幌市手稲区

高校1年まで彼女がいました。みんなから「オカマ」とからかわれるのが嫌で、本当の自分を隠したかったんだと思います。

当時のバラエティー番組で、同性愛者は笑いの対象でした。でもそのバラエティー番組をきっかけに、札幌にもゲイのコミュニティーがあることを知りました。そこで出会ったのは、自分のセクシュアリティーを前向きにとらえる同年代の人たち。「恋愛対象が男だった、それだけじゃない」と言われ、楽になったのを覚えています。「ゲイであることは悪いことじゃない」と自信が持てるようになりました。

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高校2年の下校途中、仲良しの友人たちにカミングアウトしました。自分を偽っているのが嫌で、受け入れられなければ学校をやめようと思っていました。友人たちの反応は、「もっと早く言ってくれればよかったのに」。本当にうれしかった。

19歳で母にゲイだと知られ、「幸せになれない」と言われました。理由は「奥さんをもらって子どもを授かるのが普通の幸せ」だから。今までにない価値観にいきなり直面し、母は受け入れられなかったんだと思います。

「ゲイは不幸」という図式を壊したくて、ゲイサークルの活動や行政の動きを伝えるなど、根気強く母と向き合いました。2年後に母が入院してお見舞いに行った時、「自分の幸せの価値観を押しつけていた」と謝られました。逃げなくてよかったと思いました。

母に幸せな姿を見せなければ、プライドを持って生きる姿を見せなければと、使命感を持って活動するようになりました。その一つが、1996年から2013年まで16回開いた「レインボーマーチ札幌」です。94年に東京の「レインボーマーチ」に参加し、LGBTがより生きづらいと言われる地方都市でこそやるべきだと思ったんです。7回目からは、上田文雄・札幌市長(当時)も参加してくれました。こうした活動が今回のパートナーシップ制度につながったと信じたいです。

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社会はようやく、LGBTが人権の問題だと気づき始めました。社会が変わってきたのだから、当事者も変わらなきゃいけないと思います。一人で悩まず、あなたを肯定してくれる人はたくさんいるのだと知って、自分の幸せを自分の手でつかんでほしいです。

(2017年5月10日「朝日新聞デジタル」より転載)