トランプが地球温暖化問題を無視しようとも、市民は立ち上がる

気候変動の影響は世界中で人々の生活に深刻な影響を与えているが、それらの脅威にもっともさらされているのは、不釣り合いにも、一番脆弱な国々の人々である。

気候変動問題に関する国際枠組み「パリ協定」からの米国の脱退に関する憶測が飛び交う中、世界45か国であらゆる市民が気候変動防止のために、化石燃料への投資撤退を呼びかけるグローバル・ダイベストメント週間が5月5日から14日までの10日間にわたり行われている。

グローバル・ダイベストメント週間のキーワードは「気候変動の影響」だ。世界気象機関(WMO)は、2016年の世界の気温について、1880年代に観測を初めて以来、最も暑い年だったと発表している。世界の広い範囲で、記録的な高温や大規模な洪水・干ばつ、そしてより強大で頻繁する台風などの数々の異常気象が2016年に観測された。

気候変動の影響は世界中で人々の生活に深刻な影響を与えているが、それらの脅威にもっともさらされているのは、不釣り合いにも、一番脆弱な国々の人々である。このような影響は、科学界が予想したスピードより速く進んでおり、問題は深刻化する一方だ。

しかし、世界各地で気候変動問題を軽視する勢力が台頭している。米国の「パリ協定」脱退も大きな問題だが、前政権が導入を進めた気候変動対策を目的とする規制を見直し、国内の化石燃料産業の振興を図るような大統領令が次々と署名されていることは由々しき事態である。その中で打撃的であったのは、トランプ大統領が就任してたった4日後に発せられた、ダコタ・アクセスやキーストーンXL石油パイプライン事業の建設再開を承認する大統領令だ。

一方で、米国の人々や企業が強く気候変動対策を求めていることは間違いない。先月29日に米国首都ワシントンで行われた「ピープルズ・クライメート・マーチ(市民による気候のための行進)」には20万人以上の人々が集まったのである。

このような時勢であるからこそ、気候変動の問題の根源である化石燃料企業への資金提供を止め、より持続可能な社会実現に貢献している事業へお金の流れを変えるダイベストメント運動は今まで以上に大切になってきているのだ。

北米で始まり、欧州、続いてオーストラリアへと広がったこのダイベストメントの動きは、アジア、ラテンアメリカ、アフリカ各地においてとても早い広がり見せている。すでに世界76ヶ国の、710もの企業や団体が化石燃料投資のダイベストメント(投資撤退)を宣言していて、 その運用資産額は、総額5.5兆米ドル(約615兆円)を大幅に上回る。

この世界的なダイべスメント運動は「炭素予算」リスクという言葉をイングランド中央銀行総裁や世界銀行総裁などの経済界トップに認識させるほど威力を増している。

ダイベストメント運動において、日本を含む東アジアは最も重要な地域だ。東アジアには地域社会や生態系への損害や健康被害をおよぼす化石燃料の採掘場や石炭火力発電所が多く存在し、増加する一方である。それらへの巨額な資金提供を行っているのは日本の公的機関や民間銀行である。

その資金提供というのは東アジアだけにとどまらず、世界中の様々な化石燃料関連事業にも及んでいる。その一例が米国で大きな社会問題となった、ダコタ・アクセス・パイプライン建設事業への邦銀の巨額な投融資である。この総工費約38億ドルのプロジェクトには、世界の大手金融機関17行が資金提供を行っていて、そのうち総額費用の約半分もの金額を出資しているのが、日本の大手金融機関であった。邦銀がこのような環境破壊や人権侵害を及ぼす化石燃料関連プロジェクトへの投融資を続けることで、脱炭素社会の実現を目指し積極的に取り組む市民社会や機関投資家の抗議が強まるだろう。

最近では、北米大陸における4つの石油・オイルサンド・パイプライン建設プロジェクトへの投融資を行っている銀行のダイベストメントを呼びかけるキャンペーンが121の米国とカナダの先住民族グループによって開始された。銀行のターゲットの中には、日本の三大メガバンクの名前が連なっている。日本の民間銀行や公的機関による化石燃料支援への反対の声は事業リスクとともにどんどん増してきているのである。

ダイベストメント週間中の5月13から14日に、日本では国際環境NGO350.ORGの日本支部である350.ORG Japanが持続不可能な化石燃料や原発関連企業にお金を流していない「地球にやさしい銀行」の選択を促すMy Bank My Future キャンペーンを広めるためのイベント「Earth Choice Festa」を都内で開催する。日本初のダイベストメント・キャンペーンである、My Bank My Futureキャンペーンは銀行に消費者の声を届けることで、環境に配慮した投資や融資を行う銀行を増やすことを目的としたものだ。この1か月間ですでに600人近くの市民が「地球にやさしい銀行」を選びたいという宣言をしている。

気候変動問題を否定する権威の影響力が増そうとしても、人々の地球環境を守りたいという声を沈静することはできないのだ。

関連リンク:

グローバル・ダイベストメント週間2017の公式サイト: jp.globaldivestmentmobilisation.org/

5月13−14日に東京で開催する「Earth Choice Festa」のイベントページ:act.350.org/event/gdd2017/13538/

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