9月に国連総会特別サミットで採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)※を、日本の地方の目線から考えてみよう、そんなフォーラムが国連総会から2か月足らずの11月21日、愛媛県松山市から南へ40km、人口約17,000人の内子町で開催された。
参加者は登壇者も入れて35人ほどのこじんまりとした会となったが、内子町長、環境省、国際的な政策に関わるNGO、地域づくりの現場に関わる内子役場の職員、四国他県のコンサルタントなどが加わり、グローバルとローカル、多様な視点を行き来しながら、持続可能な地域のあり方を考えるユニークな機会となった。
内子町は、約40年前からの歴史的町並み保存活動で知られる町だが、
エコロジータウンの推進
グリーンツーリズム運動
農産物直売所の開設
持続可能な観光振興
国際交流
など、多くの積極的な取り組みを行っている。一方で、少子高齢化による人口の急減、農林業の衰退などの深刻な課題を抱えており、「稼ぐ力のある」「住み続けられる」まちづくりを目指し、「町並み、村並み、山並みが美しい持続的に発展するまち」を総合計画の目標に掲げている。
この総合計画は、各自治会が10年後の夢や目標、地域づくりの方向性を明らかにするために策定した「地域づくり計画書」が基礎となっている。行政主導と住民主体との協働による「住民一人一人が役割を担うまちづくり」も内子町が目指す町の姿だ。
SDGsは開発途上国のみならず先進国も対象とされるグローバル目標であるが、これから日本でも実施の体制を整え、広く国内への普及や、地方自治体の巻き込みが必要となってくる。
日本の地方にとって、
SDGsの目標は地域課題とどのように関わり、どのような意義を持つのか。
人口減少の流れを止めることができるのか。
地域活性化や持続可能な環境と暮らしにつなげることは出来るのか。
地方から東京や全国に向けて発信できることは何か。
そんな問いを持って臨んだフォーラムであったが、内子町の歴史や風土に培われてきた伝統や文化を大切にし、誇りをもって人々が暮らすまちづくりと、SDGsが掲げる社会、経済、環境のバランスが取れた、すべての人々が尊厳を持って暮らせる社会が同じ方向性にあることは本フォーラムで共有できたと考える。
ある登壇者からは、「私たちの方がSDGsより先行しているのではないか」といった発言もあった。
一方で、「グローバルな目標」としてのSDGsはまだ地方の暮らしとは遠い存在で、壮大で理想主義的なSDGsを地域で語ることの違和感や戸惑いも見えたように思う。今後地方レベルでSDGsを活かすには、どのように位置づけることが望ましいのか、明確な答えはまだ出ていない。
フォーラムでは、内子町でも見られる行政と住民の対話不足、理念や課題の共有不足、「自分事」として捉える意識不足、より積極的な戦略の必要性などの課題が挙げられた。SDGsのようなすべての人が共有する上位目標があることで、行政内、行政と自治会、あるいは住民間で対話や学びのプロセスを促し、より幅広い視野で課題を捉えたり、他国・多地域の事例に学び、さらなる持続可能な取り組みにつなげることができるのではないだろうか。
SDGsの採択後、世界各国でSDGsをどう実施していくかという議論が活発化している。日本でも、NGOや研究者、民間セクターの間では高い関心を持ってマルチステークホルダーでの議論や対話が進んでいる。しかし、政府の省庁横断的な動きはまだ鈍く、各セクターからの働きかけによる議論の活性化が必要である。
SDGsによって、これまでにあまり接点のなかったセクターやそれぞれにおける課題、そして既存の国内施策は新たにそのつながりが見出され、異なるセクターやステークホルダー間の協働の機会は無限に広がる可能性を秘めている。
内子町のような先進的な取り組みをしている地域が、その取り組みをSDGsに置き換えることで国内外に広く共有し、ギャップがあるところはSDGsを取り入れることで改善していく、こうした各地の活動の積み重ねで持続可能な社会や経済、環境のあり方の議論が世界中で活発化する-そんな期待を胸に、内子町の豊かな水に育まれた地酒でフォーラム参加者一同は乾杯した。
※「持続可能な開発目標(SDGs)」:2016年から2030年までの15年間に、日本を含む世界の全ての国々が達成すべき目標。貧困・格差、気候変動、持続可能な環境、市民参加などの課題について17の目標が定められている。「誰一人取り残さない」がキャッチフレーズになっている。
アドボカシーマネージャー
堀江由美子