エネルギー問題を解決するカギは水の中に。R水素(再生可能水素)の可能性

2015年は「水素社会元年」と言われています。水素がどこから来るか、みなさんは考えたことがありますか。

今年2015年はトヨタによる燃料電池車の発表からはじまり、水素ステーションも普及に向け大きく動き出したことで、「水素社会元年」と言われています。

水素がどこから来るか、みなさんは考えたことがありますか。

宇宙に存在する元素の73%を占めると言われる水素は、地球上には単体で存在しないので、何らかの方法で取り出す必要があります。「水素社会元年」の名の下にいま進められている水素の多くは、実は化石燃料から取り出す水素なのです。環境への負荷が小さいイメージで語られますが、化石燃料から取り出す水素は製造過程において二酸化炭素が発生します。それに対し、私たちR水素ネットワークが推進するのが、水の中にある水素を再生可能エネルギーで取り出す、持続可能なエネルギーのかたち「R水素(再生可能水素)」です。

水と、その土地に合った再生可能エネルギーさえあれば、地域でエネルギーをつくって、貯めて、使うという循環型のサイクルをつくることができるR水素は、これまで理想であって、未来の話だと言われてきました。しかしR水素は未来ではなく、すでにある技術で実現できます。

©R水素ネットワーク

日本では埼玉県や川崎市で事例があり、オーストラリアではビル一棟をまるごとまかなうR水素ビルもあったりするのですが、今回はハワイの「R水素牧場」を紹介します。

ハワイ島の牧場「ヘンク・クランチ」の牧場主は、ヘンク・B・ロジャーズ氏。世界的に有名なコンピューターゲーム「テトリス」の著作権者です。ヘンク氏はいま、「ブルー・プラネット・ファウンデーション」という非営利団体を設立し、環境問題の解決に取り組んでいます。

ヘンク氏の牧場にある研究施設の屋根に付けられた太陽光パネルは85キロワット分。水の電気分解装置は約65%の効率です。太陽光で発電した電気はまずそのまま使い、余った電気で水を電気分解して、一日に1〜4キログラムの水素をつくっています。貯蔵できる水素は最大25キログラム。つくられた水素は、別荘やゲストハウスの電力、燃料電池自動車・フォークリフトの燃料として使われています。また水素は燃料電池を使って発電するだけでなく、ガスのようにそのまま燃やして使うこともできるので、送風機のエンジンや料理用のバーナーにも使われます。

 

水素が貯められているタンクと、水素を充填している燃料電池フォークリフト©Blue Planet Foundation

この事例に見られるような、R水素により地域単位で再生可能エネルギーをつくって、貯めて、使う循環型コミュニティが広まることで、世界は大きく変わります。

2015年に国連加盟国によって合意がなされた「持続的な開発目標(SDGs)」では、あらゆる形態の貧困に終止符を打つことや、すべての人への学習の機会促進すること、すべての人が持続可能なエネルギーにアクセスできること、そして気候変動とその影響に立ち向かうことなどが目標とされています。これらの目標を達成するための解決策のひとつとしても、水と身近な自然の力でエネルギーのすべてをまかない、水も空気も汚すことがないR水素は有望です。

この記事では伝えきれないR水素についての基本的な知識や事例の数々をまとめたブックレット「R水素 〜再生可能エネルギーと水による地域循環型エネルギーのかたち」を出版しました。

R水素公式ブックレット©R水素ネットワーク

ぜひ一人でも多くの人に読んでいただき、来たる2016年を「R水素社会元年」にする。その意気込みで皆さまと手を取り合い、大きなムーブメントにしていきたいと思います。

代表

江原春義

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