中長距離S字型で短距離I字型 最適クロール泳法解明

筑波大学、東京工業大学、シドニー大学などの研究グループによる流体計測解析技術を用いた研究で明らかになった。

競泳自由形の中長距離は曲線的(S字型)、短距離は直線的(I字型)に腕を動かした方が効率的であることが、筑波大学、東京工業大学、シドニー大学などの研究グループによる流体計測解析技術を用いた研究で明らかになった。自由形の腕のかきかたについてはS字かI字かという論争があり、決着がついていない。今回の研究成果を基に、体格など水泳選手の個人差に応じた最適な泳法の解明に取り組みたい、と研究者たちは言っている。

高木英樹(たかぎ ひでき)筑波大学大学院人間総合科学研究科教授、中島求(なかじま もとむ)東京工業大学大学院情報理工学研究科教授らは、人体の圧力分布計測やロボットを用いたシミュレーション研究によって、最適な泳法の解明を試みた。

この結果、最も少ない身体発揮パワーで効率よく推進力が得られる泳ぎ方は、肘を曲げて指先が曲線を描く(S字ストローク)泳法であることが分かった。一方、最も速度が出るのは肘をあまり曲げずに、指先が直線的に移動する(I字ストローク)泳法であることも分かった。この違いは、水をかく手の周りにできる渦の違いからも裏付けられた。本来は肘を曲げて、S字でかいた方が効率は良い。しかし、短距離の場合、ストローク頻度が高まると肩まわりの筋力特性が制限因子となって、曲線的にかくことができなくなり、腕の回転数を上げるためにまっすぐかくようになる、と研究者たちは推察している。

研究結果は、400メートル以上の自由形中長距離種目では、S字を描くように水をかいて好成績を上げる選手が多く、50~100メートルの自由形短距離種目では、ほぼまっすぐにかくI字ストロークを採用する選手が多いという実態とも合っている。また、地面を蹴る力が走力にもろに影響する陸上トラック競技では、体格、パワーに優れる海外の大型選手が有利だが、水泳では日本人選手が好成績を収めている。これも、「水をつかむ」技術が優れていれば体格、パワーに優れる海外の大型選手にも勝てるという理由で説明できる、という。

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