研究倫理で『科学者の心得』暫定版公表

科学をめぐるさまざまな不正が相次ぐなか、研究倫理プログラムの基軸となる待望の本がまとまった。

科学をめぐるさまざまな不正が相次ぐなか、研究倫理プログラムの基軸となる待望の本がまとまった。日本学術振興会「科学の健全な発展のために」編集委員会(委員長・浅島誠東京大学名誉教授)が作成し、その暫定版を11月28日に公表した。実験ノートの付け方や、研究費の適正な使い方などのエッセンスを書いており、科学者が心得ておくべき基本を示した。規定集とは異なる「研究のバイブル」のような内容である。来年3月には、研究現場で活用できるよう出版する。また、英語版も出して、研究不正を繰り返さない姿勢を世界に発信する。

編集委員会は、研究倫理の専門家や法学者らも含め13人が加わり、日本学術会議や科学技術振興機構、各大学の有識者らが協力し、文部科学省が助言した。海外での共同シンポジウムの議論や各国の取り組みも参考にした。日本のアカデミアが挙げて作成した形になった。「科学の発展には研究の自由が大切」の視点を貫きつつ、研究倫理の実践論を提示した。

第1章「責任ある研究活動とは」から第8章「社会の発展のために」まで115ページからなり、研究計画の立て方、研究の進め方、成果の発表、研究費の適切な使用などを記述している。ラボノートの記載事項や方法、管理、論文の著者になる資格や謝辞の必要性まで丁寧に示している。その通りに実施すれば、現在の慣行はかなり見直されることになる。研究不正の定義や、ねつ造、改ざん、盗用を例示して、出典の明示も求め、科学者の責任の自覚を促している。対象は自然科学だけでなく、人文学や社会科学まで幅広く含めた。

全国の大学院や研究現場で、研究倫理教育の必要性が指摘され、来年度からカリキュラムに取り入れる動きが強まっている。各大学から教材にするためにも「早く内容を知りたい」という要求が寄せられて、その意見や批判を聴く意味も込めて、暫定版の公表に踏み切った。誰でも自由にダウンロードできる。暫定版に絵やイラスト、図を加えて読みやすくして、索引や資料も付けて出版する。入手しやすいようにできる限り安価にする。科学者が普段から机の上に置いて「迷ったら該当部分をすぐ読めるように」と思いを込めた。

作成の中心になった浅島誠さんは「規制をどんどん厳しくしてがんじがらめにすれば、研究は駄目になる。規則集ではなく、いかによい研究ができるか、科学の健全な発展を願って作った。基本的なルールを知って、研究を伸び伸びと自由で、誠実に進めることが重要だ。津々浦々の研究現場で広く使ってもらいたい。大学院生ら若手の研究者だけでなく、教授や准教授ら指導者もぜひ読んでほしい。研究倫理プログラムとして、世界的に見ても,新しい切り口を示せたと思っており、英語版も出すことにした」と意義を強調している。

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日本学術振興会 プレスリリース

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