原子番号103の元素「ローレンシウム」の一番外側にある電子が極めて緩く結合していることを、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構などの国際共同研究チームが初めて確かめた。この論文を掲載した英科学誌ネイチャー最新号は、ローレンシウムのイオン化エネルギーが横に並んだ元素群に比べ低いことを示す元素周期律表の立体的イラストを表紙に掲げ、研究成果の意義を強調している。
この研究成果は、日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センターの重元素核科学研究グループ 佐藤哲也(さとう てつや)研究員、浅井雅人(あさい まさと)研究主幹、塚田和明(つかだ かずあき)研究主幹、永目諭一郎(ながめ ゆいちろう)副センター長らの研究グループが、ドイツ・マインツ大学、欧州合同原子核研究所(CERN)などと行った国際共同研究によって得られた。実験に用いられたのは、同機構原子力科学研究所のタンデム加速器実験施設。タンデム加速器で合成された半減期わずか27秒の短寿命同位体ローレンシウム256のイオン化・質量分離に成功、このデータからローレンシウムのイオン化エネルギーの値を初めて導き出した。
ローレンシウムは、アクチノイドと呼ばれる原子番号89から103までの元素群の中で最も重い元素。アクチノイドは、米国の化学者、グレン・シーボーグが命名者で、属する元素発見のほとんどにシーボーグが関わっている。ローレンシウムの半減期は非常に短いため、化学的・物理的性質は分からないことが多い。現在では10を超す原子番号104以上の元素が国際純正・応用化学連合(IUPAC)によって認められているが、ローレンシウムは長い間、周期律表の最後の元素とされていた。
国際共同研究チームの研究で今回明らかになったのは、最も外側の電子がとても緩く結合していることのほかに、「ローレンシウムでアクチノイド元素群が終了することを初めて実験的に証明した」こと。日本原子力研究開発機構は「シーボーグが1940年代に提唱した『アクチノイド元素群が103番元素で終了する』との予測を、半世紀以上経てようやく実証したことになる」と意義を強調し、「理論によって推測された周期律表のパズルが一つ解けたとも言える」と語っている。
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・ネイチャージャパン・ハイライト「Cover Story: 極限化学:希少なローレンシウム原子を使った実験で明らかになった、周期表中の相対論的領域」
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