地方の小さな博物館も存在感を示して活躍している。北海道むかわ町穂別の白亜紀末(約7200万年前)の地層から採取されたアンモナイトの化石が新種とわかった。鑑定した国立科学博物館の重田康成研究主幹とむかわ町立穂別博物館の西村智弘学芸員がアナゴードリセラス・コンプレッサムと名付け、7月1日の日本古生物学会欧文誌パレオントロジカル・リサーチに発表した。穂別博物館として新種の記載はこれで海生爬虫(はちゅう)類など8例目。重田さんと西村さんは昨年も2回、アンモナイトの新種を報告しており、相次ぐ発見となった。
この化石は直径約6㎝、厚さ2㎝。旧穂別町(現・むかわ町)の職員が1980年に、海底だった地層の岩石から見つけた。新種とわからず、保管されていた。その後も、同じような化石の収集がなされていた。世界各地で見つかっている同じ属のアンモナイト各種と比較したところ、今回の種類は、やや小型で、殻の幅が薄い点で他の種と異なることから、新種と判定できた。
同じ属のアンモナイトは、北海道を含む北西太平洋の海域で白亜紀末の化石が少なく、研究が十分に進んでいなかった。古生代~中生代の海に繁栄したアンモナイトは約6600万年前に、恐竜とともに絶滅したと考えられており、新種の化石はその直前の海洋環境を探る手がかりとして注目される。
新種の化石は計10個体。4個体は国立科学博物館で保管しており、穂別博物館は収蔵する残りの6個体を7月1日から展示した。1985年に新種と発表されたアナゴードリセラス・マツモトイ(サハリン、北海道、淡路島から産出)と多くの形態の特徴が共通しているが、生息年代がやや古いため、今回の新種がその祖先種とみられている。
新種と確かめた西村智弘・穂別博物館学芸員は「住民に支えられる地方の博物館の活動は重要だ。これまであまり研究されていなかった地層から化石を採取して、博物館で標本として適切に管理し、維持していたのが、新種の発見につながった」と話している。