あけましておめでとうございます。
今年はお正月休みが長く、のんびりとしたお正月をお過ごしの方も多いのではないでしょうか。せっかく時間があるときですから、日本の伝統文化としてのお正月料理を見直してみませんか。
昨年の12月、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されました。その「和食」の代表的・典型的な例としてお正月料理が挙げられます。つまり、お正月は和食について考える絶好のチャンスなのです。
前回、無形文化遺産としての和食がどのようなものであるか、下記の記事で、4つのポイントに分けて整理しました。お正月料理は特に(2)と(3)の要素が強いと、私は考えます。
(1) 「自然の尊重」が基本的な精神である
(2) 日本人の帰属意識を強めるものである
(3) 地域や家族の関わりを深める
(4) 日本人の健康に貢献している
■日本人の帰属意識を強めるものである
和食、すなわち他の日本人や祖先が味わってきた食事を共にすることで、日本の伝統や日本人としてのアイデンティティを再認識させる役割があります。
お正月料理の多くにはいつ、どのように作って食べるのかという「決まり」や「習わし」があり、それぞれ意味や役割、理由があります。日本人が昔から繰り返してきたこれらの儀式をなぞることによって、「日本らしい」「日本人らしい」お正月を感じるという機能が、お正月にはあるのではないでしょうか。
具体的にどのようなものがあるのか挙げてみましょう。
・元旦に食べるおせち料理...もとは歳神様にお供えするための料理でした。おせちに詰められる料理は、酢に漬けたり味を濃くしたりして傷みにくく、砂糖をしっかり使って乾燥しにくく作られており、日持ちがする工夫がされています。これは歳神様をお迎えするお正月の間は、火を神聖なものとして位置づけ、お雑煮を作る以外には炊事を慎むためです。
・元旦のお屠蘇や7日に食べる七草粥...お屠蘇や七草粥は、もともと中国での習慣が平安時代に日本に渡り、日本流にアレンジされて宮中行事として定着したもの。いずれも邪気を祓い、無病息災や不老長寿を祈ります。七草粥は「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ」の七種類の若菜を刻んで加えたお粥で、お正月のごちそうで疲れた胃を休める意味合いもあります。
・11日には鏡開きを...お正月に歳神様にお供えしたお餅を下げ、お汁粉などに入れていただきます。この際、神様の宿った物に刃を入れるのは失礼である、もしくは切腹を連想させるとして、手や木槌を使って割るのがきまりです。正月に固いものを食べて歯を丈夫にする「歯がための儀式」と結びついて、歳神様の力を取り入れて健康と長寿を願う行事です。
また、お正月料理はその地域ごと、家庭ごとに様々なスタイルが存在し、日本人としてのアイデンティティだけでなく、地方や家といった、自分のルーツを意識するきっかけにもなっています。
分かりやすい例がお雑煮で、最近では、様々なメディアでも全国の多様なお雑煮が取り上げられたり、それぞれの実家のお雑煮の話で盛り上がったりするというのを多く見かけます。餅の形は丸か角か、つゆは澄ましか味噌か、具には何を入れるのか。具の切り方や大きさまで決まっているところもあります。あなたの家ではどんなお雑煮を作りますか。母方のお雑煮と父方のお雑煮をそれぞれ調べてみても面白いかもしれませんね。
筆者の実家のお雑煮はすまし汁に角餅。鶏肉、白菜、大根、干し椎茸を煮て、トッピングに蒲鉾、ほうれん草、鰹節をふりかけます。
京都風のお雑煮は西京味噌に丸餅。金時人参、祝大根、かしら芋が定番の具です。
■地域や家族の関わりを深める
家族で食卓を囲むことで家族の中を深めたり、行事食においては、地域の絆を強くする働きもあります。
最近では減りつつありますが、かつては年末が近づくと、家や親戚で協力して餅をつき鏡餅やお雑煮に使う餅の準備をしました。そして、おせち料理や年取り膳といったお正月のごちそうを協力して用意し、それを家族皆で囲みます。
今でも、お盆とお正月には親戚や家族で集まって、食卓を囲んでゆっくり話をする、という人は多いですよね。また、こういう機会でもないと皆が集まることはないからと、この機会に大事な話(家のことやお金のこと、終活などなど...)をするという人もいるようです。
■さらに詳しく知りたい方へ
おせちに詰められたお料理それぞれにこめられた願いや、各地のお雑煮については、ELLE ONLINE BLOGの方でも書いています。京都風のお雑煮や博多風のお雑煮のレシピもあわせて載せていますので、もし興味のある方は読んでいただければと思います。
ELLE ONLINE OFFICIAL BLOG「Sallyの科学なごはん帖」
・お正月料理に使う「お魚の意味」
<近日更新予定です>