ハフィントンポストでは、仕事の飲み会に関するご意見を募集しています。Twitterで、#飲み会やめる、とつぶやいていただけると嬉しいです。ハフポストのメンバーや私も日々つぶやいて行こうと思います。
転職するとき、できるだけ飲みを断ってみた
財布をなくしたこと2回、スマホは3回。記憶はたくさん。私は、仕事の飲み会で色んなものを失ってきた。行きたくないのに、誘われたらフラフラと行ってしまう。
5月1日、ネットのメディアの「ハフィントンポスト」に転職してきた。退職をすでに伝えていた3月や4月は、数え切れないほどの送別会の誘いや、「今後の仕事の打ち合わせ」と称した飲み会の予定が入ってきた。そうだ、と思って試しに8割ぐらい断ってみた。
すごく申し訳ない気持ちがあった。そこで、パン屋での朝ごはんにしてもらったり、ランチで親子丼を食べたり。一緒に何か仕事ができそうな人とは、夜、スカイプでミーティングをしてみた。あら不思議。お金は1000円ぐらいしか使わないし、話も1時間ぐらいで終わる。
酔っ払うと、大げさで実行力の乏しい話で盛り上がってしまう。たいてい蒸発して残らない。昼間話すことで、熱くも、冷静な話が出来た。
翌朝もすっきり、終電のために走ったりすることもない。家族と夕食も楽しかった。
仕事の飲み会は不公平だ。実質的な仕事の延長だし、強制されているように感じる。上司や取引先と一緒だと、その場で物事が決まってしまうこともある。子育てや介護で行けない人、お酒が苦手で同席できない人にとっては、不安になる。
日本人の飲み会は2.8時間
厚生労働省が約2万人に、働き方や残業などの調査をして、5月18日に公表した。仕事に関連した飲み会や接待などがある人の割合は、正社員が59.9%、非正社員が40.2%だった。頻度は「月1回以下」の割合がもっとも高い。1回あたりの平均所要時間は、正社員では2.8時間、非正社員では2.3時間だった。
連合総研の報告書は、日本と外国3カ国で約400人とその配偶者の働き方を調べている。男性の帰宅時間を元に分析したところ、家族全員そろっての夕食が「必ず毎日」「だいたい毎日」の比率は、日本(45.6%)、韓国(35.5%)が半数を割ったのに対して、フランス(66.3%)、アメリカ(64.3%)。この差は残業の多さや生活文化の違いなどいろいろな要因が考えられる。でも何となく、同僚や上司や取引先と「ちょっと飯でも」といく日本人を想像してしまった。
飲み会の因数分解
飲み会って何のためにあるの?次のような「メリット」が考えられる。
・仕事のブレストになる。酒が入ってこそ良いアイデアが生まれる。
・恥ずかしがり屋の人も発言できる。
・仕事の進捗を共有したり、積み残した話し合いができる
・普段なかなか話せない偉い人に直訴できる。
・同僚同士の交流が生まれる。異なる部署の人同士が知り合えば、化学反応が生まれる。
・信頼感。上司や取引先の人となりを知ってこそ、仕事を進める信頼感が生まれる
・飲むこと自体が楽しい。
Googleを訪ねてみた
仕事の飲み会は、「仕事のため」にやるのなら、仕事中にも出来るはず。そんな仮説を立てて、日々働き方を工夫しているGoogleの日本拠点を訪ねてみた。広報の河野あや子さん。ご自身は「酒豪」として有名だが、会社には、実質的な仕事の延長のような飲み会はない。
仕事ぶりを見ていると、日中の生産性が高い。ミーティングは、無駄な人を入れない。座っているだけの人やメモをとっているだけの人はゼロ。終わりの時間も厳格で、30分なら30分で終わる。「相手の時間をリスペクトする」(河野さん)のが社内の共通認識だという。話している内容は、オンラインで文字を書いたり編集できたりする「Google ドキュメント」で記録しているので、すぐ共有される。会議の最後には、次に会うまでにやるべきことが各人に割り振られるので、「調整」もその場で済ませてしまう。
日中の時間に余裕が生まれ、アイデアが出る。会社の中でビールを開けてちょっと飲む日を作るなど、小一時間リラックスする方法もあるそうだ。これはすぐ真似できそうだ。
社員同士は、オフィス各所にあるミニキッチンで交流している。果物やちょっとしたお菓子。広々として気持ちいい。「贅沢という意味ではなく、戦略的に広く設計しています。例えば4人掛けのソファやテーブルを置いてしまったら、その空間は閉鎖的になってしまう。十分なスペースを作って、立ったままお茶をすることができるので、誰でも気軽に立ち寄れます」と河野さん。
こうしたミニキッチンは社内に数カ所。ここは和菓子中心、ここにはハーブティー、と場所ごとに「特徴」を変えているのがポイントだ。
今日は和菓子の気分だなと思ったら普段の「行きつけ」とは別の場所にいく。社員を社内をウロウロさせて交流の範囲を広める仕掛けだ。勤務中のちょっとした空き時間に他部署の人とブレストが出来る。甘いお菓子を食べながらだと話しやすい。
グーグル創業者のラリー・ペイジ氏やセルゲイ・ブリン氏も、まるで漫才コンビのように、定期的にカリフォルニアの本社で社員の前に立ち、丁々発止で、会社の理念や方向性を話している。日本のグーグル社内でも動画で見られる。社員から情報が漏れることを恐れるより、トップと社員が情報を共有することの価値を知っているのだろう。
会社の幹部に直接メールを送る社員もいる。日本の会社は、トップが社内で、何度も理念を語る姿を見るのはまだ珍しいのではないか。飲み会で酒の力を借りて言うぐらいなら、日中に共有すればいいのに。
飲み会といえば、社外の人との異業種交流も魅力。そうしたことも、グーグル社内で実施してしまう。起業家や出版社の人を呼んで、社内でトークイベントをしているという。こうした活動費は会社からお金が出ることもあるのがすごい。でも、「飲み会」に消えていくお金があるなら、どの会社でもできそうだ。
焼き鳥屋が第3会議室
大ヒットゲーム「パズル&ドラゴンズ」を開発したガンホー・オンライン・エンターテイメント。会社の目の前のモツ焼き屋さんが「第三会議室」と呼ばれている。もつ煮込み。冷奴。レバーやつくねが100円台。森下一喜社長や社長室長の橋本裕之さんが楽しく飲んでいる。店は道路沿いにあるので、帰り道の社員がフラッと合流することも。ゲーム開発者が熱く商品の思いを語ったり、今後の方向性をここで議論したりする。仕事が遅くまでかかる日があるのも確か。そうした時は、外に出て気分を変えるのも、なるほど良い。
森下社長は「お客さんにゲームを楽しんでもらう」ことをひたすら追求している。日中はゲームの開発者と向き合っていて、忙しい。「その分、夜の時間にゆっくりとビジネスに対する思いを聞いたり、人となりを知ったりしています」と橋本さん。焼き鳥をつまみながら、「効率的な仕事の仕方」ではなかなか知ることができないトップの声を聞く。
橋本さんは、仕事先の人と、ここで飲みながら、ゲーム業界の概要やトレンドを解説したこともある。「仕事中に話すと『余計な情報』でも、今後お互いが仕事をする上で知っておいて欲しいこともある。そうしたことを伝えられる」と酒席の利点を話す。海外のお客さんが来れば、森下社長がとっておきの店を押さえて日本の滞在を楽しんでもらう。
だが、森下社長は「こうしたことはあくまで弊社のやり方です。(仕事の)飲み会がうまく成立するには、仕切っている人のコミュニケーション能力とエンターテインメント能力が必要。飲まなくてすむなら飲まなくてもいいのでは」とも話す。また、橋本さんは「中国や台湾などアジア企業とビジネスをする場合は、飲み会が大事です。一緒に飲んで初めて信頼関係がスタートすることがよくあります」と指摘する。
飲み会やめる
飲み会にいいところがたくさんあるのもわかる。うまくお酒と付き合っている会社もある。だんだんと飲み会を減らしている企業も多いだろう。でも、もっと根本的にに「飲み会をやめる」って宣言したら(実際はゼロにはならないけど)、人生や日本が変わるのではないか?みなさんはどう思いますか?ご意見をぜひ聞かせてください。
ハフィントンポストでは、仕事の飲み会に関するご意見を募集しています。Twitterで、#飲み会やめる、とつぶやいていただけると嬉しいです。ハフポストのメンバーや私も日々つぶやいて行こうと思います。