はしか「減った」報道でも、日本人が全然油断できない理由。

世界的にはしかによる死者数は減少はしているものの、注意が必要

先週末、「はしかの年間死者数、初めて10万人下回る 国連」という報道がありました。記事ではさらに、WHO他が「麻疹死者数は2000年以降で84%減少した」と発表したとしています。この一文のインパクトは小さくないですよね。でも、油断するとかなり痛い目に合うので注意が必要です。

堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員

まず、ごく基本的なことですが、「減った」イコール「少ない」ではありません。普通に考えたら、今なお10万人近いって、そんなに少ないはずがないです。そしてさらに重要なのは次の記述です。

2回接種が必要な麻疹ワクチンの1回目分の普及率は2009年以降、約85%で行き詰まりとなっており、麻疹感染の阻止に必要な普及率95%にははるかに及んでいない。2回目分の普及率は、近年上昇しているものの、2016年は64%にとどまった。

冒頭のように「死者が84%減少」とか、上記のとおり「接種率85%」とか、数字だけ聞かされると、何となく麻疹対策はかなり順調で、もう大丈夫そう、なんて思ってしまいませんか? 確かにこれがテストなら、100点中84~85点はおそらくそんなに悪くない点数でしょうし、選挙投票率の低さに慣れた私たちには、85%という数字はかなりスゴイと感じられても致し方ないのかもしれません。しかし、麻疹ワクチンの接種率「85%」は、まったくもって不充分。95%×2回が、感染の拡がりを抑え込むための最低ラインなのです。厳しい!

その主な理由は以下の通り。

●麻疹は感染力が強く、1人の患者が平均12~18人に感染させる。

●空気感染するので、患者と同じ部屋に20分いるだけでうつるかも。

●ドアノブなどでも数時間生き残るので、その手で鼻や目を触って感染するかも。

そして、免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症します。

さらっと読み流したニュースかもしれないですが、麻疹、かなりの強敵なのです。

さらに恐ろしいのは、何と日本人、感染拡大を阻止するのに必要な集団内での免疫保有率(集団免疫率)を計算上は満たしているはずなのに、実際には免疫が体内で既に弱まっていたり、世代によってはもともと保有率が低かったりします。

詳しくは、以下の記事を是非ご一読ください。正しい知識をみんなで共有することが、集団免疫の第一歩です!

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(2017年10月30日「ロバルト・ヘルス」より転載)