日本のアニメ(絵)の力というか、萌えを含んだ「かわいい」という力を見せつけられる事案を2つたまたま目にしたので、これについて少し。
1 台湾
一つ目は台湾で、中国と台湾が昨年結んだ「サービス貿易協定」の承認阻止のため、台湾の学生らが立法院(国会)を占拠している問題に関連してです。
香港紙『蘋果日報』「日本網友耍萌反服貿 ほえほえくま參上!」によると、そのうちに一人がiPadを使って現場の状況をニコニコで実況中継を始めました。
このとき学生たちが口にしていた「退回服貿」のスローガンが日本人のネット民には、「ほえ(退)ほえ(回)く(服)ま(貿)」と聞こえ、台湾の「公民運動」を支持する動きとなったとしています。
2 クリミア
もう一つは、クリミアで、『J-castニュース』「『萌え化』クリミアの美人検事総長 日本で大騒ぎに英BBCもびっくり」によれば、「クリミア自治共和国の女性検事総長ナタリア・ポクロンスカヤ氏(33)が『萌え』『美人すぎ』と日本国内で盛り上がっていることが、ロシア語圏、さらに欧米各国にも伝わり、かなりの驚きとともに報じられている」そうです。
「検事総長就任会見の模様がYouTubeに公開され」ましたが、「少女らしさを残したポクロンスカヤ検事総長のルックスに惚れ込む人が続出」しました。
日本で話題となった理由についてタス通信は「彼女の大きな瞳、うりざね顔、そして髪型は日本のアニメの美の基準を満たしている」と報じています。
3 かわいい
以前「かわいい」について、四方田犬彦氏の著作を使って言及させてもらいましたが(『「かわいい」論』四方田犬彦)、日本の「かわいい」はその可愛らしい容貌の一方、何でも包み込んでしまう面があります。
結果、何が入っているかわからない面があり、今回の事案でも台湾とクリミアというかなり深刻な問題を抱えているところで、本来可愛いでは済まない面が無きにしも非ずです。
しかし、(日本だけでなく、外国にも影響を与えるという形で)それをも包み込んでしまっているわけで、いろいろ思うところがあったというわけです。
以前、日本人に対する別称の「日本鬼子」すら萌えキャラ化してしまったことについて触れたことがありますが(日本鬼子(ひのもとおにこ))、新たな事例が追加されたというところでしょうか。
4 日本
以前芥川龍之介の『神神の微笑』に関連して海外から来たものを吸収しては、変えてしまう日本について言及したことがありますが(キリスト教と『神神の微笑』)、大きく見れば「かわいい」というのもその一環なのかもしれません。
私は、同時に日本の同調性について、いろいろ批判をしてきております(海外人材招へいと日本の同調性)。ここいらが厄介なところで、何でも受け入れる反面、自分たちの嗜好にあうものに徹底的に変えてしまわなければ受け入れないということでもあるかと思います。
これはある意味、物事を正負両面から見るとそうなるという話で、奥には本当に「日本の闇」とでもいうべき、暗くて嫌なものが潜んでいる可能性もあるわけですが、表面を見る限りはとても可愛くて、受け入れられやすいという話かとも思います。
(2014年3月23日「政治学に関係するものらしきもの」より転載)