先にウクライナ情勢を巡る日本や中国の情勢について好き勝手なことを書かせてもらいました(ウクライナを巡る欧米とソ連の対立を日本は利用できるか)。
ただ、中国は、これから全人代を迎えてただでさえ、大変な時期に、1日夜に昆明で無差別殺傷事件が起こり、29名が死亡、140名以上が負傷する事態となっており、それでどころではないというところかもしれません。
1 昆明の「テロ」
雲南省自体が本当に気候もおだやかなところですが、昆明は一年中、春のような陽気が続くところから「春城」の愛称で親しまれる観光都市で、私も訪問したことがありますが、かなり好印象だったのを覚えています。
中国政府はウイグル族独立派による「暴力テロ」と断定しているようですが、最初昆明で「テロ」と聞いたとき、何故誰がというのが正直な思いで、ウイグル族と聞くまで、しばらく何があったのかよくわかりませんでした。
雲南省には雲南省には漢族のほか22の少数民族が暮らしているといわれておりますが、正直彼らは観光客を相手に伝統舞踊を踊ったり、民芸品を売って生活しているというイメージしかありませんでした。
実際、雲南省の少数民族といった場合、過度に観光化されてしまっているものを除けば、殆ど東南アジアの人たちといった感じで、ウイグル族はいないわけではありませんが、数が少なく結びつかなったというのが本当のところです。
2 テロ
言い訳じみてしまいますが、私がこう思ったのは理由があり、これまでウイグル族がらみの事件というと、まず場所も新疆ウイグル自治区などウイグル族の多いところ、もしくは北京等で象徴的に行われたというイメージがあります(天安門事件前の自動車事故で中国崩壊?日米安保崩壊?)。
それに、ウイグル族はこれまでどちらかというと、中国の政府組織を相手にしており、圧倒的に多かったのが、「暴徒と警官隊の衝突」というパターンです。
そのため、今回のように、一般人が無差別に殺傷されるということはあまり聞いたことがありませんでした。
3 負の連鎖
確かにこれをやれば、中国政府としては、守るべき対象が中国全土に広がるので、どこを防衛したら良いのか全くわからなくなってしまいます。
そういう意味で効果(嫌な話ですが死傷者の数)は大きくなるわけですが、結果その分民族対立は深まることになります。
更に、中国政府にしてもどこを守ったら良いのかわからないとなれば、過剰反応的に取り締まりを厳しくしたり、少数民族(ウイグル族)に対する政策も更に過酷なものとなるのは間違いないかと考えます。
特に、今回は全人代開幕(5日)前という時期にこれだけのことが起きてしまったわけで、習近平政権にしてみれば、メンツをつぶされたような形になってしまっているので、通常よりかなり厳しい対策をとるのではないかと思っています。
4 最後に
今回の事件は昆明駅で夜に起こっています。結果、金がなくホテル等、宿泊場所を確保がないため、駅で一晩過ごそうとしていた出稼ぎ労働者が犠牲となっており、言って見れば、少数民族という弱者が出稼ぎ労働者という弱者を殺したという形になっております。
以前、社会的弱者は「貧困」という共通項で連携できるかという話をする方に対して、それは難しいのではないかということを書いたことがありますが(「貧しさ」を媒介として労働者は団結できるか?)、今回のように何かあると真っ先に犠牲になるのは弱者で私はこうした連携は難しいと思っています。
それに反日デモでも、普段の鬱憤を晴らすためにという側面があったことからもわかるとおり、弱者ほど(失うものがないが故に)こうした過激な行動をとる傾向があり、結果世間一般から乖離してしまい、連携を更に難しくしているという側面があると考えています(中国に「反日教育」は存在しない(反日デモも言うほど怖くなかった)?)。
(2014年3月3日「政治学に関係するものらしきもの」より転載)