『Record China』が「中国本土で学んだ台湾人学生が驚き=『本当の中国人は想像と大きく違う』―台湾メディア」という記事を配信しており、いろいろ興味深かったので、これについて少し。
1 記事の紹介
「19日、台湾紙・旺報は、中国本土の大学で学んだ台湾の学生が『本当の中国人は台湾人の想像と大きく違う』とする文章を掲載した」という記事です。
「ネットや多くのメディアで伝えられる中国人のイメージといえば、『ルールを守らない』『荒っぽい』『洗脳されている』『政治について話すのが好き』など」なので、台湾のある学生は「本土に来る前、政治的な質問をされる覚悟をして」いました。
しかし、実際は、「本土の若者は中高年とは大きく違い、バラエティ番組や芸能人の話題の方が政治よりも関心が高」く、「多くの中国人は私が台湾人だと知ると、憧れのまなざしで『台湾はいいところだよね。人は礼意正しいし、サービスもとてもいい。中国も学ばないと』と話」しかけてきたそうです。
こうしたことを受け、「本土を訪れると比較してしまうのは無理もないが、台湾人は本当に中国人に勝っているのだろうか?自分が優越感を感じながら他人を見ることは、素養のある人間の行為だろうか?」という疑問を投げかけています。
そして「多くの中国人がマナーを守らないのは確かだが、じっくり腰を据えて話してみると実際の中国人は自分の想像とは大きく違っていることに気付くかもしれない」と結んでいます。
2 ステレオタイプ
台湾紙『旺報』については、以前も言及したことがありますが(中国に協力するアセアン諸国?)、中国最大の食品グループである旺旺グループと台湾の中国時報が共同出資し、創刊されたものです。そのため、「台湾紙」であることは間違いありませんが、実際は中国(大陸)紙と同じです。
こうしたことを踏まえると、今回の記事も中国大陸の人が自分たちをステレオタイプで見てくれるなという意図から書かれたものであることは間違いないかと思います。
そのため、「多くの中国人がマナーを守らないのは確か」としながらも、そうではない中国人もいるし、台湾人を尊重している者もいるのだから、上から大陸を見るようなことをしないでくれというのが本音といったところでしょうか。
3 実際の中国人
では、実際の中国人がどうかという話になるわけですが、確かに行列を作れない人もいれば(中国人が行列を作らず、物を奪い合う要因)、マナーと言う面ではどうかという話も(中国人観光客の「悪習」とその原因)わからないではありません。
ただ、中国は貧富の差が激しいことが最大の原因かと思いますが、かなり千差万別というのも本当のところかと思います(中国で忘れ去られた人々(写真)と中国のいかにも成金といった人たちの写真)。
寝るところも満足になく食うや食わずの生活をしている者から、絵に描いた様な成金生活をしている者まで、生活パターンが全く異なることが多いので、一概に「中国人」として一括りにするのは、確かに無理がないでもありません。
中国のテレビ番組でも以前、上海などの子供たちが内陸部の本当に貧しいところの子供たちと交流し、互いに訪問する様子を放送していたことがありますが、ロクに電気もないところと高層ビルが立ち並ぶところの格差がひどく、まさに外国を訪問するような感じで、子供たちの表情が何とも言えませんでした。
金持ち喧嘩せずではありませんが、豊かな方は当然それなりに余裕(教養)がある事例がかなりあります。当然、先に見たような例外もあるわけで、金があっても、どうしようもない成金趣味を誇示するバカもいないではありません。
4 最後に
そのため、「じっくり腰を据えて」見てくれというのはわからない話ではありません。しかし、どうしても○○人として、くくられることが多く、私も海外で恥ずかしい振る舞いをしている日本人を見ると、とても同じ国民とは思われたくないと正直思ってしまうことがあります。
ただ、中国自身が愛国心や中国の団結を強調しており(民間団体に沖縄独立団体を支援するよう勧める中国)、皆で一丸となって中国を発展させていこうという発想なわけですから、多少は「中国人」として、まとめて見られる部分があるのも仕方がない話かと思います。
都合の良いときだけ、全体でなく、個々に判断してくれというのもの虫の良すぎる話かと思った次第です。
(※この記事は、2013年11月21日の「政治学に関係するものらしきもの」から転載しました)