スズキの鈴木修会長兼社長が28日に開催された、軽自動車の新車発表会で、軽自動車税が来年4月の消費税増税に伴い、引き上げられる可能性があることについて「弱い者いじめで、悲しい」と抗議したことについて少し。
1 企業の都合
軽自動車を販売しているスズキにしてみれば、税金が上がればそれだけ軽自動車を買う人が少なくなるので、反対というのは大変良く分かる話です。
むろん企業の論理を全面に出したのでは、誰も賛成してくれないので、鈴木会長も「比較的所得の低い人も乗っているうえ、軽自動車関連の仕事に従事しているのは、中小零細企業がほとんどだ」と「弱い者」の立場を代弁した形をとっております。
これで真っ先に思いだされるのが、新聞などが大々的にキャンペーンを行っていた新聞に対する消費税増税反対論です。
「知識への課税強化は民主主義の維持・発展を損なう」といった意見などが、日本新聞協会からだされたりしました。ここでも「民主主義」という建前がとられております。
2 企業の努力
個人的に新聞業界などの新聞社などマスコミがこうしたキャンペーンを行うことについては、私はあまり良い感情を持っておりませんが、鈴木会長の発言にはそれなりに理解できる面が無いわけでもありません。
取材をさせてもらっているにもかかわらず、そこいらを勘違いしている新聞記者が多いことなど(慰安婦問題で橋下市長に喧嘩を売った記者と新興宗教)や、記者クラブに代表される独特の閉鎖性があること(日本の報道の自由度は低いのか?)などから、正直あまりマスコミが好きになれないという面もあります。
しかし、何と言っても最大の思いは、その企業がどれだけ努力してきたかということにあるのではないかと思います。
発泡酒や第三のビールなどが典型かと思いますが、酒税法の網をかいくぐって安い商品を開発して販売すると、それに対して法律を改正して税金をかけるということが行われてきました。
企業にしてみれば、自分たちの努力を無駄にするのかといったところでしょうが、「酒」に税金をかけるという立場(発想)からしてみれば、やむを得ないものがあると思います。
当然庶民の立場とすれば、ここでも「弱い者いじめ」をするのかという話にはなりかねないわけですが。
3 軽自動車の進化
これまで、酒税は何度か改正されてきていますが、自動車税の方はなかなかそういう話題になりませんでした。思うに、価格に上乗せする分には簡単だが、直接納税してもらうものが増税となると、いろいろ反発が強いという面があったのかと思います。
結果、そこを利用して、軽自動車という定義の中で、エンジンの設置場所などを工夫し、これまで以上の乗車スペースを確保するなどの企業努力を行ってきたわけです。
結果、以前は本当に小さいというイメージしかなかった軽自動車もかなり改善されることとなり、販売台数も伸びました。確かに企業にしてみれば、この段階で増税というのはという気持ちになるのもわからないではありません。
4 均衡
また、確かに普通車に対する自動車税との均衡の問題もあるかと思います。数千円ですむ軽に対して、最低でも3万近くかかる普通自動車税というのは、確かに思うところがないでもありません。
ただ、これは裏をかえせば、普通車が高すぎるとの話もあるわけで、普通車を安くすれば良いのではないかという話にもなりかねません。
しかし、こうした議論を本気でしはじめると、高級車に対する課税はこのままで良いのか(例えば、3ナンバーと5ナンバーに対する課税の差とか)、大型車に対する税額はどうなのかといった問題も出てきかねません。
それに、既に普通自動車という形態で税体系ができあがってしまっているわけなので、普通車の基本(最低)金額を見直すとなれば、それを踏まえて排気量毎に税金額を変える必要が出てくるわけで、全てを踏まえて改正するというのは大事になりすぎて無理かと考えます。
5 最後に
あくまで企業が増税に反対を唱えた際に、感情的に同意できるかどうかという観点のみで書かせてもらいますが。私の意見をまとめると以下のような感じかと思います。
新聞(何の企業努力もしておらず、殆ど説得力がない)。
酒造メーカー(企業努力は認めるが、酒に税金をかけるという元々の法の趣旨から言うと、やむを得ない面もあり、これまでに何度か行われており、増税に対する反対も相対的に少ない)。
軽自動車(企業努力は認めるし、これまで安い税額だったこと等を考えると、鈴木会長の発言も理解できないではないが、普通車との均衡を考えると、ある程度の増税もやむを得ない面もあると考える)。
(※この記事は、2013年8月30日の「政治学に関係するものらしきもの」から転載しました)